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崩れる「35歳限界説」 【第18部】転職という選択<1>

職歴を記した年表を見ながら「転職を通して成長できた」と話す久保山奈穂さん
職歴を記した年表を見ながら「転職を通して成長できた」と話す久保山奈穂さん
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 決断は、47歳だった。福岡県の中島裕介さん(52)=仮名=は5年前、新卒から25年ほど勤めた流通業の会社を辞め、メーカーに転職した。当時は業界そのものが不振にあえぎ、社内では早期退職の募集も始まった。先が見えなくなっていた。

 「あなたの年齢とキャリアじゃ難しいよ。今のところで勤めなさい」。苦い顔で言い放つ人がいた。どこかで聞いた言葉が浮かぶ。35歳限界説-。この歳をすぎると転職先の選択肢が一気に狭まるという年齢の壁。新卒一括採用、終身雇用、年功序列。伝統的な雇用慣行では、伸びしろのある若い人材を社内で一から教え込むのが常識だった。

 中島さんの強みは交渉力と「経理以外は一通りやった」という経験値。長く貿易部門に携わり、多いときは年間の3分の1を海外で、売れる洋服やワインを求めて奔走した。

 転職活動1社目は社員数がさほど多くない地元メーカー。面接は年の瀬の最終営業日だった。それが「拍子抜けするぐらい、あっさり」採用が決まる。部下6人ほどを抱える営業部門のポストを任された。「職場に必要とされ評価される。ここが新たな居場所だなって思いました」

 「生き生きしてるね」。かつての同僚から声を掛けられる。

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 転職の「常識」が変わりつつある。総務省によると転職者のうち35歳以上の割合は2009年に初めて半数を超え、16年には55・2%と、統計をさかのぼれる02年以降最多を記録した。

 背景には深刻な人手不足がある。少子高齢化により15~64歳の生産年齢人口は、ここ5年で480万人も減っている。有効求人倍率はバブル期を超える高水準。優秀な人材を若手だけに求めていては、企業は採用機会を失いかねない。人口規模が大きい団塊ジュニア世代も40代となり「今や年齢の壁はなくなってきています」と、人材サービス「パーソルキャリア」九州オフィスゼネラルマネジャーの松崎大輔さん(36)は言う。

 人口減で国内市場が縮み、企業は成長が見込める新たな分野に活路を見いだそうとしている。本業からかけ離れた新規事業の立ち上げでは、自前の社員に配転を強いるより、転職者の活用が合理的、という事情もある。専門性やスキルがあれば「過去の転職回数は問わない」という企業も増えてきた。

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 福岡県筑紫野市の久保山奈穂さん(38)は昨年、学童保育を手掛ける今の会社に転職した。

 夫婦共働きが専業主婦世帯の2倍近い時代。働く親に代わり放課後に子どもを預かる学童保育には、鉄道や流通、教育関連などから異業種参入が続く。

 久保山さんの会社も本業はIT関連。前職でも学童保育に携わった久保山さんは、新規事業を軌道に乗せるため、管理職として招き入れられた。

 アパレルメーカーや百貨店、家具会社でも働き、転職は4回目。その間結婚、出産、離婚も経験した。日々の保護者対応には「百貨店の接客スキルだけでなく、プライベートな育児の経験も役立つ」と笑顔を見せる。

 久保山さんは、かつての自分の名刺を画像にして、スマートフォンに保存して持ち歩いている。「これは私が経験を積んできた証し、なんですよね」

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 転職市場が活況を呈している。08年のリーマン・ショック以降、下降気味だった転職者数は16年調査で、7年ぶりに300万人を突破した。昨今の転職事情を追った。


=2017/09/12付 西日本新聞朝刊=

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