―今回のライブは昨年リリースしたアルバム「ザクロ」の曲が中心?
三上:2部構成で、第1部は「ザクロ」を曲目順に演奏するつもり。このアルバムは、全体が1つのストーリーのようになってるんで。肉体がほろんで、微生物に分解されて土にかえり、芽が出て花が咲き、ハチが花粉を足につけて、また違う植物が生まれるという。めぐりめぐる有機的な話なんですね。
―「ザクロ」は植物だけど、人間をなぞらえた面も?
三上:ありますよ。ぼくは輪廻(りんね)転生というのは考えないけど、肉体的なこと、有機的なつながりがあるという意味で似てると思う。
―「ザクロ」はマイナー調の曲が多いですね。
三上:僕はメロディも含めてブルーノートが大好き。だから、ちょっとジャズっぽい曲が多いですね。
―ライブの第2部は?
三上:去年福岡でも上演した「ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ」という芝居の楽曲を演奏したり、自分の古い曲とか、ジャズのスタンダードとか。盛りだくさんになりますね。
―ヘドウィグは評判の舞台でしたね。
三上:僕のファンというより、ヘドウィグファンがすごく多いんですよ。僕のヘドウィグは去年でおしまいなのっていう声があって。あの作品を支持する人たちに対して、楽曲だけでも演奏できたら、すごく有意義じゃないかな、と。だから今回もやります。
―俳優としての印象が強いんですが、三上さんにとって音楽活動の意義は?
三上:自分のバランスをとる手段。僕は映画とかドラマをやるときに自分を捨てるんです。例えばコーヒーが好きだとか、本は何が好きだとかをひたすら捨てていくと、肉体だけが残って、台本を読むと役がすーっと入ってくる。(デビューした)15歳からそれをやってると、置き去りにされた自我が「おれだってここにいるんだよ」ってムクムク出てきて、バランスがとれなくなる。それを音楽活動で、自分はこういうこと考えてるんだ、っていうのを発表してバランスをとってた。ただ、今はあまり明確に区別してない。肩ひじ張らずに自然に演じたり、歌っていけたらな、と思ってる。
―デビュー作は故・寺山修司さん監督の「草迷宮」。俳優に興味はあった?
三上:全然なかった。ホラー映画が好きな友達が、泉鏡花の原作を読んでホラーだと思って勝手に応募しちゃった。当時の僕には、寺山さんは競馬中継のおじさんでしかなかった(笑)。
―著書に「僕は寺山の犠牲者」「価値観は壊れていった」とありますが?
三上:それは役者としてポジティブな発言。壊していただいてありがとう、という。僕、子どものときからコンプレックスの塊で、美男子で背も高い2つ年上の兄と比較されて育ったんです。母親の友達が「お兄さんはハンサムね」って言った後、おれを見て「…個性的ねぇ」って(笑)。そのままだったら役者はできなかったけど、寺山さんに会って、背が低いことは役者としてデメリットじゃないし、価値観は自分でつくっていけるし、既成概念にとらわれてはいけない、ということを教わった。
―九州のファンにメッセージを。
三上:この10年、地道な活動に終始してたけど、今年からは、機会があればどんどん外にでていろんな仕事に挑戦します。かつての三上博史と印象が違うかもしれないけど、僕が出る以上は必ず納得できる作品を残すから、しっかり見ていてほしいですね。 (荻)
アルバム「ザクロ」 2005年6月、自主製作でリリース。「風葬」「深く沈んだナイフの行方」「発酵」など全9曲を収録。「ヘドウィグ―」(04年、05年)でも共演したベーシスト・横山英規やエミ・エレオノーラらが参加している。
▽ライブ「THE GARDEN―1―ザクロ」は3月3日午後7時、福岡市中央区舞鶴1丁目のDRUM Be―1で。前売り6000円、当日6500円(別途要1ドリンクオーダー)。問い合わせはキョードー西日本=092(714)0159。