狭い都心「宝の山」 公用地移転に熱視線 長崎県・市7ヵ所 評価額25億円

売却か民間による整備が見込まれる長崎市内の公用地
売却か民間による整備が見込まれる長崎市内の公用地
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民間資本による跡地活用が検討されている県警本部(白い建物)。バスが行き交う目抜き通りにある
民間資本による跡地活用が検討されている県警本部(白い建物)。バスが行き交う目抜き通りにある
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再開発が見込まれるJR長崎駅近くの長崎交通産業ビル
再開発が見込まれるJR長崎駅近くの長崎交通産業ビル
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 不動産鑑定士の男性は、リストに目を見張った。長崎市大黒町、万才町、元船町、桶屋町…。「平地の少ない長崎の中心部で、これだけの土地が不動産市場に現れることは、めったにない」

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 リストは、県や警察、市が所有し、移転などのため売却や民間資本を使った再開発が見込まれる公用地が7カ所並ぶ。例えば、年末から年始にかけて移転する県庁舎や県警本部。2020年度には長崎署が、22年度に長崎交通産業ビルに入る県営バスターミナルが、ともに駅西側に移る。ほかにも、市役所別館などが22年度の市庁舎移転に伴い、有望な「未利用地」となる。

 国税庁が公表する路線価の1・25倍に当たるとされる、実勢に近い土地評価額を試算すると、総額25億円。鑑定士いわく「最近、長崎駅前では路線価の2倍程度で売買交渉される例も」。狭い都心に突如出現する、まさに「宝の山」だ。

 長崎駅前にある長崎交通産業ビルの所有者は、県交通局と複数の民間地権者。交通局は「自前で建て替える余力はない」との立場で、民間資本の導入が有力だ。都心再開発の核となる駅前という一等地。地元の大黒町住民でつくる「駅前まちづくり協議会」(片岡憲一郎会長)は今年3月、立体駐車場を備えた複合ビル建設を県に働き掛けるよう、自民党県連に要望した。片岡会長は「ビルと一緒に町も新たに生まれ変わりたい」と願う。

 県警関係施設も評価が高い。取り壊し予定の県警本部は隣接の日本生命ビルを含め、民間資本による再開発を県が検討。ホテルやオフィスビルを誘致する案が浮上する。新市庁舎の真向かいにあり、路面電車の電停もそばという長崎署も売却の方向。日本不動産研究所(東京)の田平和史・長崎支所長は「ここはすごい。マンションのデベロッパーにすれば、喉から手が出るほど欲しいはずだ」とみる。

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 不動産業界は既に反応している。分譲大手の大京グループ(同)は4月、県内初の営業所を開設。狙いは明白。グループ広報担当は「長崎では高齢化が進む今後、暮らしやすい平地のマンション需要がさらに高まる。大きな土地があれば、もちろん欲しいです」。

 一方、県や市は現在、本庁舎だけでは全ての部署が入りきれず、周辺の民間ビルに入居する。県の賃貸料は4施設で年間1億5千万円、市は1施設で3300万円。だが県、市ともに新庁舎に全部署が入るため、ビルのオーナーには痛手。「退去後のテナントは決まっていない。賃料も下がるかもしれない」。県が十数年入居するビル会社担当者の表情は晴れない。

 田平氏には不安もある。公用地売却は否定しないが、周辺との調和や街の生い立ちを踏まえた視点も大切だからだ。「経済性と公益性をどう両立させるかが重要」。福岡市などが先行する公用地活用の官民連携は、まだ長崎に乏しい。特に貴重な「宝」だけに、新たな都市開発の戦略が問われる。

この記事は2017年06月21日付で、内容は当時のものです。

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