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民謡編<338>ゴッタンの世界(21)

ゴッタンを演奏するサカキマンゴー(今年5月、福岡市内で)
ゴッタンを演奏するサカキマンゴー(今年5月、福岡市内で)
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 〈そいじゃ一つとのよのえ 一つ始まる比曽木野に 五つのおタミの目が見えず ぐらしかいな〉

 鹿児島県姶良市のミュージシャン、サカキマンゴー(42)は先月、福岡市中央区のカフェ・レストランでのライブでゴッタンを弾きながら歌い始めた。曲は荒武タミに捧(ささ)げる「おタミくどき」。タミの十八番だった「お夏くどき」が下敷きにしていた。

 〈一つとよのえ一つはじまる新町(鹿児島県霧島市の町名)に七つになる子が親孝行 めずらしいかいな〉

 「お夏くどき」はお夏という孝行娘を題材にした十までの数え歌だ。数え歌は江戸末期に大流行した。サカキは言う。

 「『お夏くどき』を練習しているときに、お夏とタミさんの人生が重なって見えたことから『おタミくどき』を思いついた」

 タミが「『お夏くどき』はまるで自分の人生のようだ」と実際に弟子に語っていたことも頭の中にあった。「おタミくどき」は「お夏くどき」と節回しは同じだが、歌詞はサカキのオリジナルだ。

 〈そいじゃ三つとのよのえ 見えんで先々苦労する 母に言われて歌覚ゆ ありがてかいな〉

 サカキの歌も十まであり、歌によるタミの一代記になっている。

   ×    ×

 サカキは大阪外国語大学(現・大阪大学)でスワヒリ語を専攻し、在学中、アフリカを旅する中で親指ピアノに出合った。親指ピアノは板や箱の上に並んだ鉄や竹の棒を親指ではじいて演奏する民族楽器だ。大学卒業後は親指ピアノ奏者として活動した。

 ゴッタンを知ったのもタミが死去後の大学時代だ。ゴッタン制作者の平原利秋(同県曽於市)の紹介記事を雑誌で見て注文した。しかし、我流で弾きこなすのは難しく、20年間、放置していた。5年ほど前、ゴッタン奏者と出会い、本格的に練習を始めた。サカキは現在、ゴッタンをアンプにつないだ電気楽器に改良してステージに立っている。

 「伝統は博物館の中のガラスケースに納めるのではなく、時代によって進化させなくてはいけない」

 「おタミくどき」はタミの名を知らしめた国立劇場での演奏風景で締めている。

 〈そいじゃ十つとのよのえ 東京都内の大舞台 板三味線で大喝采 ご褒美(ほうび)かいな〉

 サカキにとってゴッタンは身近な郷土の楽器であり、そして世界の民族楽器の一つである。 =敬称略

 (田代俊一郎)


=2017/06/12付 西日本新聞夕刊=

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