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まちが消える?持続策は? アンケートで探る地域再生

わたしたちの九州には豊かさを生み出す山々と田畑、長く続く人々の営みがある(宮崎県五ケ瀬町)
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 「ここで生きるネット」のメンバーに、「消滅可能性都市は本当に消滅してしまうのか?」「これからも地方が活力を持ち継続するには何が必要か?」の2点を聞いた。「これが正解」と答えにくい質問だが、メンバーは経験を基に、それぞれの視座で回答した。アンケート結果の中には、地域づくりのヒントが詰め込まれている。

 ◆消滅可能性都市は消えるのか?

 消滅可能性都市は本当に消えてしまうのか? 「そう思わない」(43%)の回答が、「そう思う」(25%)と「どちらともいえない」(32%)を上回った。

 「NO」 地方の力を信じる 

 消滅可能性都市は消えないと答えた理由には、地方が持つ「力」への期待がにじんでいた。「地方には都会にない魅力的な要素がある。それを生かしたアイデアに期待する」(立花祐平さん)。「地方と都市との関係性を再構築し、都市へ供給するモノに付加価値を与えてほしい。所得が増え、人口減少に歯止めがかかる」(千相哲さん)。「住民には地域への愛着があり、先人から受け継いだ知恵もある。決して地方が消滅することはない」(飯干辰己さん)と、人の営みや歴史に注目する人もいた。

 若者の意識の変化を理由に挙げた人もいた。「学生の就職状況に変化がある。大企業や中央官庁でなく、九州の農山村に飛び込み、地域に根ざそうとする卒業生が複数いる」(佐藤宣子さん)。「若者の中には環境問題への関心と自然への渇望を抱く人が増えてきている」(島村菜津さん)。園田匠さんは、地元・大分県日田市の現状を踏まえ「覚悟をもった若者が増えていることを実感できる」。「地方の明日」の鍵は若い人が握る、と見る。

 地方創生政策の実効性に望みを託す人も。吉弘拓生さんは「(地方創生で)多くの自治体がこれまでの政策の見直しや『実現したかった政策』の実現が可能になったと思う」という。一方で山下祐介さんは「すべては政策の善しあしにある」とする。「自治体が制度上消えることはある。平成の合併で、政策によって自治体はいくつも消滅した。政策がしっかりしている限り地域が消えることはないが、(問題が多いと考える)地方創生政策がこのまま作動し続ければ、消滅する地域は出てくるのでは」と疑問を投げ掛けた。

 「YES」 人口減の影響大

 消滅可能性都市は「消滅する」と答えた人は、人口減少社会を理由に挙げた。「高齢化の先にある急激な人口減少は確実にやって来るから」(坂本毅啓さん)。「生産者人口が減る中で、税収の減少、公共サービスの低下は止められない」(石田達也さん)。「労働力が低下すると生活に必要なことができなくなっていく」(七條芙美さん)

 山下さんと同様、地方創生政策と「消滅」の関係に注目する人も。岩永真一さんは「地方創生は絵に描いた餅。多少魅力的な取り組みはあっても継続できるものは少ない。地方から都市への人口流出は世界的な流れだ」と指摘する。庄崎茂さんは消滅を阻止できない地方自治体に「頭の切り替え、組織の在り方などのレベルが低すぎる」と手厳しい。「首長の考え方、リーダーシップも大切。民間で鍛えられた人を雇い、使いこなせる自治体だけが生き残れるではないか」

 「どちらともいえない」と回答したのは、地域の底力を信じる一方、消滅の憂いがぬぐえない人たちだ。「打開するすべと時間は残っているが、現在の経済状態のままならば消滅するだろう」(平兮元祥(ひらなまさよし)さん)。「残るために努力した地域は残る。だけど国策で守られるものではないと思う」(大津愛梨さん)

 消滅の可能性は認めつつも、それを回避する努力を求める声もあった。「人が減る中でも、その地域に住み続ける人々が、どうすれば幸せに暮らし続けられるかを考えるべきだ」(柴田建さん)。「人が暮らす場所であり続けるには、地域の人が求める暮らしを継続できる環境づくりが必要だ」(今村寛さん)

 「ここで生きるネット」メンバーの消滅可能性都市への見方、考え方は違っても、地域をまっすぐに見るまなざしは共通している。

 ◆地域が持続していくには何が必要?

 これからも地方が持続していくためには、何が必要か? 示唆に富んだ意見が集まった。実践を求める対象ごとに要望をまとめた。

 国・地方自治体へ 構造、意識改革を

 構造変化を求める声が出た。「1次産業で生計が立つ経済の仕組みづくりが必要。豊かな地方の土地と自然資源を経済的価値に変える鍵は1次産業の活性化だ」(川口幹子さん)。「若者が自由な意見を出せる雰囲気づくり、地方でその意見を実現できる協働体制づくりが重要」(小出秀雄さん)。国の支援への注文も。「地域で頑張っている企業や団体、人に光が当たるように支援を進めるべきだ」(福永栄子さん)。「子育て支援、教育レベルの保持、企業の東京一極集中の是正」(レムコー・フロライクさん)など、地方だけでなく日本全体の問題を注視すべきだとの意見もあった。

 持続可能なまちづくりへ、自治体の取り組む姿勢を問う声があった。「住民に奉仕する自治体の主体性と覚悟が第一」(矢房孝広さん)。「意欲ある人材の発掘。外からの“誘致”も含め、人材力アップしてほしい」(八尋和郎さん)。教育、医療への視線は熱い。「地域社会を支える人材育成につながる学校教育の充実を」(千綿由美さん)。「学校と医療機関は子育て世代には欠かせない。住民ニーズを第一に考えて」(高野和良さん)。IT社会、グローバル社会を踏まえた要望も。「地域活性の取り組みをビジュアルで分かりやすく表現し、わくわくさせてほしい」(黒木雄平さん)。「周辺自治体や世界の都市と連携し、総合的な改善に取り組む必要がある」(田北雅裕さん)

 住民へ 自覚、愛を持って

 都市部、地方を問わず、住民意識の変革への言及が多かった。「『都市部が良い、地方が悪い』というイメージ、価値観を持つ世論を変える取り組みが必要」(上治英人さん)。「今の貨幣経済中心の社会の在り方を考え直すことが大切」(松岡勇樹さん)。「国の支援に頼るだけではいけないことに気づいてほしい」(首藤文彦さん)。意識が変われば、住民の「自覚」が強くなる。「大切なのは住民たちの主体性、地域の担い手という意識だろう」(西田明紀さん)。「地域に住む人が、どういう地域でありたいのか考え、選択することが重要」(福島大輔さん)

 こんな意見もあった。「愛が必要。地域への愛を高めるには地元の魅力を生かし、楽しく面白く、市民が少しずつ参加できる取り組みが有効だろう」(福井逸人さん)。愛は地方を、そして日本を救えるだろうか。

   ◇  ◇

 意見や要望、重要なキーワードが百出した。後は言葉をどう行動に結びつけ、地域活性化に向けて実践できるのか。「ここで生きるネット」のメンバーと話しながら、考えてゆく。

 消滅可能性都市 少子化による人口減少で、存続が困難になると予測される全国896市区町村のこと。有識者による「日本創成会議」(増田寛也座長)が2014年に発表した。20~39歳の女性が2040年までに半減することが指標となっている。九州は125市区町村が該当する。

=2017/01/03付 西日本新聞朝刊(オピニオン)=

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