大学受験(4)記者ノート 悩む18歳 ただ進むしか

今月実施された大学入試センター試験。4年後にはどう変わっているだろう
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 朝6時半から職員室前の長机で自習、塾講師とは携帯電話のLINE(ライン)で質疑応答、塾代わりにスマートフォンで勉強…。初めて見たそれらの現実は、18年前に受験生だった私には想像もできなかった。

 医学部を目指し、私立中高一貫校に通う男子生徒(16)は小4から塾通いだという。「現役合格まで、逆算したら時間が足りない。勉強するなら今でしょ」。あのカリスマ予備校講師の口調でおどけたが、その意識の高さに驚いた。

 九州の国立大経済学部を受験する男子生徒(18)の夢は公務員。「まあ何となくです」。学校の先生からは、トップ校に負けじと、難関大への挑戦を勧められるが、「落ちたら意味ないし。大学はどこも一緒でしょ」。入り口(入学)より、むしろ出口(就職)を見据えていた。

 母子家庭で育った女子生徒(18)は途上国支援に興味がある。経済負担が重い私大、受験浪人を考え、国立大に推薦で合格した。「奨学金をもらって寮に入る。親には迷惑を掛けたくないから」。親のこと、そこまで考えていただろうか。

 ごく普通の18歳の進路選択を書こう-。それが一連取材の出発点だった。今の18歳は何を考え、学校の先生は、親はどう関わっているのか。進学校、中堅校、予備校、塾を回った。

 私が出会った高校生たちは悩み、立ち止まりながらも、将来を見つめていた。ある受験生のつぶやきが耳から離れない。

 「僕たちはこのレールに乗っかるしかないから…」

 東京五輪が開催される2020年度を目標に、大学入試のあり方も大きく変わろうとしている。1点刻みの一発勝負ではなく、知識量やパターン化された思考力でもなく、現実問題(新聞記事や統計グラフ)に対応し、記述式も導入した新テストの導入準備が進んでいる。

 今の中学1年生はこの30年ぶりの入試改革に直面する。ただ、福岡市内にある私大教授の嘆きは尽きない。

 「分度器が使えない。『This is a pen』の意味が分からない。そんな学生にどう指導すればいいわけ?」。単位を取得できなければ、母親から抗議を受けることさえある。講義の出席状況を保護者にメールする大学もあるという。

 グローバル化、21世紀型の人材育成に向け、大学入試改革は必要なのだろう。でも、現実には少子化に伴う「大学全入時代」、できる生徒とできない生徒の「学力二極化」が色濃くなっており、今の教育改革の流れでうまくいくのか、難関大からも「最近の学生は自ら考える力が劣っている」との声も漏れる。

 福岡県内の進学校に通う娘の母親からは、こんな感想が寄せられた。

 「どこの高校も同じですね」。塾が終わって帰宅しても、夕食と入浴以外は勉強ばかり。朝6時に登校し、帰りは夜の11時前。それでも娘は「みんな同じだから」と励む。塾代は年間80万円に上るという。

 佐賀市内の進学校に通っていたという男性は「学校の知名度のため、いい大学に合格したことを売りにしなくてもいいのでは」。高校間の大学合格率競争のエスカレートを懸念する。

 昨春、高校を退職した元教諭とはこんな話になった。

 「生徒のための学校ではなく、学校のための生徒になってるのではないか。短大希望者でも、成績優秀者は4年制大に。私大希望でも国公立に…。生徒や保護者のためと言いながら、実は(高校の)数値目標達成のためなんですよ。学歴信仰や学校神話を期待しているのは、むしろ世間じゃないか」

 4年後、大学入試の風景はどう変わっているのだろう。

    ◇      ◇

■「新テスト」全体像見えず

 2020年度導入予定の「新テスト」は、知識詰め込み型の「一発勝負」解消、学力の二極化(格差)に対応-などの狙いがある。

 高校在学中に複数回受験できる学力テスト(点数刻みではなく学力レベルの評価)▽マークシート方式だけでなく、思考力や表現力を問う記述式問題の導入▽課外活動などを含め、面接や論文による「人物本位の選抜」-などを柱とし、文部科学省の専門家会議が検討を進めている。

 現行の大学入試センター試験は19年度に廃止される予定。ただ、どんな入試問題になるのか、採点方法などは明確ではなく、議論も揺れており、全体像はまだ見えない。

 大学入試改革では1979年、受験競争の激化に伴い、入試問題に難問・奇問が目立つようになったことなどを受け、国公立大学を対象にした共通一次試験が導入。センター試験は90年に導入され、私立大学も利用できるようになった。

=2016/01/31付 西日本新聞朝刊=

 シリーズ「教育はいま」

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