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仮住まい、見えぬ生活再建 迫る定年、認知症の母、小学生の子ども2人… 日田市大鶴地区の梅原さん一家

引っ越した市営アパートで「今度は壊れない家が造りたいね」と話す梅原さん一家
引っ越した市営アパートで「今度は壊れない家が造りたいね」と話す梅原さん一家
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 日田市大鶴地区で生まれ育った梅原美智夫さん(58)は、九州豪雨で家が床上浸水して住めなくなり、生活が一変した。認知症を患う母の病状、子どもの教育費、来年には迎える自身の定年…。心配事は頭から消えない。「自宅を改修して戻りたいが、また豪雨に見舞われるかもしれないと思うと、踏み出せない」。豪雨から2カ月以上たった今も、仮住まいが続き、生活を建て直す見通しは立たない。

 市中心部の市営アパートの一室。6畳間が3部屋ある。梅原さん一家5人が生活していくには手狭に見える。

 ガス会社で働く梅原さんは来年、定年を迎える。妻の美宝さん(41)は、パートで勤めていた福岡県東峰村のキノコ工場が被災したため辞めた。長男の竜徳君(11)=小学6年、長女の明花さん(9)=同4年=はこの夏休み、初めて住む慣れない地域で過ごした。梅原さんは、自由に遊ぶことができないだろうと、小型ゲーム機を初めて買い与えた。

 豪雨当日。自宅近くの大肥川は堤防が決壊し、氾濫した。梅原さん一家は近くの公民館に避難した。自宅1階は約70センチ浸水し、全体が泥まみれ。リフォームしたばかりのトイレは壊れ、3週間かけ畳などの床をボランティアと一緒にはがした。自宅は市から「半壊」と認定され、1年間は無償で市営アパートに入居できた。泥に埋まってしまった家具や衣服は捨てて、最低限の荷物だけを持って、引っ越した。

 慣れない仮住まいでの暮らし。古里の自宅に戻りたいのはやまやまだが、再建には数百万円かかると聞かされた。認知症を患う母の一江さん(84)は、豪雨の4日後、一家が寝ている間に避難所からいなくなり、警察に保護されたことがある。子育てに加えて、年老いていく母の介護関係費用のことも考えると、梅原さんは自宅の改修には踏み切れないでいる。

   ◇    ◇

 9月に入って、約3週間が過ぎた。美宝さんは片道30分かけ、子ども2人を大鶴地区の小学校へ送迎していることもあり、なかなか新たな働き口がみつからない。竜徳君と明花さんは、大鶴地区に住んでいた頃は学校から帰るとランドセルを玄関に置いて、すぐに外に出かけていた。プールが大好きだが、今夏は室内にいることが多く、肌が白くなったという。「ゲームがあればいいよ。友だちと遊ぶ方が楽しかったけど」と話す竜徳君は取材の間、かたときもゲームから目を離さない。

 梅原さんは、「川が氾濫しないように堤防を造って、安心させてほしい。ただ元の暮らしに戻りたいだけです」。ただ、大肥川の護岸工事には約5年かかると見込まれている。横で明花さんがお絵かきを始め、つぶやいた。「今度は壊れないお家を造ろうね。飼ってた猫4匹と、新しい子犬と一緒に住みたいな」

=2017/09/22付 西日本新聞朝刊=

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