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隣にいるLGBT、配慮してますか【第19部】 提言 これからのハタラク<7> 松中 権さん

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 ●認定NPO法人グッド・エイジング・エールズ代表 松中 権さん

 LGBT(性的少数者)は、テレビ画面の向こうにいる存在でも、新宿2丁目にしかいない存在でもありません。2015年の調査では国内人口の7・6%、13人に1人の割合です。公にしていない人が大半なので目に見えないだけで、実は隣にいるのです。

 それなのに、多くの人が「うちの職場にはいないから」と無神経な言動をしてしまう。同僚との信頼関係をうまく築けず、本来の能力を十分に発揮できないという当事者は少なくありません。そもそも就職自体を諦めている人もいます。

 《NPO法人虹色ダイバーシティと国際基督教大ジェンダー研究センターが昨年実施した調査では、当事者1550人のうち、職場で差別的言動を頻繁に見聞きしたという当事者は58%に上っている。また、求職時にセクシュアリティー(性のあり方)などに関して困難を感じたという当事者は、心と体の性が一致しないトランスジェンダーで70%、同性愛者や両性愛者で44%だった》

 僕の場合、入社して2週間後に「ゴンはゲイらしい」というメールが同期の間で出回りました。それから、会社では絶対に公にしないと心に決めて、飲み会は断り、私生活のことは話しませんでした。周囲からは「つれないやつだ」と言われたし、疎外感を抱くことも多かった。

 公にしたきっかけは2010年、セクシュアリティーを超えて全ての人が自分らしく年を重ねていける社会づくりを目指して、NPO法人グッド・エイジング・エールズを設立したこと。その後の働きやすさは全然違いました。うそをつかなくていいのは本当に楽。仕事のパフォーマンスも上がった実感があります。

 NPOでは日本IBMなどと協力して、LGBTが働きやすい職場づくりを企業と共に目指す「work with Pride」という活動を、12年から行っています。当初、LGBT施策に取り組む企業は外資系の一部に限られていましたが、この2年で状況は大きく変わりました。

 《同性カップルを公的に認めて証明書を発行する「パートナーシップ制度」を東京都渋谷区が15年11月に始めたのをきっかけに、企業のLGBTへの対応は急速に進んだ。社内セミナーを実施したり、同性パートナーを配偶者と同様に扱い、慶弔休暇や育児・介護の制度などの福利厚生制度を適用したりする企業も増えている。

 ただ、経団連が3月に会員企業に行ったアンケートでは、233社のうち9割がLGBTへの取り組みが必要と回答する一方で、実施している企業は42%にとどまった。経団連は5月、LGBTへの対応を急ぐよう企業側に提言した》

 取り組みは東京の大企業が中心で、中小企業、特に地方ではほとんど進んでいません。LGBTが働きやすい環境を整えることは、企業にとっても大きなメリットがあります。一人一人が能力を発揮できるようになれば、生産性が向上し、人材採用や離職防止という点でもプラスに働きます。

 会社の中では、さまざまな人が、さまざまな事情を抱えて働いています。LGBTが抱える悩みや苦しみ、課題に目に向けること。それは、誰もが持っているかもしれないけれど今は見えていない「マイノリティー性」に対し、意識を働かせて配慮するきっかけになります。

 誰もが想像力を持って、互いに尊敬しあい、特性を生かしあえる職場づくり。LGBTへの取り組みを進めることは、多様な人材が存在する状態の「ダイバーシティ」の一歩先、それらの状態が一体化され能力が発揮される「インクルージョン」の一つの旗印になると思っています。

 ▼まつなか・ごん 一橋大学を卒業後、今年6月まで大手広告会社・電通に16年間勤務。LGBTの差別を禁止する法律の制定を求める活動にも取り組む。金沢市出身。41歳。


=2017/10/04付 西日本新聞朝刊=

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