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思わぬトラブルも…バス運転手まで使う博多弁、驚異の浸透力

運転手の多くが福岡県内の高校を卒業しているという西鉄バス=2017年3月6日、福岡市・天神
運転手の多くが福岡県内の高校を卒業しているという西鉄バス=2017年3月6日、福岡市・天神
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関連商品まで登場して話題を集めた博多弁=2009年、福岡市博多区の上川端商店街
関連商品まで登場して話題を集めた博多弁=2009年、福岡市博多区の上川端商店街
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博多弁を記したクリアファイルも登場したことがある=2008年
博多弁を記したクリアファイルも登場したことがある=2008年
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上りと下りが行き違うときは、片方が駅で待ち合わせる西鉄貝塚線=2017年3月3日、福岡市東区の名島駅
上りと下りが行き違うときは、片方が駅で待ち合わせる西鉄貝塚線=2017年3月3日、福岡市東区の名島駅
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 すーすーするぅ(肌寒い)、一万円札ばこまめて(両替して)−。福岡市では日常会話に博多弁が使われることが多い。その浸透力は、時には、公共交通機関の乗務員がアナウンスで語ってしまうほど。ただ、東京や大阪の人には理解できない場合もある。意味を取り違えると、思わぬトラブルも起きかねないため、転勤や就職で福岡に転入した後は、気をつけてほしい。

 ■運転手の7割が福岡の高校卒

 「どこから乗りんしゃったとですか…」(乗ったのでしょうか)

 マイク越しに男性運転手が博多弁で優しく語りかけた。平日夜、福岡市内を走る西鉄バス車内でのこと。お年寄りの女性客がバスを降りる際、ブザーが鳴った。交通系ICカード「nimoca(ニモカ)」にエラーが発生したのだ。

 乗車時に、どこから乗ったかカードに読み込ませていなかった。戸惑う女性に運転手が語りかけながら、精算の手続きを手ほどきした。

 一部始終を見ていた40代男性会社員の乗客は「あの運転手はお年寄りの緊張を解きほぐすため、あえて博多弁でしゃべった気がする」と感心していた。

 西鉄こと西日本鉄道(福岡市)は、グループのバス保有台数が3000台弱と日本最多を誇る。同社広報によると、車内アナウンスは「標準語で統一している」というが、「ちょっとしたときに、ぽろっと方言が出ることがあるかも」。西鉄単体だけでも約2000人いるバス運転手。その7割強が福岡県内の高校を卒業している。

 ■胸ぐらをつかまれ激怒される

 柔らかく、優しいイメージの博多弁。大阪弁と比較して、女性が使えば「カワイイ」などとテレビ番組で紹介されることもある。

 ただ、意味を取り違えると、ひどい目に遭う。

 「でしょ」と「直す」。福岡市出身の斉藤寛さん(51)は、この二つの言葉に「苦い思い出がある」。仕事は、三好不動産の経営企画課長。福岡の歴史や習慣を解説する「福博講座」の講師も務める“福岡通”だ。

 東京には、大学進学や就職、転勤で通算16年間住んだ。このうち、学生時代のホテルでのアルバイトでつまずいた。

 「テーブルはここでいいんでしょ…」

 「料理はこれでいいんでしょ…」

 先輩のバイト生に指示を仰いでいた時だった。

 「テメー、何さっきからため口たたいてんだよっ」。突然、先輩から怒鳴られ、胸ぐらをつかまれたという。

 丁寧語のつもりだったが、関東出身の先輩は同級生に使う「タメ口」と受け止めたようだ。

 ホテルの社員に「このテーブルを直せ」と指示された時もそうだ。

 テーブルの脚をたたんで片付けていると、「おまえ、何やってんだよっ」とまた怒声が。福岡では「片付ける」の意味で語られることが多い「直す」は本来、「修理する」の意味。社員は「並べ直せ」の意味で使っていた。

 客を迎える前の慌ただしいホテルの現場で、テーブルをどんどん片付ける。そんな「真逆」の行動を、博多弁が生んでいた。

 ■福岡人と分かる決定的な一言

 「今から来るけん」(行きます)も、「真逆」のリスクをはらむ。自分が相手方へ行くのに、なぜか、「来る」と言ってしまう。ビジネスの現場では行き違いは避けたい。

 まったく意味が通じない言葉もある。

 「離合停車。しばらくお待ちください…」

 西鉄電車で全線単線の貝塚線(福岡市−福岡県新宮町、11キロ)では、上下線が行き違うとき、駅で待つ電車内ではこんなアナウンスが流れる。

 車と車がすれ違う意味の「離合(りごう)」は、福岡など九州の方言とされる。

 一方で、鉄道用語説もあるようで、西鉄の駅員が持つ案内用の要領集には「離合待ち」とアナウンスするよう記されている。

 ただ、京王電鉄(東京)は「待ち合わせのため停車」とアナウンス。首都圏に単線区間が「ほとんどない」というJR東日本(同)も、そもそも離合自体、「初めて聞く言葉」(関東出身の男性社員)だ。

 福岡では当たり前過ぎて、西鉄はもはや標準語扱いにしてしまったのか。

 福岡県出身の記者も、東京勤務時代に標準語扱いにしていた言葉がある。農林水産省の取材を担当した約10年前、課長席を訪ねて声を掛けた時だ。

 「あのですね…」

 「あっ、九州の方ですね、懐かしいです」と即座に笑みが返ってきた。課長はかつて九州農政局管内に勤務していたという。

 よく使う博多弁は、まだまだある。

 「とっとーと」(確保している)
 「なんしよーと?」(何をしているのですか)
 「たい」「ばい」(だよ)
 「ばってん」(しかし)

 福岡にきんしゃったら、こげな博多弁が聞こえるったい。ほんなこて驚きんしゃろうばってん、そのうち慣れるばい。「あーた、なんしようとね」て笑いながら言われたら、そりゃあ親愛の情やけん、気にせんどってね。

■■■

 記者は福岡県といっても北九州市の出身なので、博多弁をうまく使いこなすことはできない。しかし、身近に博多っ子の上司や先輩がいれば、こんな“ネイティブ”な言い回しを教えてもらうこともできる。翻訳は、ぜひ近くの博多っ子に聞いてほしい。打ち解け合うきっかけになるかも。

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