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民謡編<330>ゴッタンの世界(13)

ゴッタンとの関係も指摘される薩摩琵琶
ゴッタンとの関係も指摘される薩摩琵琶
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 鹿児島の語り物の楽器としては、ゴッタンより歴史のある薩摩琵琶が全国的にも知られている。同じ弦楽器として、薩摩琵琶はゴッタンの成立、普及にどのような影響を持ったのだろうか。

 ゴッタン奏者の荒武タミが残した唯一のアルバム「ゴッタン-謎の楽器をたずねて」のライナーノートの中でも研究者が言及している。「三味線が渡来した時初めて演奏したのが琵琶法師だった」と記している。その上で「三弦の楽器を琵琶にやつして作りかえ、弾き習うのはたやすいことであっただろう。その薩摩の三弦がゴッタンだったろう」との推論を提示している。

 九州は全国的に琵琶演奏が盛んな地域だった。中でも伝統を誇るのが薩摩琵琶だ。その琵琶法師たちが三味線を手にして「琵琶にやつして作りかえ」た部分の一つは皮張りを外したことだ。三味線の変形であるゴッタンが皮ではなく板張りになったのは「安価」という点が強調されるが、琵琶に似せて板にした-とも考えられるのだ。また、琵琶による語り物文化が薩摩で根付いていたこともゴッタン芸の普及を受け入れる土壌になったということもできる。

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 ゴッタンが板張りになっていることに宗教性を見いだしたのは宮崎県都城市のゴッタン製作者の黒木俊美だ。黒木はゴッタンが動物の皮ではなく板張りであることは「生き物を殺生せず」という仏教の教えに合っているとの見方を示している。黒木の主張はゴッタンと薩摩の隠れ念仏との関係を大きな背景にしている。

 薩摩藩は約300年間、一向宗(浄土真宗)の信仰を禁制とした。黒木は次のように記している。

 「厳しい弾圧と拷問の日々が続く中、民衆の知恵は念仏を唱える唄(うた)の伴奏楽器として都城地方では『ごったん』が広まり、明るい場所で念仏を唱えるようになった」

 隠れ念仏に詳しい鹿児島県出水市の詩人、岡田哲也はこう話す。

 「隠れて念仏を唱えるときに、ゴッタンを伴奏にしたことは聞いたことがありません」

 黒木は「念仏を唱える唄」-ゴッタン念仏唄として「荷方ぶし」などを挙げている。「荷方ぶし」は仏教色が色濃くでた語り物である。荒武タミの十八番の一つで、それを聴いた聴衆は「なむあみだぶつ」と唱えたという。

 黒木が言いたいことは、権力によって地下に封じ込められた信者は地上ではゴッタンの「荷方ぶし」などを念仏唄として信仰心の支えの一つにした、ということではないか。ゴッタンの世界には様々(さまざま)な歴史が流れ込んでいる。 =敬称略

 (田代俊一郎)


=2017/04/17付 西日本新聞夕刊=

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