障害者の「生きがい」 息長い支援を【第19部】 提言 これからのハタラク<6> 津留 清美さん

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 ●NPO法人「福ねこ舎」理事長 津留 清美さん

 熊本市中央区出水で、障害のある人の就労継続支援A型事業所として、ギョーザやお菓子の製造・販売、レストラン「みなみのかぜ」の運営をしています。訓練をして一般企業で働けるような人材を育成する場ではありますが、毎月コンサートや絵画などの展示会を開くなどして、地元の人などに足を運んでいただいています。

 障害は外からは分かりにくく、目に見えないものもあります。地域のさまざまな人が集まる場所をつくることで、障害のある人に対する偏見や差別がなく、理解を深められる「居場所」をつくりたい、という思いが活動を始めたきっかけです。しかし最近は国から収益重視を求められ、黒字でなければ施設の存続も認められないことがあるなど、大変苦労しています。

 《就労継続支援A型事業所は障害者と雇用契約を結び、最低賃金以上を支払った上で職業訓練をする。運営者には国から障害福祉サービスの給付金や助成金が支払われる。近年、そうした補助金目当てとみられる不正な事業所運営が相次いだため、厚生労働省は4月の省令改正で、給付金から障害者の賃金を支払うことを原則禁じ、事業を健全化して収益で賄うよう促した》

 実際、うちも給付金が無いと苦しい状況です。経営改善を図っていますが売り上げがすぐに3~4倍に伸びるわけではありません。そもそも今の社会はすべてお金に換算する価値観の中で動いていることに、疑問を覚えます。

 私たちは利用者ができることを増やそうと日々、就労への基本的な訓練に重点を置き、試行錯誤しています。体調管理、衛生管理、掃除や礼儀など社会人として必要なこと、包丁の使い方、肉のこね方など職業上の技術習得…。毎日触れ合う中でお互いの障害への理解も深め、役割分担や助け合い、その中で働く喜びを感じてもらっています。

 働いた結果が給料につながるなどお金の問題は大事ですが、まず働きながら自身の障害と向き合い、うまく付き合いながら働き続けられる自分を育てることに意味があると思うのです。

 利用者の一般就労に向けて企業に働き掛けもしますが、長続きする人ばかりではありません。仕事を覚えても、体調を崩していったん休むと最初から訓練が必要になったり、接客で見つめ返されるのが怖くてお客さんの目を見つめられなかったり、障害の特性はさまざまだからです。

 もちろん利用者が一般就労に移行して6カ月以上続ければ報酬単価が加算される制度があり、事業所としては助かります。障害者を雇う企業にも国から各種助成金があるため、企業に「こういう経済的な利点がある」と話もします。

 ただ国から餌を突きつけられてやっているようで、それが本当に障害のある人に寄り添った支援であるのか、長期的な視点に立った選択であるのか、やはり葛藤があります。

 《障害者雇用促進法は障害者の雇用を企業に義務付ける。法定雇用率は従業員50人以上の民間企業は2・0%。来年4月から対象企業も広がり2・2%に引き上げられる》

 健常者の就職も決して易しい時代ではありませんが、障害のある人の就職口は、まだまだ狭き門です。障害を明らかにして面接に向かう人もいれば、オープンにしない人もいます。障害者の抱える問題を見る思いがします。障害者が長く働くためには社会の、また一人一人への配慮が必要です。生きがいとは、働く意味とは何か。その理解が進まない限り、就労面での本質的な解決にはつながらないでしょう。

 障害者の地域での暮らしを支える生活拠点として、多様性を認め合う価値観を育てる場として、就労支援施設の役割と機能を社会全体で共有できればと願います。

 ▼つる・きよみ ホスピス勤務や大学の非常勤講師を経て2010年から障害者の就労支援にかかわり16年11月から現職。詩人、エッセイストでもある。64歳。


=2017/10/03付 西日本新聞朝刊=

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