パパの育休 模索は続く 【第16部】誰もが輝く国へ ノルウェー・リポート<4>

育休中どう過ごしたかを語るストゥブルドさん(左)とニジビエツキーさん
育休中どう過ごしたかを語るストゥブルドさん(左)とニジビエツキーさん
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 ノルウェーの首都オスロ中心部からバスで約10分、黄色い壁の市立マルガリンファブリケン保育園は住宅街の一角にある。マーガリン工場を改装した同国最大の保育施設で、生後10カ月から5歳の約480人が通う。11月のこの日は気温氷点下。雪を払って中に入ると、Tシャツ一枚の子どもたちが、公園からそのまま持ち込んだようなジャングルジムによじ登っていた。

 5歳の長女を預けるニジビエツキーさん(42)は、広告代理店で働きながらバーを経営していて妻と共働き。育児休業と夏休みを合わせて取り、長女のときは4カ月、長男(7)のためには6カ月、専業主夫をした。

 育休は休業前の給与の100%が保障され、夫妻で計49週(80%の場合59週)取れる。うち10週は父親の割り当てで、利用しない場合権利が消滅する「パパ・クオータ」。男性の育児参加と女性の社会進出のため、93年に世界で初めて制度化した。出産関連費用も無料で「社会で子育て」する姿勢が明確だ。

 当初、育休を取る男性はほとんどいなかったが、今は9割に増え、10週を使い切る人が7割近い。次男(5)が園に通う広告クリエイターのストゥブルドさん(45)も、制度をフル活用して息子2人の面倒を見た。

 日本でも子どもが原則1歳になるまで育休を取得でき、給与の67~50%が雇用保険から給付される。だが男性の育休取得率は2・65%で、その6割近くは5日未満と短い(2015年度)。理由の一つは「一家の大黒柱」の収入が減ると経済的に不安だから。ノルウェーに比べると、子育ては自己責任に近い。

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 「離乳食は全部手作りした。口に入れたときに、どんな顔をするか見るのが楽しかったな」「2人目ができると、上の子と同時に見るのが大変だよね」。2人が語り合う内容は日本のお母さんと変わらない。

 仕事を長期間休んでも、不安や焦りはなかったと話すニジビエツキーさん。「子どもが寝ている間にネットで情報収集したり勉強したり、質の高い時間を過ごせました」。ストゥブルドさんは、子どもが大きくなってきた今「このままの感じで働くか、野心的なペースに戻すかは悩むところ」と語る。

 育休を経験して得たものは。2人は「仕事の効率アップ」を挙げる。今すぐやるべきか、明日でもいい業務か。家族との時間をつくるため、優先順位を付けて働くようになったという。

 「くだらない会議と思ったら出ない。無駄に夜8時まで残ってる人に『僕の方が2倍仕事してる』と言えるようになりました」とニジビエツキーさん。誰もがそんな働き方をすれば、国全体の生産性も上がりそうだ。

 パパ・クオータは4週でスタートし、一時期14週に拡大され、今は10週になっている。「休業する父親をもっと増やすべきだ」「家庭の自由な選択に任せるべきだ」といった、時々の世論を反映させてきた。

 ストゥブルドさんは「金融など一部の業界はまだ育休を取りにくく、遠慮する男性もいると新聞で読んだことがある。社会で育休を取れる文化に変えてい
くべきだと思います」と語る。

 どうすればもっと男女が等しく子育てに関われるか。ノルウェーの模索は続いている。

 ●ノルウェーの保育事情

 保育施設は日本のような保育所、幼稚園の区別がなく、0~5歳の子どもを預かる。オスロ市によると昨年末時点で全国に約6800あり、1施設の平均園児数は47人。希望者は原則100%入園でき「待機児童」という概念はない。
 公立と私立が半々だが施設の基準や教育内容は国の指針で統一。最大の教育目標は「遊びを通じて社会性を身につける」で、互いを尊重できる自立した人間の育成を目指す。保育料は自治体や保護者の所得で異なり、オスロの場合月額2750クローネ(約3万8500円)が上限だ。

 労働者は1カ月程度の夏休みを取るため、オスロの保育所も夏は1カ所を残し約5週間休業する。保育士は性別役割分業の名残で女性が多く、給与は他業種より低水準だったが「労組の努力もあり今では決して低くない」(市担当者)という。


=2017/01/10付 西日本新聞朝刊=

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