給食のハテナ?(4)記者ノート 私もつらかった

東光小のランチルームでの給食。先生のエプロンから伸びた「小腸」を児童が引っ張り、笑いが起きた=11月29日
東光小のランチルームでの給食。先生のエプロンから伸びた「小腸」を児童が引っ張り、笑いが起きた=11月29日
写真を見る

「あと一口」の重圧、理解して

 小学校高学年のころ、私(37)は給食が食べられなかった。だから、食育の視点にも立ち、食べ残しを減らそうとする各学校の取り組みを取材しながら、実は複雑な心境でもあった。

   ◇   ◇

 徳島県で生まれ、あの頃は住宅街の小学校に通っていた。給食時間は大きなランチルームへ。2~6年生の異学年混合のグループごとにテーブルに座る。私は決まって吐き気に襲われ、トイレに駆け込んだ。

 盛られた給食を残すとき、担当の先生に「残していいですか」と伝えると、「これだけ食べてね」「あと一口」と言われ、口に押し込まれた。それが発端だったと思う。完食の重圧にさいなまれ、給食は「においを嗅ぐのも嫌」になった。

 さまざまな手を使って給食を減らした。食べる前、近くの子に米飯やおかずをあげ、わざと料理を床に落とし、パンをポケットに忍ばせた。米飯を落としたときは、上履きで床にこすりつけ「証拠隠滅」を図った。

 中学以降は普通に食べている。給食はおいしかったはずだ。作ってくれた調理員さんには、申し訳ないとも思う。

   ◇   ◇

 取材した福岡市博多区の東光小。その月に生まれた児童と先生がランチルームに集まり、5~8人がけの丸テーブルで食事をしていた。

 簡単な自己紹介をして、食べ終える頃、先生は趣向を凝らしたクイズを出した。腸や胃の立体模型をあしらったエプロンを身に着けていて「小腸の長さは?」。すると、エプロンからぽろっと小腸の模型が離れ、実際の「長さ5メートル」に。子どもたちは驚き、大笑いになった。

 年代も学校規模も地域も違うが、私とは全く別の記憶が、給食の味とともに、子どもたちには残ったはずだ。

 「子どもと一緒に並んで給食を食べると、口数が少ない子でも趣味や家庭での出来事を、すっごく話してくれる。そんな風に先生と話すのって、子どもも楽しいみたい」。ある先生はそう話した。私はあの頃、そんな「伴走者」のまなざしを、先生に求めていたのかもしれない。

 授業でも部活動でもなく、給食って、不思議な時間だ。「元気に完食」ばかりではなく、貧困、少数者(マイノリティー)、食物アレルギーなどの視点から見れば、また別の風景が広がっているだろう。苦い体験も無駄ではなかったと、今は思える。

 ◆読者から

 今月のテーマ「給食の?」には、読者からこんなメールや手紙も届いた。

 「残食率と学校の荒れ」との相関について元中学校長。

 調理実習を例に挙げ「関係がほぐれたクラスでは、自分達が作った料理がたとえ不出来でも、うれしそうに笑いながら最後まで食べる。一方、ギスギスした関係のクラスや気持ちが荒れている生徒がいると、おいしくできた時でさえ『俺、要らん』とか『こんなの食えん』といった言葉が飛び交いがち」

 「人前で物を食べるのは、自分の内面を見せることと同じ。クラスや心の状況によって、食べる姿が違ってくる。給食の残食率と生徒の荒れは、少なからず相関する」

 給食中の児童のざわつきについて、小学校を退職した教員からはこんなメール。

 「いろんなメニューがあるので、子どもたちにとっては初めて口にする物も多い。それで不安になったり、口に合わなかったりすると、隣の子にちょっかいを出したり、席を立ったりする子も少なくない」

 現職教員は自省を込め、こんな意見を寄せた。

 「給食開始のチャイムと同時にタイマーで『はいあと○秒 □さん急いでー』と、当番を着替えさせ配膳用意する。給食をこぼす子、嘔吐(おうと)する子、けんかの仲裁もあったりしながら、40~45分で完食を目指す。昼休みに入っても頑張らせます。『これでいいのか…』。給食本来の目的や望ましい子どもの姿とはかけ離れているようで、時間をやり抜くことで精いっぱい」

 取材では、調理場の中も見せてもらおうとしたが「検便が必要」。ノロウイルスなどの対応だった。調理員や栄養教諭は月2~3回の検便をしているそうだ。現場からは「親御さんに、もっと給食のことを知ってもらいたい」との声もあった。

=2017/12/24付 西日本新聞朝刊(教育面)=

西日本新聞のイチオシ [PR]

西日本新聞のイチオシ [PR]