ホークスファンタブレット

キャバレー編<116>オフ・ビート 最高齢のベーシスト

「ライブは楽しい」と語る川上
「ライブは楽しい」と語る川上
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「上海」時代の川上(ベース、20歳)
「上海」時代の川上(ベース、20歳)
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 福岡市東区の川上俊彦(72)は市内では現役のプロベーシストとしては最高齢である。「リバーサイド」「ニューコンボ」などでライブを打っている。

 「アドリブがうまくいったときは最高だし、うまくいかなくてもそれなりに面白い。ライブはいいよ」

 ベーシストとして54年。川上にアマチュアの時代はなかった。

 高校卒業後、目的もなくぶらぶらしているときに、仲間が言った。

 「クラブ『南国』がバンドの募集をしている。それに応募する。ベースがいないからそれをやれ。弾くまねをしているだけでいいから」

 オーディションのとき、初めてベースを手にして、適当に指を動かした。合格。バンドはステージに立つようになった。

 「酒がタダで飲める。女にもてる。その上、小遣いも稼げる。これだ、と思いました」

 川上はこう振り返った。バンドの中では「ぼうや」と呼ばれる素人であったが、なによりも若い心をとらえたのは音楽で自己表現できる楽しさだったに違いない。

 「不良から更生できたのは音楽のおかげです。必死に独学で練習しました。マイクがないので指に力を入れて弾かなくてはいけない。指の皮が破れ、化膿(かのう)する。別の指で弾くがまた皮が破れる。それを二、三回、繰り返すうちに、皮が破れないようなりました」

   ×    ×

 クラブの後はすぐにキャバレー「上海」に移った。記憶に残っていることがある。

 「トイレにボーイがいましてね。トイレから客が出てくると靴などを拭いてチップをもらっていました。バンドマンは払わなくてよかったんですが、最初はわからなくて払いました」

 「上海」ではラテンバンドに入っていた。時間があるときはジャズの店「リバーサイド」に客として顔を出していた。

 「そこで聴いたポール・チェンバースのベースに引かれ、ジャズをやり始めた。でもね、ラテンのリズムはオン・ビート、ジャズのリズムはオフ・ビート。この切り替えが難しかったです」

 ディキシーランドのジャズバンドに入り、ダンスホール「赤と黒」などでジャズの腕を磨き、さらに、進駐軍のキャンプでの演奏で鍛えられた。キャバレーなどが下火になり、クラブ「みつばち」で20年以上、ベースを弾いていた。約10年前、フリーになった。

 「ハコ(演奏する場所)が無くなって、さらに真剣に練習しました」

 主舞台はライブハウスのセッションだ。そこでは一回一回、質が問われる。

 「今日もライブがあります。どんな演奏になるか。楽しみです」

 こう言い残して、川上はライブハウスに急いだ。 =敬称略

 (田代俊一郎)

=2012/06/05付 西日本新聞夕刊=

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