原発の労働現場から(中) 危険作業 請負任せ

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 原子力発電所の運営は危険性の高い作業を請負労働者に任せることで成り立っている。それは数字からも明らかだ。

 ◆被ばく量 社員の4-13倍

 九州電力玄海原発(佐賀県玄海町)、川内原発(鹿児島県薩摩川内市)の管理作業や定期検査では、請負労働者の放射線被ばく量(実効線量)は九電社員に比べると2011年度までの5年間で4~13倍に上る。原発労働者は9割前後が請負の形で従事しており、請負の総実効線量は社員比で40~70倍に跳ね上がる。

 電力会社は毎年、自社の社員と、メーカーや下請けなどの「関係請負人」に分け、年間被ばく量が「5ミリシーベルト以下」「5ミリシーベルトを超え15ミリシーベルト以下」など7区分に何人該当するか管轄の労働基準監督署に報告しなければならない。作業員の被ばく量は身に着けている個人線量計などで把握される。

 本紙は佐賀、鹿児島労働局へ情報公開請求し九電の報告書を入手した。

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 報告書によると、直近の11年度で玄海原発の総労働者数は4265人。このうち九電社員が535人で、年間の被ばく量は平均で0・1ミリシーベルト。3730人と圧倒的に多い請負労働者は0・7ミリシーベルトで社員の7倍だった。

 川内原発の総労働者数は11年度で3016人。九電社員が295人で0・2ミリシーベルトなのに対し、請負労働者は2721人で1・2ミリシーベルトと6倍。09年度には13倍と、5年間で最も大きく開いた。

 請負の中でも、原発メーカーなどの常駐者に比べ、放射性物質の付着した配管近くなどで作業を強いられる、定期検査に入った労働者が最大で3倍の高線量だった。

 原子炉等規制法が定めた、放射線業務従事者の被ばく量の上限は1年間で50ミリシーベルト(5年間で100ミリシーベルト)。九電の請負労働者の被ばく量はこれを下回っているが、原発労働者の疫学調査に詳しい福岡女子大の吉村健清教授(公衆衛生学)は「低線量の長期の被ばくが及ぼす健康影響は、まだはっきり分かっていない」と指摘する。

 厚生労働省は11年、原発労働者のがんの労災認定が過去10件あり、その累積被ばく量は5・2~129・8ミリシーベルトだったことを明らかにしている。

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 福島第1原発事故の処理作業で、線量計が不足するなど労働者の安全が置き去りにされた問題が相次いで発覚。そうした事態を受け厚労省は昨年8月、「事故の教訓を踏まえた対応」を電力各社に求める通達を出した。

 緊急時に慌てないよう、事前に線量計の確保や労働者教育の体制整備などを進めさせる狙いだ。約20項目の課題について「実施済み・準備中・未実施」のいずれか自主点検させ、昨年10月までに報告するよう電力会社に求めた。

 本紙は、九電が関係労働局に提出した報告書について情報公開請求した。厚労省が出した決定は「法人の権利を害する恐れがある」などの理由で「不開示」。一方、九電は本紙が質問した一部の項目について「実施済み」と回答したが、報告書の公表には消極的だ。

 緊急時に本当に労働者の安全が確保されるのか-。チェックしようにも厚い壁に阻まれ、よくわからない。 

=2013/01/09付 西日本新聞朝刊=

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