民謡編<340>ゴッタンの世界(23)

若きゴッタン奏者のテラバル仁太
若きゴッタン奏者のテラバル仁太
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 南九州の民俗楽器、ゴッタンを継承する若い世代の一人が鹿児島県姶良市のテラバル仁太(35)だ。2年前に「南部式」というバンドを立ち上げ、南九州を拠点に福岡など域外でもライブ活動をしている。

 「南部式」は和太鼓2人に仁太がボーカルとゴッタンを担当する3人グループだ。自分たちのスタイルを「新民謡」と名付けている。

 宮崎県日向市生まれの仁太が現在のバンド活動にたどり着いた出発点はブラックミュージックである。仁太は18歳から30歳まで福岡市中央区の親不孝通りの店でヒップホップのDJをしていた。ヒップホップをはじめ、ブルース、ソウル、R&B、ジャズなどが好きだった。

 30歳のころ、自問するようになった。

 「米のルーツミュージックのように、日本にもルーツミュージックがあるのではないか」

 音楽だけでなく、自らの根である南九州の風土への回帰でもあった。福岡を離れ、兄のいる鹿児島へ。そこで出会った夫人の故郷である姶良市の山村、旧山田村に居を移した。

   ×    ×

 三線などを弾く中である日、三線関係をネットで検索していると、ゴッタン奏者の「荒武タミ」がヒットした。その音源を聴いて「これは日本のブルースだ」と思った。ゴッタンとタミとの出合いである。ただ、伝統的な民謡などには違和を感じた。「新民謡」と唱(うた)っているのには意味がある。

 「ブラックミュージックはブルースを元にジャズやソウルなどを生んだ。古い型通りではなく、新しいものを生み出さなくてはいけない」

 今までの民謡の歌詞を替え歌にしたり、オリジナル民謡も作っている。ヒップホップにも通じる話術で品物を売る大道芸「啖呵売(たんかばい)」なども取り入れている。

 〈時は平成のケツの方。心真っ平らになるワケねーだろう〉

 仁太はゴッタンの魅力について「垢(あか)抜けないかっこよさがある」と言いながら次のように語る。

 「こう弾く、ああ弾くといった敷居の高いきちんとした規律がない。どう弾いてもだれも文句は言わない。タミさんがその代表的なスタイルでしょう」

 仁太は現在、JA跡地の建物を借りて雑貨屋「山田村文化センター」を開いている。そこで月1回、「芋蔓(いもづる)寄席」を開催している。自らの演奏だけではなく、民謡や民話など庶民文化の発信の場としている。 =敬称略

 (田代俊一郎)


=2017/06/26付 西日本新聞夕刊=

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