アクティブ・ラーニング(2)学び合い 反転授業の現場から

5月にあった空気の性質を学ぶ理科の授業。力を加えると空気はどうなるか、実験した
5月にあった空気の性質を学ぶ理科の授業。力を加えると空気はどうなるか、実験した
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実験を終え、班ごとに意見や考察をタブレット端末に入力する児童。電子黒板に一覧表示され、さらに班ごとの話し合いに入ったりもする=いずれも武内小学校提供
実験を終え、班ごとに意見や考察をタブレット端末に入力する児童。電子黒板に一覧表示され、さらに班ごとの話し合いに入ったりもする=いずれも武内小学校提供
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 児童生徒同士の学び合い「アクティブ・ラーニング」とは、どんなものなのだろう。授業手法の一つ「反転授業」に取り組む、佐賀県武雄市の小中学校で実践されている授業をリポートしたかったのだが、同市では2学期制が導入されており、今は期末テストや運動会の練習に忙しく、授業はまだ本格化していなかった。そこで教員たちの話を基に授業を再現すると-。

   ◇   ◇

 「一人で考えるのは難しそう。でも、みんなで話し合えば、何とか分かるかもしれない。子どもたちが、そんな前のめりな学習姿勢になった時、アクティブ・ラーニングは実現していると考えている」。導入モデル校として、2013年度から反転授業に取り組む武内小学校の竹内智道校長はそう話す。

 5月にあった公開授業。4年生を担任する橋本澄子教諭(49)は理科の授業に取り組んだ。目当て(学習目標)は「空気の性質を学ぼう」。目に見えない粒子やエネルギーについて学習する狙いがあった。

 「硬い入れ物に閉じ込められた空気を押すと、かさ(空気の体積)はどうなる?」「手応えは?」「押すのをやめるとどうなる?」

 児童たちは事前に家庭で、無償貸与されているタブレット端末の動画で「仮説」(自分なりの答え)を考えてきており、授業では班ごとに実験、考察、発表していった。

 旧来授業との違いは、児童同士が話し合う場面の多さ。通常の45分授業では、班ごとに1回5~10分程度の話し合いで終わり、教員がまとめる。だが反転授業では約20分を使い、少数意見を検証したり、「えっ、本当かな?」と、教諭があえて別の視点を提示。再度話し合う場面(再考)を作り、理解をより確かなものにするという。

 「これまでのグループ学習は、分かっている子の意見に、何となくみんなが同調していた。でも、分からない子は分かるまでとことん聞く。分かっている子も、さらに知恵を絞り、説明しようとすることで、より理解を深める。みんなで考え、みんなで分かる。そんな子ども同士の関係づくりを目指している」。橋本教諭は話す。

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 「数学の答えは一つ。でも、解決方法はいくつもある。思考の補助線をどれだけ、生徒自らが導き出せるか。そこがポイントじゃないかな」。北方中学校でアクティブ・ラーニングに取り組み、研究主任も務める堤賢二郎教諭(35)は、専門の数学を例に挙げながら話す。

 例示したのはブーメラン型の図形の外角問題=イラスト参照、正答は108度。三角形の内角の和は180度。その知識だけで答えを導き出せる問題で、補助線を引けば、そう難しくない。しかも補助線は1本ではなく、幾通りも引ける。

 数学の正答は一つだが、他教科では正答が必ずしも一つではない。教員はこれまで、生徒たちに模範解答を教え込むことに主眼を置いてきたが、問題解決へのヒントや道筋の多様さ、思考を促す働きかけをどれだけできるか。教員側の意識変革も問われているという。

 「大切な言葉や視点を、教師が言うのではなく、生徒自らが気づき、発表し合う。その瞬間まで教師が待つ。簡単なようで、実は難しい」。堤教諭は自戒を込めて話した。

 「〓啄(そつたく)同時の教育」と呼ばれる言葉がある。「〓」とは、ひな鳥が卵の内側から殻を破ろうとする行動。ひな鳥を支援しようと、親鳥が殻をつつくのが「啄」。先生と子ども、親子が互いの殻を破ろうとする、学びや成長の姿を伝えている。

 アクティブ・ラーニングにもそうした双方からの働きかけが不可欠で、授業改革への単なるノウハウではなく、子ども同士、子どもと先生の関係をあらためて問い直す試練なのかもしれない。

※「〓」は「口へん」に「卒」

=2016/09/11付 西日本新聞朝刊教育面=

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