「汚れた自分、おとしめたかった」小1で性暴力被害、風俗に居場所求める女性たち(5)

実社会で孤立し、子どもを育てるために性風俗業界へ足を踏み入れる女性も少なくない
実社会で孤立し、子どもを育てるために性風俗業界へ足を踏み入れる女性も少なくない
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 手首には傷、全身にタトゥー。「痛みを伴って形に残るのが好きでした」。北九州市に住む30代のエリさん=仮名=は10年近く性風俗業界に身を置いた。最初に入ったときの感覚も、自傷行為に近かったという。

 「汚れた自分をおとしめたかったんです」。自己分析では、小学1年で近所の男子中学生から性暴力を受け、その傷が心の奥底に残っているからだと思う。17歳で援助交際を始め、18歳でヘルスに入店した。

 いつも死ぬことばかりを考えていた。そんな日々でも「人と肌を合わせていると安心感がありました」。業界を離れたのも望んだわけではなく、理由の一つは過食で体形を崩したから。グラビアを飾った風俗雑誌を今も大切にしている。

 ユリさん(49)=仮名=も性風俗業界を居場所にしてきた。17歳で出産したとき、暴走族の相手は少年鑑別所にいた。1人で育てる決心をしたものの、世間の風は冷たかった。

 昨年の厚生労働省調査によると、シングルマザーの平均年収は243万円で、ひとり親の男性の6割に満たない。生活保護も考えたが「母子家庭というだけでも世間から下に見られるのに」。性風俗だと男性より断然稼げる。シングルマザーも珍しくない。乳飲み子を抱え、各地の温泉街を転々としながら働いた。

 夜の街で知り合った男に覚醒剤を打たれ、数年前に薬物依存による精神障害と診断された。今は福岡県内の福祉施設で暮らす。子どもにはもう何年も会えていない。それでも「子どもを抱えて生きるにはあそこしかなかった」と思う。

    ◇    ◇

 「風俗は女のセーフティーネットだね」。福岡市で違法な性風俗店を経営していた40代の男性は語る。最近は求人広告に「託児所完備」の文字も目立つ。とはいえ、そこは灰色の街。性行為の強要など人権侵害が横行し、借金や薬物で身を滅ぼす女性は少なくない。

 男性の店の従業員も数年前、わが子2人を絞殺する事件を起こした。30代のシングルマザー。子どもに仕事の内容が知られたら見捨てられるとの強い不安から衝動的に犯行に及んだ-と裁判で判断された。状況を把握できない認知障害、自分をコントロールできない行動障害も認められた。

 性暴力、貧困、障害…。どれも実社会のセーフティーネットが十分に機能していれば、とば口で立ち止まれたかもしれない。夜の繁華街をさまよう少女たちを支援するNPO法人BONDプロジェクト(東京)の橘ジュン代表も「虐待や貧困で支援が必要な子ほど、助けを求めるすべを知らない。情報をどう届けるか考えなければ」と指摘する。

 わが子に手を掛けた母親には、懲役10年を超える実刑判決が言い渡された。経営者だった男性は「前の店でトラブルを起こし、行き詰まってうちに来た。子どもはかわいがっていたようだけど」と振り返る。灰色の街へ、今日も女性たちが吸い寄せられていく。

おわり

この記事は2017年12月17日付で、内容は当時のものです。

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