大学受験(2)高校間攻防 国立合格率がステータス

大学入試センター試験が始まった16日、試験開始直前まで、参考書などに目を通す受験生
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志望校選びの基準
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 1点刻みの「一発勝負」が始まった。「ここまでやってきたんだから」。九州北部にある県立高校3年のリョウ(18)=仮名=は自らに言い聞かせながら、大学入試センター試験のマークシートを塗りつぶした。

 第1志望は九州の国立大経済学部。中学時代はトップクラス。入学後、成績が上位だったからか、担任から理系コースを勧められた。だが実は、国語と地理歴史が得意で、物理化学は苦手だった。文系コースへの変更を希望したが聞いてもらえず、3年生1学期の三者面談でやっと決まった。

 夢も目標もまだぼやけているが、親や先生からの「何としてでも国立大」のかけ声ばかりが大きくなっていく。リョウに理系選択を強いた背景にも、「理系大学の方が文系より入学枠が広く、国立大への合格実績を上げられる」という、高校側の受験戦略が透けて見える。

 学校では毎朝7時半から「ゼロ時間授業」。1時限目の通常授業前の課外授業は、多くの高校で常態化している。夕方も7、8時限目の課外で午後6時まで。土曜日も80分授業が3こま。欠席すれば、担任から指導される。

 「先生たちの熱意も分かる。でも何か、学校のためにやらされてる感があるんだよね」。リョウはため息をついた。

   ◇

 リョウが通う高校は、地元で知られる「伝統・進学校」。高校はいま、かつてない苦境に立たされているという。

 約20年前、同じ市内にある私立高に中高一貫コースが誕生したのが発端。さらに数年後、学区再編があり、地元の中学生は市外にある進学校への通学も可能になった。

 かつては黙っていても集まった優等生が各高校に分散。国立大、有名私大への合格率は下落傾向にあり、高校は危機感を募らせる。

 すると、どうなったか。ほかの進学校の教諭たちはいち早く「営業マン」のように、中学校や学習塾を回り、高校をアピールするパンフレットを配って進学を呼び掛けた。いわば優等生の「青田買い」。伝統校も遅ればせながら「営業」を意識するようになったという。

 少子化に伴い、「名門ブランド」死守へ、学校同士が生徒獲得にしのぎを削っているのだ。私立ならまだしも、県立高校がそこまで追い込まれているとは、驚きだった。「正直、(学校同士の)どんぐりの背比べみたいなもの」。伝統校のベテラン教諭からは嘆きが漏れた。

 職員室前の廊下には、前年度の合格実績を示す木札が掲げられていた。九州大○人、熊本大○人…。かつてはあった東京大、京都大が消えた。職員室前の長机では、生徒が参考書を広げ、コツコツと鉛筆の音だけが響いていた。

   ◇

 その県立高から数キロ離れた、「ライバル」の私立高を訪ねた。午後8時まで明かりがともっていた。夜の特別自習の時間。教科担任が残り、生徒一人一人の質問に答えていく。自習後はバスで家路へと向かった。

 「公立校にはできない売りの一つ」。教頭はそう話し、難関大や医学部への合格実績をアピールした。「地方で学校が生き残るためには、合格実績を残すことが生命線。ステータスが必要なんですよ」

 激化する高校間の攻防を尻目に、リョウは追い込みに向かっていた。「いま頑張れない生徒が、いつ頑張れるのか」。学校の先生から昨秋言われた言葉が彼を奮い立たせた。

 あれから朝6時半には学校に登校するようになった。ゼロ時間授業前、さらに自習するためだ。「やるか、やらないか、要は自分次第ですから」。17日はセンター試験2日目。平常心で臨む。

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 「入れる」より「学びたい」_志望校選択、何を重視?

 大学志望校選択で受験生は何を重視するのか-。リクルート進学総研が2013年、大学生約3000人を対象に実施した調査では、「入れる」より「学びたい学部・学科」を重視している傾向が浮かんだ。「地元進学」「学費」を重視する学生も多かった。ダイヤモンド社によると、難関大合格者数や現役合格率などを比較する「大学合格力」では、上位10校のうち9校が中高一貫校。50位以内には、九州から9校がランクインした。

=2016/01/17付 西日本新聞朝刊=

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