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稼がない仕事も評価を【第19部】 提言 これからのハタラク<8完> 日高 邦博さん

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 ●主夫 日高邦博さん

 企業の花形部門といえば営業でしょう。人事や経理なども無くてはならないのに、「お金を稼ぐ」営業が一番偉いような顔をしている。家庭も同じで、主婦がする家事や子育てって評価されない仕事だなと思います。妻だから、親だから、やって当たり前で対価もない。まるで「非生産者」。一方で夫の多くは「お金を稼いでいる自分の方が偉い」と考えている。DV(ドメスティックバイオレンス)やモラルハラスメントの根っこも、そんなところにあるのではないでしょうか。

 僕は会社員として14年間働き、長女(21)の誕生と同時に主夫になりました。妻の逸子(55)はボートレーサー。男女合わせて約1600人いる中でも、上位20%のA1級選手です。知名度や収入に格差があり過ぎて、自然に「僕が仕事を辞めるよ」と言いました。あれから21年がたち、仕事と家庭を両立する女性は増えましたが、男性はあまり変わっていないように見えます。

 《1990年代前半に、共働き世帯の数は専業主婦のいる世帯を逆転し、2016年は1・7倍となった(総務省調査)。だが実態は、働く女性の約47%が出産を機に退職し、家庭と両立するために非正規雇用で再就職する例が多い。同省16年調査によると、非正規は女性の約56%に上る》

 妻は各地のボートレース場を飛び回り、月に20~25日は家を空けます。レース期間中は電話やメールでも一切接触できません。福岡に親戚や知り合いのいない中で、娘が病気になれば、僕1人で責任を負います。会社の仕事なら僕が辞めても代わりはいるでしょう。でも主婦(夫)は辞められない。責任の種類が違うのです。だから「私は働いていない」なんて感じる必要はありません。

 そんな僕も、初めは社会とのつながりが無くなって不安や焦りがありました。長女が生まれ、1年くらいしてようやく吹っ切れた。ママ友や仲間ができ、自分の立ち位置が認められたからだと思います。

 働くことは、自己実現の手段の一つ。収入を得るのもそうですが、僕にとっては、家庭がうまく回って、子どもが笑顔でいることが報酬なんです。

 《フルタイムで働く女性の平均賃金は増えてきたが、男性の平均額の73%で格差は大きい(厚生労働省16年調査)。働く女性を増やそうと、政府は20年までに男性の育児休業取得率13%を目指す。だが16年度は3・16%。女性の7割は8~18カ月休業するが、男性の6割弱が5日未満と比較にならない》

 男性が子育てする環境は変わってきました。僕が主夫になったころは、育児講座や小児科病院で男性を見かけることはなかった。でも今は、商業施設や駅の男子トイレにも赤ちゃん用の椅子があります。それでも、子どもを預けて働くことに罪悪感を持つ女性はいても、男性はまずいない。出産と母乳を出すこと以外は男性もできるのに、大きな差があるのです。

 男性の育休取得率が低いのは、根強い性別役割分業意識、そして男女の賃金格差があるから。家計への打撃を考えれば当然です。男性に育休を取得させたら法人税を下げるなどの荒療治でもない限り、取得率の大幅アップは無理だと思います。

 《「働く」は、大和言葉で「傍(ハタ)」、つまり周りの人を「楽(ラク)」にする、という説もある。誰もが生き生きとハタラク社会に必要なことは-》

 僕は、専業主婦(夫)でも共働きでも、選択できることが大事だと思います。家事や子育ては「できる人が、できることを、相手のことを思って」やればいい。お金を稼ぐかどうかに関係なく、相手やその仕事を尊重できる社会にしたいですね。

 =おわり

 ▼ひだか・くにひろ 添乗員などを14年間勤め、主夫に。福岡県久留米市男女平等政策審議会委員。講演活動も。妻、次女(18)と福岡市で暮らす。55歳。


=2017/10/05付 西日本新聞朝刊=

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