自由帳(2)先生たちの働き方改革は? 福岡市でシンポジウム

教育現場の多忙化と負担軽減に向けた働き方改革について話し合う5人のパネリスト
教育現場の多忙化と負担軽減に向けた働き方改革について話し合う5人のパネリスト
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 「信じる」「連携」で解決探ろう

 新学習指導要領が小学校を皮切りに実施される2020年度に向け、かつてない教育改革の波が押し寄せようとしている。それは、先生たちの働き方や学校運営を考え直す試練であり、チャンスなのかもしれない。福岡市中央区の西日本新聞会館で7月30日、「教員の働き方改革」をテーマに開催されたシンポジウムを聞きながらそう思った。

 シンポには小学校と高校、PTA、研究者の立場から5人が出席し、多忙化の実情や問題解決の糸口について話し合った。

 「放課後の午後4~5時は、生徒と関われるゴールデンタイムだが、この時間が取れなくなっている」。福岡講倫館高校(福岡市)の安部知子教諭はこう話した。教科外の業務も増えており、大変なのが学生支援機構奨学金の申請手続き。生徒約200人から例年申請があり、同僚と手分けして書類確認、郵送作業に追われる。神経を使いながらの作業は、日付をまたぐことも少なくないという。

 宮田小学校(福岡県宮若市)に勤務する占部孝子主幹教諭も「そもそも物理的に時間内に終わる業務量でない上に、対応すべき課題が次々に増えている。熱意やこだわりで頑張れる限界」。教員の中には自らの勤務を「7・11」(午前7時出勤、気が付けば午後11時)と呼ぶ人もいる。こうした勤務実態を学校単位でもつかんでいないケースも多く、試みとして勤務表をつけ始めた学校もある。

 教員の多忙化軽減と学習内容の増加に対応し、九州でも夏休みの短縮、2学期制の導入、小学校では午前中5時限制(通常は給食まで午前中4時限)導入などの動きが広がりつつある。堅粕小学校(福岡市)の入江誠剛校長は「学校行事の実施時期の見直しやスリム化もポイント。例えば、運動会の開催時期を5月から10月に変更したことで、年度当初にゆとりが生まれ、学級づくりに専念できた」。

 福岡県PTA連合会の永原譲太郎会長は「先生たちの大変さも分かり『何か手伝いましょうか』と話を向けるが『任せてください』。保護者ともっと連携できることがあるのではないか」と話した。

 西南女学院大の新谷恭明教授(教育学)によると、「教師の多忙化」という言葉は、高度経済成長の昭和30年代に登場する。「学校はいま、多くの業務を抱え込み、生活習慣病のような体質になっている。もっと生徒を信じ、生徒の自主性に任せるような取り組みを広げることで、授業や指導のあり方を考える『間』(ゆとり)も増える」と話した。

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 現実の「見える化」を
 内田良・名古屋大大学院准教授(教育社会学)

 教育現場では「子どもたちのために」として、多くを追い求めるあまり、子どもや教員に生じるリスクが見えなくなってしまうことが少なくない。先入観に縛られ、実は思考停止に陥っている。事故のリスクを抱えながら、巨大化していった運動会の組み体操や過熱する部活動などはその典型例だ。

 教員多忙化の一因になっている部活動には、生徒や教員の「自主性」に任せているからこそ、強制や過熱に陥るわなが潜んでいる。でも実は、生徒も教員も行き過ぎを感じている。学校の部活動はもともと、「競争」ではなく、子どもたちの「居場所」づくりが原点だったはずだ。それが見えなくなっている。

 教員の働き方改革についても同じことが言える。まず、授業準備でしょ、学校運営でしょ。でも、ここが教員にとって一番、手が抜ける所でもある。目の前の現実を「見える化」しよう。そこに改革のヒントがある。(談)

 ◆教員の多忙化 文部科学省の2016年度調査では、平日1日当たりの平均勤務時間は小学校教員が11時間15分、中学校教員が11時間32分。小学校教員の3割強、中学校教員の約6割が、厚生労働省が定める「過労死ライン」(月間超過勤務時間80時間以上)に達している。

 小中高校、特別支援学校教員ではここ数年、病気により約8000人が休職し、このうちうつ病などの精神疾患に伴う休職者が5000人前後を占める。多忙化が一つの要因になっているとされる。

 文科相の諮問機関「中央教育審議会」の分科会では、教員の働き方改革についての議論を始めており、年内にも対応策を示す方針。

=2017/08/13付 西日本新聞朝刊(教育面)=

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