西日本新聞電子版 1周年記念プレゼント

上限定めても、残業なしが原則【第19部】 提言 これからのハタラク<2>遠藤 雄二さん

写真を見る

 ●九州大大学院経済学研究院准教授 遠藤 雄二さん

 働き方改革の要は長時間労働をなくすことです。そのために「生産性を上げる」という言葉をよく聞きますが、生産性を1日当たりの仕事量で考えている経営者が多くいます。残業すれば達成した仕事量が増えるのは当然で、本来、生産性は1時間当たりの成果で見るべきです。そうすれば、だらだらと残業すると、残業代というコストがかかる一方、効率は下がるということが見えてきます。人はそんなに長時間の仕事に集中できません。

 《政府は「働き方改革」を進めているが、残業の上限時間を初めて明記した労働基準法改正案は、衆院解散が決まり臨時国会提出が見送られた。同案では、残業時間の上限を原則「月45時間、年360時間」とし、繁忙時の例外として最長で「月100時間未満、年720時間」とする。月100時間は、過労死すれば労災認定される水準で、批判も上がる》

 例外があると、上限の意味がありません。競合他社が月100時間残業をしていれば、「うちも」と思ってしまう経営者もいるでしょう。そもそも、業務は所定労働時間内に終わらせるべきです。法律で上限時間を明記することが、「残業をするのが当たり前」というメッセージになってはいけません。

 過労死の報道などを受け、多くの企業で長時間労働はよくないという認識は広がっています。ただ、具体的に取り組んでいる企業は限られます。特に、人員が限られた中小企業では難しい。中小企業の長時間労働を是正するには、大企業と対等な関係になることが一番大事です。

 《支払い遅延や不当な減額、返品…。公正取引委員会が2016年度に下請法違反で指導した件数は6302件に上り、7年連続で過去最多を更新。一方、経団連は今月、各経済団体と連名で、下請けいじめにつながる商慣行の是正に取り組む宣言を発表するなど、改善に向けた動きもある》

 下請けの立場上、「契約を打ち切られたら困る」と過度な短期納入の要求などにも何とか対応しようと取り組んでしまい、残業につながっています。下請け企業への無理なしわ寄せは仕事の質の低下を招き、結果的に親事業者や顧客の不利益につながります。公正取引委員会はさらに監視の目を光らせるべきです。

 《ワークライフバランスの実現に欠かせない年次有給休暇の取得率(厚生労働省16年調査)は女性54・1%に対し、男性は45・8%。2020年の全体の目標70%には遠く及ばない》

 経営者と労働者が両輪となって取り組まなければなりません。経営者は有休の取得を呼び掛け、子育てや介護と両立するための制度を整えるのは当たり前で、特に取得しづらい男性が利用しやすい雰囲気づくりに力を入れましょう。

 労働者が業務効率化を図り、自ら働き方改革を進めることも必要です。岐阜県のある企業では報告・連絡・相談は時間と労力がもったいないと禁止にして、社員一人一人が考えることを大事にしています。社内向けの書類作成に掛ける手間を見直したり、無駄な会議をやめ、立ったまま10分間意見を交わしたりすることも効果的です。

 社会人として入社間もない卒業生と話すと「長時間労働は仕方ない」と諦めている人が多くて驚きます。そう感じさせる会社が問題なのはもちろんですが、若手社員も自分の働き方について主体的に考え、声を上げましょう。働き方を考えることは、どう生きるか見つめ直すことです。

 ▼えんどう・ゆうじ 専門は職場における男女平等やワークライフバランス、働き方改革など。日本労務学会常任理事など歴任。64歳。


=2017/09/27付 西日本新聞朝刊=

→電子版1周年記念!1万円分賞品券やQUOカードが当たる!!

西日本新聞のイチオシ [PR]

西日本新聞のイチオシ [PR]