小1プロブレム(1)クラス編成 教諭たちの悩みは深く

新1年生のクラス編成に向け、教頭はさまざまな情報を集約し、ファイルしていた
新1年生のクラス編成に向け、教頭はさまざまな情報を集約し、ファイルしていた
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 入学の春、大なり小なり、どこの小学校も「小1プロブレム」に直面する。この問題に先生たちはどう向き合っているのだろう。九州北部にある小学校の取り組みを追った。

 「今度の新1年生、ちょっと大変かもしれない」。教頭のシミズ(50代)=仮名=は危機感を募らせていた。

 この小学校では毎春、新1年生の対応に追われる。母親と登校してきても、母親と別れられず、校舎に入れない。教室でも授業中、誰かが歩き回ったり、私語が絶えず、落ち着かない。支援の指導員も加わり、担任も指導に知恵を絞るが…。

 学校には3学期に入ると、校区の幼稚園や保育園、行政の福祉担当者から、新1年生の情報が上がってくる。配慮が求められる子どもについては、「個別の支援計画」と記された用紙に留意事項が書かれている。「例年は4、5枚なんですが、今年は10枚以上もあって」。それがシミズの一層の危機感につながっていた。

 2月にあった「入学説明会」。入学予定の親子の大半が訪れた。入学を前に準備するものなど、体育館で親が説明を受ける間、子どもたちは1年生の教室で、教諭や5年生と過ごす。学校に慣れるための「予行演習」でもあるが、教諭たちはその様子をつぶさに観察していた。

 すると、親と離れて泣きだす子、勝手に机の引き出しを開けて粘土で遊びだす子、歩き回る子たちが少なくなかった。

 「子どもさんのことで、心配な方は相談に来てください」。説明会の後、教頭が呼び掛けると、前年の約2倍の親が訪れた。「うちの子はいつもひとりぼっちで」「教室の席は前の方にお願いします」

 予感は確信に変わった。

   ◇   ◇

 対応の鍵を握っているのが、クラス編成だという。

 子どもたちを各クラスにどう配置するか。担任は抱えきれるか。子どもばかりではなく、親同士の人間関係まで含め、どれがベストミックス(最適の組み合わせ)か、学校では何度もクラス編成会議を重ねる。

 課題のバランスも大切だが、見落とせないポイントは「クラスのリーダーになる子どもは誰で、どう配置するか」だと言う。「先生ばかりではなく、子ども同士で問題を解決する集団づくり」のためだ。

 だが、本当に必要な細かい情報はなかなか上がってこない。そのため、シミズらは幼稚園や保育園の行事にもこまめに顔を出し、「幼保小連携」を深め、情報を得ている。「情報戦なんですよ」。シミズはそう話す。

 クラス編成会議は毎年、慌ただしい。3月25日の教職員異動の内示を待って、本格的な議論を始めるからだ。同校では今年、校長も異動になった。シミズはより厳しい対応と判断を迫られることになった。

   ◇   ◇

 クラス編成会議は同28日、30日と開かれた。特別支援学級、養護教諭を含め計11人の教諭が集まった。白板には、シミズらが作った各クラスの名簿原案と、課題を抱える子どもの情報メモが貼られていた。

 まず、重い食物アレルギーを持つ子どもについて「職員室近くのクラスに」。編成名簿を見ながら「子どもの人間関係がきつすぎないか」「同じ幼稚園の子どもが、集まりすぎていないか」「このクラスは(課題が)重すぎないか」などと、ざっくばらんに語り合い、修正していくのだという。

 運動会もにらみ、運動が苦手な子どものバランス配置にも気を配るという。2回目の会議では、経済的な困窮や親からの虐待など、家庭環境まで含めて検討された。

 だが、この段階では誰が1年の担任になるか、シミズには腹案があるが、教諭たちには伝えられていない。新校長が着任した4月1日、それは正式に伝えられた。

 小1プロブレム 幼稚園や保育園から上がってきた小学1年生が、学校生活になじめず、授業中に騒いだり、動き回ったりする問題。学級崩壊につながったり、担任教諭が心身とも疲弊し、休職に追い込まれるケースも少なくない。1990年代後半にクローズアップされ、そう呼ばれるようになった。
 文部科学省は、きめ細かな学級指導が求められるとして2011年度、全国の公立小学校で1年生に限り「35人学級」(1クラスの児童数35人以下)を導入した。だが、財務省は14年、「明確な効果がみられない上、国の財政も厳しい」などとして、教職員の人件費縮減のため、40人学級の復活を求め、波紋を広げた。
 小学校から中学校に入学した際、不登校やいじめが増える「中1ギャップ」の問題と併せ、学校現場では深刻な問題となっている。

=2016/04/03付 西日本新聞朝刊教育面=

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