―さっそくですがプレゼントを。マンガ「博多っ子純情」が西日本新聞社から復刊されたんですよ(と手渡す)。
光石:うわあ、これうれしいなあ。古いのは実家にあるけど、東京にはなくて。映画出る前から読んでたんですよ。
―「博多っ子純情」はオーディションでしたよね。
光石:友達に「出てみらんやっ」て誘われたんです。たしか西日本新聞のビルでのオーディション。人が多くて、「こりゃ無理ばい。はよ帰ろう」て。ぼく、前日に高校でケンカして、ぼっこぼこに負けて、顔にばんそうこう張ってたんです。審査員がその話をおもしろがってくれて、決まったようなものです。
―たくさんの役柄を演じていますが、いつもどんな役作りを?
光石:特に方法論は持たないけど、古里の影響は大きいですね。黒崎(北九州市)って、すごくにぎやかで、いろんな人間がうごめいていた。あのとき見ていた大人たちがベースかな。あんな大人になりたいとか、あんな風になっちゃいかんとか。そんな記憶が根底にある。
―北九州で撮った映画「Helpless」(1996)には思い入れがあるとか。
光石:ちょうど、似た役ばかりやらされて、俳優やめようかと悶々としていた時期に、同世代の青山(真治)監督から話をもらって。転落していくチンピラの役でしたが、それまで慣れ親しんできた演技のやり方をいっぺん空にして臨んだんです。こうしようああしようとか準備せずに。そんなの、太い幹がある映画には通用しないと気付いた。撮影も北九州、言葉も北九弁だったから、ダイレクトに役に入れた。あれから、仕事への姿勢が変わって、いろんな役がくるようになりましたね。
―脇役の醍醐味(だいごみ)は?
光石:例えば「BORDER LINE」(李相日監督)でいうと、ヤクザの僕が主人公の少年に「また会おうな」っていう場面がある。その場面では、そのせりふを聞いている彼の顔が主役だけど、主役を揺るがすような、ぶるぶるっと震わすようなせりふを投げかけたいって、いつも思っています。
―「あの脇役、いい味出してる」って言いますが、「いい味」って何でしょう。
光石:やっぱりその人の生き様かな。その人が普段どんなことを考えているかとか、何を読んでるのかとか、そういう内面が演技にも出るんじゃないでしょうか。僕なんかまだまだですよ。
―先日、映画のイベントでDJをされたそうで。ちょっと意外ですね。
光石:「ジーナK」のイベントで、共演したARATAくんとレコードかけただけですよ。ぼくは楽器もできないし、歌も歌えんけど、ブラックミュージックがむちゃくちゃ好きなんです。レコードだけは昔からずっと集めてる。ある日「そんなに持ってるならDJやれば」って友人に言われて、カフェで毎月やってたこともあった。名前出さずに、黙って。
―演じ続ける原動力って何ですか?
光石:現場が好きなんです。映画のスタッフって、すごい情熱でセットや衣装を準備してくれる。さあ、どう演じるんだって常に突きつけられている気がして、負けられない。とにかく「博多っ子純情」の現場がすごく楽しかったんです。ほかのことは忘れても、あの40日間は鮮明に覚えてる。格好良くいえば、あのときに味わった雰囲気を追い求めているのかもしれない。今回の現場はどうだろう、次はどうだろうって。
―最近は北九州ロケ映画が増えてます。
光石:海も山も都会も廃虚もあって、最高のロケ地ですよね。次は撮影で帰ってきたいですね。
(謙)
公開待機作、続々
十月に開かれた「ぴあフィルムフェスティバルin北九州」で国内初上映された「紀子の食卓」(園子温監督、公開未定)=写真=は問題作「自殺サークル」の続編。光石さんは地方新聞社の記者を演じている。ほかに「陽気なギャングが地球を回す」(前田哲監督)、「ブラックキス」(手塚真監督)は来春公開。テレビでは十七日にNHKで放映されるドラマ「クライマーズ・ハイ」、来年一月に始まるオダギリジョーさん主演のドラマ「時効警察」(テレビ朝日系列)にも出演する。