西日本新聞電子版 1周年記念プレゼント

失敗して、しんどかったら辞めればいい【第19部】 提言 これからのハタラク<1>北川 恵海さん

写真を見る

 ●『ちょっと今から仕事やめてくる』著者 北川恵海さん

 《2015年2月に発刊した「ちょっと今から仕事やめてくる」は、長時間労働やパワハラ、自殺などのテーマを扱った小説。デビュー作にして70万部超の大ヒットとなり、今夏には福士蒼汰さん、工藤阿須加さんの主演で映画化された》

 執筆するきっかけになったのは、私自身が働く中で感じてきた「違和感」です。ワーキングホリデーの制度を利用してカナダやオーストラリアなどで働いたんですが、日本で会社勤めに戻ると「こんなに窮屈だったっけ」と大きなギャップを感じて。

 海外では、プライベートな時間を大事にしながら働くのが当たり前なのに、日本では有給休暇を取るのさえも後ろめたい。そんなモヤモヤした気持ちやしんどさを、書くことで発散したかったのかもしれません。

 《主人公の隆はブラック企業に勤め、上司のパワハラや過重労働に身も心も疲れ果てた新入社員。無意識に線路へ飛び込もうとしたところをヤマモトと名乗る謎の男に助けられ、交流を通じ本来の明るさを取り戻していく。ところが、ヤマモトの名で検索して出てきたのは、3年前に激務で自殺した男のニュースだった-》

 昨年、電通の違法残業事件で過重労働が社会問題となりましたが、ニュースにならないだけで、以前からずっと問題はありました。ただ、ここ数年でインターネットのSNS(会員制交流サイト)が広く普及し、自分の置かれている環境を客観的に見られる機会が増えました。他人がどう働いているかを知ることができるので、比較することで、働きやすい環境につながるかもしれないし、頑張っている人はよりつらく感じるかもしれない。どっちに転ぶかは分からないけれど、少なくとも選択肢は増えたのではないでしょうか。

 《作中では、「人生は誰のためにあると思う?」「残された者の気持ち考えたことあるか?」「会社辞めることと、死ぬことは、どっちのほうが簡単なわけ?」など、ヤマモトが隆に語りかける言葉が印象的だ》

 とにかく、「死なないで」と伝えたかった。手を替え品を替え、それしか言ってないくらい。死ぬくらいだったら他の道があるよと、読んだ方の心に少しでも引っかかってくれたらいいなと、願っています。

 働くって大きく分けて2通りあると思います。働くことをメインに生きていく人と、生きていくために働く人。その仕事が生きがいっていうのはすてきなことだし、出会えたのはラッキーなことです。じゃあ、仕事のために生きなきゃいけないかというと全然そんなことはない。生きていく上の選択肢の一つに仕事があるという位置付けで、頑張り過ぎなくていいんじゃないかなと思います。

 隆たちのような若い世代に伝えたいのは、若さは大きな武器だということ。自由に好きなことをやれる時期だから、いっぱい失敗して、しんどかったら辞めればいい。今、社会の中にも、働き方を見直そうという動きが出てきました。主役は若い世代。変えるという行動には、ちょっとした勇気やパワーが必要なので、失敗してもいいから突き進んでほしいです。

 ▼きたがわ・えみ 本作で第21回電撃小説大賞メディアワークス文庫賞を受賞。他に「ヒーローズ(株)!!!」など。大阪府吹田市出身。36歳。

   ◇    ◇

 2015年1月にスタートした「生きる 働く」。シリーズを締めくくるにあたり、第19部は各界で働くことを見つめてきた人たちに、私たちが幸せに生きるための「働く」について、提言を聞いた。


=2017/09/26付 西日本新聞朝刊=

→電子版1周年記念!1万円分賞品券やQUOカードが当たる!!

西日本新聞のイチオシ [PR]

西日本新聞のイチオシ [PR]