伸びる「第二新卒」市場 【第18部】転職という選択<3>

9月初旬に北九州市で開かれた合同会社説明会には「第二新卒」を含む多くの求職者が訪れた
9月初旬に北九州市で開かれた合同会社説明会には「第二新卒」を含む多くの求職者が訪れた
写真を見る
写真を見る

 終身雇用に年功序列…。日本では、そうした雇用慣行が長く続き、諸外国に比べ1社に勤め続ける人が多いという印象がある。実際に日本は雇用の流動性が低い国なのだろうか。

 「決して低くはない」と言うのは日本総研主席研究員の山田久さん。各国の平均勤続年数を比較すると、日本は10・4年(一般労働者と短時間労働者の平均)。ドイツは11・7年、フランス12・3年、イタリア13・4年、英国9・5年、米国4・6年(2013年、米国のみ12年値)。日本は男女別で見ると女性の勤続年数が短いという特徴があるが、男性単独で見てもフランスと同水準。雇用の流動性は欧州とさして変わらず、米国だけが飛び抜けて高い、と言える。

 厚生労働省の16年の調査でも、平均勤続年数(一般労働者)は11・9年で、90年以降目立った変化はない。転職せず定年まで勤め上げる人は多くはないのだ。

 ではなぜ流動性が低いという印象が根強いのか。山田さんは「最大の理由は社会的に影響力がある多くの大企業が終身雇用など日本独特の雇用システムだったから」と指摘する。大手メディアもそうした企業を取り上げることが多かった。

    □   □

 転職する人の割合は若い世代ほど高い傾向にある。「3年3割」。大卒で就職後3年以内に仕事を辞めた人の割合は、95年3月の卒業者以降ほぼ一貫して3割を上回っている。そして今の転職市場では、新卒採用が予定通り進まない企業を中心に、彼ら「第二新卒」が注目を浴びている。

 日本人材紹介事業協会によると16年度下期、人材紹介大手の仲介で転職した25歳以下の人は前年度下期比で20%増。人材サービス、エン・ジャパンの転職サイトで「第二新卒歓迎」の求人は3年前には全体の半数程度だったが、今は7割ほどを占めている。

 宮崎光一さん(26)=仮名=は新卒で入った地銀を3月に辞め、市町村職員になった。公務員を選んだ理由はいたってシンプル。「人の役に立つ仕事がしたいと思ったんです」

 行員時代は、個人客相手に保険や投資信託の販売を手掛けた。担当は高齢者が多いエリア。「公民館まで送って」「車のワイパーが止められん」。孫のようにかわいがられ、日常の用事を頼まれた。感謝されると「ノルマ達成よりうれしかった」。何かを売るより、人を支える仕事を、と離職を決意した。

    □   □

 「第二新卒」市場の活況は「やりたいこと」を探す若い世代にとっては好機といえる。

 転職サービス「DODA(デューダ)」による転職理由の調査(16年10月~17年3月)によると、30代、40代では「会社の将来性が不安」がトップなのに対し、20代は「他にやりたい仕事がある」が最も多い。

 ただ若者ほど、実は一つの職場に長く勤めることを望んでいるというデータがある。労働政策研究・研修機構の調査(15年)では、1社でキャリアを積み上げるのが望ましいと考えるのは20代で54・8%。他の年代より高く、07年の40・3%から急激に伸びた。背景には、元来流動性が高く条件面で劣る非正規雇用の増加もある。調査部次長の郡司正人さんは「今の経済状況や将来の社会保障に不安を抱く若者が増えているのではないか」とみる。

 宮崎さんが公務員を選んだ理由の一つもそうだった。「安定して、長く勤められること。バリバリ仕事ができるんだったらベンチャー企業とかで活躍してみたいけど、僕はそういうタイプじゃないって分かってるんです」


=2017/09/14付 西日本新聞朝刊=

西日本新聞のイチオシ [PR]

西日本新聞のイチオシ [PR]