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非正規職員に残業代支給へ 新年度から福岡市方針 対象2700人 同一労働同一賃金 各自治体でも急務に

非正規職員の連携のため2月に創刊したニュースレターを手にする「アミカス嘱託職員ユニオン」の成瀬穫美さん
非正規職員の連携のため2月に創刊したニュースレターを手にする「アミカス嘱託職員ユニオン」の成瀬穫美さん
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 福岡市は4月から、これまで残業代の支給対象外としてきた非正規職員に対し、支払いを可能にする方針を固めた。就業要綱を見直し、正規職員の時間外勤務手当に相当する報酬を支給できるようにする。政府は民間の正社員と非正規労働者の不合理な格差を解消する「同一労働同一賃金」の実現を目指しており、この動きを自治体にも広げる方針。福岡市も勤務実態に見合った報酬を支払えるよう仕組みを整える。

 対象は、本庁などで事務や相談業務といった幅広い仕事に従事する特別職の非常勤職員で、全職員の2割に当たる約2700人。

 市との労使交渉を担った労働組合「アミカス嘱託職員ユニオン」(7人)によると、これまでは残業をした場合、別の日の勤務時間をその分短くして調整していたが「繁忙期は調整が難しくサービス残業が発生したこともあった」という。

 市労務課によると、2017年度の当初予算案に、各部局の人件費を計約1030万円上積みする形で残業代相当分を計上した。今後も原則、時間調整を優先させ、調整が難しい場合に限り報酬を支払う方針。残業は「1日2時間、月6時間以内が目安」という。

 残業代に関しては、総務省が14年、非常勤職員についても「報酬を支給すべきだ」と全国の地方自治体に通知を出していた。

 九州各県と県庁所在地、政令指定都市では、ほかに熊本県、熊本市が「基本的に時間外勤務はしない」などの理由から特別職に残業代を支払う仕組みがない。

 ●職員の連携、市民の理解が必要

 全国の財政難の自治体では非正規職員が増えており、正規と非正規の賃金格差を是正する「同一労働同一賃金」の推進は公務員の分野でも急務となっている。

 「非正規公務員の現在」などの著書がある地方自治総合研究所(東京)の研究員、上林(かんばやし)陽治さん(56)は「何とか人件費を抑えたいのが自治体の本音。特別職の非常勤には残業はさせないのが原則と言いながら、実際には支払うべき残業代を支給していない例はまだまだ多いだろう」と話す。

 待機児童や生活保護受給者の増加など、自治体の業務は量も増え、複雑になっている。上林さんは「非正規職員がその負担増を引き受け、安い人件費で便利に使われている」と指摘する。非正規職員の平均年収は200万円で正規の3分の1以下という試算もある。

 総務省は地方自治体の非正規職員の待遇を改善するため、今国会に関連法改正案を提出する方針。これまで対象外だったボーナスも支給できるようにする。ただ具体的な支給基準は自治体が判断する部分があり、実際の処遇改善には時間がかかる可能性がある。

 「アミカス嘱託職員ユニオン」の執行委員長、成瀬穫美(えみ)さん(47)は、今回の労使交渉であらためて、普段別々の職場で話をする機会もない非正規職員同士の連携の難しさを痛感したという。「交渉を続けながら、私たちは一体誰と闘っているんだろうってふと思うことがありました」。財政難の自治体は簡単には待遇改善を決断できない。不合理な格差を正すには、納税者である市民の理解も欠かせない。

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 【ワードBOX】地方自治体の非正規職員

 全国の自治体の非正規職員は2016年4月時点で64万5千人で、12年より7・6%増。内訳は一般職の非常勤16万8千人、特別職の非常勤21万7千人、正規職員の育休中などに簡易な手続きで採用できる臨時職員が26万人。約4分の3が女性だ。特別職は本来、医師など学識経験者の採用が想定されているが、地方公務員法に一般職の採用方法などが明記されていないこともあり、特別職が一般的な仕事を任されている例が多い。育児休業を取得できない場合もある。

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