「セラヴィ」とはフランス語で「これが人生だ」という意味。みんなの日常にあるドラマをストレートにつづった日記風メッセージ。
'05/11/18朝刊掲載
二足のわらじ」来春で決別
大学秘書から院生目指す
 「秘書は仮の姿。英語を学んでいるときが本当の自分だと思う」

 陽子(29)は大学病院秘書。仕事は教授の書類整理や研究室の予算管理などだ。

 医学に興味はない。もちろん仕事は着実にこなすが、名刺に刷り込まれた「秘書」の二文字を見る度に「こそばゆい」。あくまで「仮の仕事」という思いがあるからだ。

 友人の紹介でこの仕事に就いたのは二十四歳のときだった。当時、通訳を目指していた陽子は、養成学校に通う学費を稼げ、働きながら勉強できる環境に飛び付いた。「二足のわらじ」はこのとき始まった。

 昔から、外国人に物おじせずに話しかける子だった。高校に入るとユニセフで働きたいと思い、学校の公衆電話から国内の国連機関に問い合わせたこともある。

「なぜか分からないけど、ずっと英語にあこがれがあった。とにかく英語にかかわっていたかったんだ」  短大の英語科を卒業後、子ども英会話スクールの講師になった。仕事には喜びを感じた。しかし次第に物足りなさが募り、四年で辞めて、通訳養成学校と秘書の両立へ。

 「英語で大人の会話をするのが目標だった。それに、英語を学ぶことで、自分の意見がはっきりして主張ができるようなった。自分が成長していくのがうれしくてたまらなかった」

 「一日七時間、英語漬け」という宿題を自分に課した課題を立てた。午前四時に起きて一時間半勉強。車で往復一時間の通勤時間はリスニング。一時間の昼休みの半分は長文読解。帰宅後も深夜まで勉強し、平均睡眠四時間の生活を一年間続けたところで体調を崩した。

 その後、ややペースは落としたものの、英語への愛着は増すばかり。現在、友人との勉強会に加え、社会人への英語レッスンを新たに受け持つなど、英語漬けの日々は続く。しかし、それでも何かが足りない…。

 「最近、英語の世界をもっと知りたい自分にあらためて気付いた。それに、実は英語そのものというより、異文化コミュニケーションに関心があったんだ。もう二足のわらじはやめよう」

 関心は通訳から、より学問的な面に向かいつつある。秘書を辞め、大学院に進む決意を固めた。コミュニケーションと言語の関係を研究する言語心理学を学ぼうと思っている。来月行われる第一次審査に向けて、論文を準備中だ。うまくいけば、来年二月に筆記と面接試験が待っている。

 「気持ちがどんどん前に進んでいく。生活費のことなんか心配していたら動けなくなる」

 =文中仮名(光)

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