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新任先生(2)転身 会社員から教師へ

数学の授業中、教室を回りながら生徒を指導する室園悟志教諭
数学の授業中、教室を回りながら生徒を指導する室園悟志教諭
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 授業の終わりを知らせるチャイムが鳴り、休み時間に入っても、博多中(福岡市博多区)の新任教諭、室園悟志教諭(32)は教室に残り、生徒一人一人の対応に追われていた。

 「分からない所があるんですけど」「忘れ物をしました」。様子が気になった生徒もいる。10分間の休み時間を目いっぱい使い、教室を駆け足で回る。次の授業の先生が入って来たので、急いで教室を出た。

 その後も廊下にある作業用の机で、担任するクラスの自習ノートを点検していった。

 「休み時間は、授業中に対応できなかった生徒のフォローに使います。授業中に応えてあげたいけれど、授業は先に進めないといけない。どこまで授業内で対応すべきか、バランスが難しいですね」

   ◇   ◇

 福岡市内の中学校で約3年間、講師を務めた後、昨年10月、3度目の挑戦で教員採用試験に合格。博多中に4月、着任した。数学を教えながら、1年生のクラスを担任する。

 最初から先生というわけではなかった。理系の大学を卒業後の2008年、航空機の内装品を設計・製造する東京の民間企業に就職。大学では教職課程を履修し、中高の数学教員免許を取得したが、「先生になるのは社会を経験してからでも遅くはない」と考えていた。

 11年には東日本大震災。休日を使い、東京から被災地にボランティアとして通った。翌年、東京の企業を退職し、地元福岡に戻ってベンチャー企業に転職した。その傍ら、NPOの九州地区の代表となり、市民でつくるミュージカルの公演活動にも力を注いだ。

 遠回りにも見える人生だが、室園教諭は大学卒業後の経験こそ、教員としての強みになると信じている。

 「子どもたちもいずれ、学校から社会に出る。他の先生とは違う、さまざまな社会人経験をしている自分だからこそ、子どもたちに伝えられることがあると思う」

 社会とのつながりの少ない教育現場に、新しい風を吹き込みたいという思いもある。

 とはいえ、会社員時代との違いに戸惑うことも多い。

   ◇   ◇

 例えば、ランチタイム。会社勤めのころは、1日で一番リラックスできる休憩時間だったが、学校ではそうはいかない。給食の時間は30分。実際は配膳に15分かかり、自身の食事時間は数分。残り時間でテストや宿題の○付けをしたりする。給食中に生徒同士で小さなトラブルが生じることもあり「正直、心が休まる時間ではないですね」。

 授業ではいつも「想定外」が起きる。授業中に黒板が見えないと言い出す生徒がいたり、集中力が切れて、教室内がざわついてしまったり。あるクラスでは余裕を持って終わる単元が、別のクラスでは半分も進めない時も。毎回思い通りに進まないが、そこが面白くもある。

 「学校現場は毎日、イレギュラーがレギュラー。臨機応変さが求められる。決まったことを決まった通りにやれば、仕事が進んでいた会社員時代とは全然違いますね」

 半面、自分の仕事に対する反応がつかみにくかった会社員時代とは違い、学校では、授業の手応えや生徒の反応がダイレクトに返ってくる。授業やホームルームでの自分の対応は正しかったのか、自問する日々だが、生徒たちのまっすぐな反応に救われ、やりがいを感じている。

 「自分の強みを今、生かせていると思いますか」。記者の問いかけに室園教諭はこう答えた。「いえいえ、まだまだです。今はまず、日々の授業、指導をしっかりこなすことから。それから経験を生かして、子どもたちに刺激を与えていきたいです」

 ◆福岡市の教員採用 福岡市では本年度、小学校と中学校、特別支援学校を合わせて、22~54歳の計397人(男性159人、女性238人)を採用。倍率は6・5倍だった。
 筆記試験、実技、面接で審査され、採用には一般選考の他に、特別選考の枠もある。本年度採用された397人のうち、民間企業などで社会人経験が5年以上ある人が対象となる「社会人枠」で5人▽他の自治体で3年以上の正規教員経験があるか、市内で常勤講師として5年以上の経験がある人が対象の「教職経験者枠」で76人-が採用されている。

=2017/09/17付 西日本新聞朝刊(教育面)=

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