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新任先生(1)大卒ストレート 一緒に成長したい

教科書を拡大コピーした三角形に、透明フィルムに書いた三角形がぴったり重なるかどうかを試す井手夏海教諭
教科書を拡大コピーした三角形に、透明フィルムに書いた三角形がぴったり重なるかどうかを試す井手夏海教諭
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 夏休み明け3日目の5日。福岡県遠賀町の浅木小学校5年2組の教室で、大学を今春卒業したばかりの井手夏海(なつみ)教諭(23)は「なるほどね。先生、分からんやった」。独り言のように、子どもたちに語り掛けた。

 3時限目の算数は、形も大きさも同じ、図形の「合同」を学ぶ授業だった。黒板には四つの三角形が張られ、透明フィルムの三角形とぴったり重なるのはどれか?

 一目瞭然の三角形がまず一つ。でも、もう一つ合同の三角形があった。井手教諭がフィルムを重ねても合わない。すると、児童たちから「(フィルムを)裏返したら?」。合同な図形であることが証明できた。

 フィルムは夏休み期間中、2学期の授業をイメージして井手教諭が作製した。同じ図形ながら、裏表で見え方が違うことに気付いてもらいたかった。

 「授業って面白い。子どもたちと一緒に学ぶ姿勢を大切にしたい」

   ◇   ◇

 先生を目指したのは、小学時代の楽しかった授業体験が背景にあるという。

 「教育のスタートは小学校にある」。中学、高校や、その後の礎となる「学ぶ姿勢」を自分なりの方法で伝えたいと考えた。その鍵を握っているのは「学校でたくさんの楽しい思い出を、どう作ってあげられるか」だと思っている。

 福岡教育大(同県宗像市)で学び、卒業式の3月24日、着任校を通知する文書が届いた。週明けの27日、浅木小学校に出向いた。その後、担任を告げられた。期待と不安が入り交じる。担任する5年2組の児童は22人。どんな子どもたちだろう、興味は? 初日の授業をイメージし、教科ごとに3、4回のシミュレーションを重ねた。

 板書の完成図をノートに記し、流れを整理。指導担当の40代教諭をはじめ、先輩教員に努めて話し掛け、授業案への助言を求めた。前年度までの担任にも電話を入れ、児童一人一人の「学校での生活ぶり」を聞いた。

   ◇   ◇

 1学期最初の授業も算数だった。想定外の発言が児童から出され、満足に返答できなかった。「反省しきり。授業準備に終わりはないと思いました」

 小学校によって違いもあるが、新任教員の多くは初年度、3、4年生を担任する。中学入学を控え、思春期も迎える5、6年生の授業や指導にはかなりの「教師力」が求められる。

 「学力格差」「二極化」(平均・中間層が薄く、高学力と低学力層が分厚い)は、大学でも習った。分布図では二つ、三つのこぶを描く曲線になる。でも、実際に教壇に立つと、子どもたちの授業理解にはもっと凹凸があることを痛感する。

 計算問題や作文でつまずく児童には、給食前などの合間にマンツーマンで向き合うが、思うように伝わらないことも。「これはどう?」。プリントの端に易しい問題を書き、理解度を確かめる。「心配せんでいいけん、また続きをやろう」

 子どもにとって、どんな問い掛けが有効なのか。息長い指導や関係づくりが不可欠なことだけは分かるが、まだ手応えはつかめない。放課後には、授業準備と同じくらいの時間を割き、子どもたちの顔を思い浮かべ、それぞれの課題について考える。

 5年2組は私語も少なく、活発に発言する児童が多かった。それでも井手教諭は「まだまだ課題は多い」。自身の凸凹も自覚する「先生1年生」に、どんな授業を理想としているのか、聞いてみた。

 「教師が一方的にしゃべらず、子どもたちと一緒に議論し合い、学んでいく授業ですね。学校は、子どもたちの『学びたい』をかなえる場所であるべきですから」

 ◆大量定年・大量採用時代 1971年~74年に生まれた第2次ベビーブーム世代(団塊ジュニア)の就学に合わせ、大量に採用された教員が定年時期を迎え、学校現場では教員の大量採用時代に入っている。福岡市では来年度、小中学校と特別支援学校を合わせた採用数は過去30年で最多の561人を予定している。自治体間での人材獲得競争も激化し、各教育委員会では年齢制限の上限を緩和するなど、新たな対応にも乗り出している。2020年度から小学校を皮切りに新学習指導要領が順次導入されるなど、教育改革の波も押し寄せる中、大量採用された教員をどう育成していくか、各学校での課題になっている。

=2017/09/10付 西日本新聞朝刊(教育面)=

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