魔術のように心にからむ歌声と詞。「ええいああ 君からもらい泣き」。この印象的なフレーズがいつの間にか街にあふれている。声の主は一青窈さん。昨年「もらい泣き」で、すい星のように現れ、アルバム「月天心」も好評。二月十七日に福岡市のイムズホールであるライブチケットもすでに完売という人気ぶりだ。台湾人の父、日本人の母の間に生まれた新たな歌姫をGETした。
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―本名なんですね。
一青)石川の金沢の方に一青小学校とかあるみたいです。窈は父が台湾の皇太子妃からとって。「窈窕」という、山水の奥深い様を表す形容詞があるんだけど、知的で美しいって方向に持っていきたかったらしい。
―早くにご両親を亡くされたとか。
一青)父は小二、母は高二のときに。幼いころお父さんだけ台湾にいて、さびしくないように、毎月ディズニーのお話レコードを送ってくれました。それで歌のお姉さんになりたいなって。私は私で、お父さんに毎日の日記を手紙として送ってました。
それが母が亡くなったときから感情を吐露する散文詩みたいになって、多分、書くことで気持ちをコントロールしていたんでしょう。書くだけなら心の中にためるのと同じだから、歌って誰かに伝えたいと。それでレスポンスがあれば一人じゃないと分かるから。
―病院に野外音楽堂を作りたいとリーフレットに書いてましたね。
一青)きっかけは母の入院。ただ白い天井を眺めて過ごしたり、時間で区切られて音楽も聴けなくなったり。これで治るのかしらって。好きなミュージカルを見たときの方がよっぽど元気になってる。病院に音楽堂作って、絵を描く人や歌う人を連れてきて、患者さんが自然に足を運ぶ流れを作りたいと。
―歌唱法も独特です。
一青)一枚の絵を描く感じで歌ってます。後ろに鳴ってる音に反応して、気持ちいい所に歌を泳がせるんです。ここに若草っぽい音が鳴ってるから、私は桜色の声を出したらいいんじゃないかとか。悲しさでも、うれしさでも、周りに浮遊する感情が伝わればいい。私は友だちのメールでもらい泣きしますけど、聴いた人の恋心、切なさとリンクするのならそれでもいいと思ってます。
―日本語、中国語、英語を操るんですよね。
一青)歌詞を書くときはパレットの上にそれぞれの言葉が絵の具みたいにあって「ここはカタカナ英語がいいな」とか、感覚的に色づけしてます。私は日本語のあいまいさが好きです。実は「もらい泣き」って中国語にはなくて、あえて書くなら「同情涙」とか。でも違うでしょ、もっと暖かい日だまりの色だったりする。ステキですよね。
―お気に入りに台湾のR&Bの大御所、デビッド・タオの名前も。
一青)大好きな歌手。実は今回アルバムに入れている台湾語の「望春風」って曲はタオのアルバムで知ったんです。こんな民謡あるんだ、テレサ・テンも歌ってるんだって。だから夢は台湾ライブですね。
自分を形容するのに歌手・一青窈って何かえらそうでいやなんです。もっと平社員っぽいのがいいな。吟遊詩人とか、どうかな? (悠)
03.01.29掲載