「ここで生きるネット」発 小出秀雄・西南学院大教授

小出秀雄さん
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◆学生と商店街活性化

 西南学院大(福岡市)の教壇に立って19年目になった。このところ感じるのは、学生たちのコミュニケーション能力の低下だ。例えば、少人数のゼミなのに、教室に入ってくる時にあいさつもしない。メールでは、タイトルも名前もなく「きょう休みます」と一文だけのものがあった。こちらから「あなたは誰ですか?」と返信する始末。携帯電話やメールの登場で、小さい頃から大人との接点が少ないことが背景にあるだろう。

 そんな学生たちを巻き込んで、福岡市西区の姪浜商店街を舞台に、2014年から地域活性化に取り組んでいる。プロジェクトの名称は「姪浜西南大学まち」。翌15年には、姪浜商店会連合会の協力の下、空き店舗を利用して、活動の拠点施設「M’sコミュニティ」を開設し、本格的にプロジェクトをスタートさせた。もともと商店街には、人が集まるような施設がなかったため、地域の交流の場、憩いの場として活用されている。

 きっかけは14年春。ある会合で姪浜商店街のまちづくりに取り組む女性にお会いした。商店街の厳しい現状を聞かされ「学生に来てもらって、商店街で活躍してもらいたい」と声を掛けられた。かねて、学生が大人と接する場が必要だと思っていたので、姪浜でのイベントを手伝ったり、カフェ巡りを企画したりしながら、交流の機会を増やしていった。

 学生たちが行き来するだけで、地域に活気が戻った雰囲気になり、大人たちも元気が湧いてくるようだ。そういう姿を見て、学生たちもやる気が起こる。あまり積極的でなかった学生たちが、主体的に活動し、アイデアを提案してくるようになった。拠点施設で毎週土曜日の午後に開いている「M’sとしょかん」の取り組みは学生のアイデアだ。施設内での本の貸し出しだけでなく、学生たちが地元の子どもたちの学習支援にも取り組んでいる。学生たちは徐々に地域に溶け込んでいる。

 今の学生たちは、自ら何かアクションを起こすことは苦手だ。ただ、きっかけを提供することで、社会で生きる力を身に付けるとも感じている。一方で学生時代の4年間だけの取り組みでは、肝心の地域活性化を成し遂げられない。卒業後でも気軽に地域に足を運ぶ雰囲気づくりが大事だろう。資金も必要だ。企業などから協賛を得る仕組みも考えなければならない。持続的な活動にするために、超えなくてはならない課題も多い。 (談)

 小出 秀雄さん 1971年、新潟県生まれ。横浜国立大、一橋大大学院を経て、99年に西南学院大教員に。専門は環境経済学。PTA活動などにも熱心に取り組む。


=2017/10/06付 西日本新聞朝刊=

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