「ここで生きるネット」発 今村寛・福岡市経済観光文化局総務部長兼中小企業振興部長

今村寛さん
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◆財政出前講座

 福岡市の財政調整課長時代の経験を生かし、地方自治体の財政状況を分かりやすく説明する「財政出前講座」で全国を回っている。自治体の規模の大小は問わず、職員の方を中心に「財政ってこうなんだ」という私なりの考えを話しているが、財政構造や健全化の取り組み事例など素材は大半が福岡市のもの。それでも参加者から「財政への関心が高まった」「うちはどんなんだろう」という声が上がるのは、自治体が直面する課題はどこも変わらないからだろう。

 財政シミュレーションゲーム「SIM2030」も依頼があれば、各地に行って開催している。対話しながら架空の自治体を運営する内容。ゲームを通して、財政面からもわがまちのことを考えてもらういい機会が生まれていると感じる。

 わがまちをどう活性化させるのか。自治体職員が抱える課題は自治体ごとに異なり、まちの規模や財政、人材など取り巻く環境もそれぞれだろう。だが最近の出前講座では、自治体が抱えている課題の根っこは同じだと言っている。根っことは「新しいことをやるためには何かを見直さなければいけない」ことだ。

 自治体の財源は限られている。その中で今までやってきた事業がのしかかってきて義務的経費が増え、施設維持のランニングコストも減らせず経常的経費が膨らんでいるのが現状だろう。収入は頭打ちなので、政策的経費、つまり新しいことを始めるところが細ってゆく。その構造は全国共通の課題だ。

 課題を乗り越えてゆくためには、「ビルド・アンド・スクラップ」が必要だろう。新しいことをやるためには、そのことより優先順位の低いことを見直す、という考え方である。例えば道路や公園など社会資本について、中長期的な維持保全を優先するため、新規着工整備のペースを落とすといった具合に。

 この考えを実現するためには、行政改革に取り組む人たちの対話が大事になる。対話によってものを導くのはなかなか難しいと思う。そのためにも情報を共有すること、立場を超えること、そして共通のビジョンを持つことを重視してほしい。情報を共有しなければ優先順位を決められない。立場を超えなければ話が深まらない。ビジョンが共有できなければ優先順位を決めるのに場当たりとなってしまう。この三つができれば新しいことを始める(ビルド)ために、より優先順位が低いものの見直し(スクラップ)が進められる。どんな規模の自治体であっても課題を乗り越えてゆける。今一番、伝わってほしいと願い、各地の講演で語り続けているメッセージだ。

 今村 寛さん 1969年生まれ、神戸市出身。91年に福岡市役所に入庁。財政調整課長、創業・立地推進部長などを経て現職。市職員中心のオフサイトミーティング「明日晴れるかな」も主宰。


=2017/12/15付 西日本新聞朝刊=

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