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おもちゃ病院 思い出の品をいつまでも ドクターがボランティアで修理

修理をする大村おもちゃ病院のドクターたち
修理をする大村おもちゃ病院のドクターたち
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ドクター同士で協力しておもちゃを直す
ドクター同士で協力しておもちゃを直す
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小村峻司さん(右)の指導(しどう)を受けて、修理を手伝うこども記者たち
小村峻司さん(右)の指導(しどう)を受けて、修理を手伝うこども記者たち
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川瀬記者のおもちゃ 修理する前
川瀬記者のおもちゃ 修理する前
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修理後
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 みんなは体調を崩(くず)したとき、病院でお医者さんに診察(しんさつ)してもらうよね。同じように、おもちゃが壊(こわ)れたとき、それを修理(しゅうり)してくれるところが全国各地にある。その名もずばり「おもちゃ病院」。こども記者3人が、長崎(ながさき)県大村(おおむら)市に月2回ほど開設(かいせつ)されている「大村おもちゃ病院」を取材した。

 大村おもちゃ病院は、市の子育て支援施設(しえんしせつ)「こどもセンター」の一室にあった。病院と聞くと、しんとしていて、薬のにおいがして、少しだけ怖(こわ)い印象がある。でも、ここは扉(とびら)の向こうからおもちゃの楽器やモーターのにぎやかな音がして「緊張(きんちょう)が一瞬(いっしゅん)でなくなった」(川瀬(かわせ)記者)。

【紙面PDF】おもちゃ病院 思い出の品をいつまでも

 ▼得意分野生かし

 おもちゃを修理する人は「ドクター」と呼(よ)ばれる。この日は30~70代の男女10人が参加して、当日持(も)ち込(こ)まれたおもちゃや、何日間か預(あず)かっているものを、ドクターがそれぞれの席で直していた。

 病院の増崎文洋(ますざきふみひろ)副会長によると、ドクターの多くは、会社を定年退職(たいしょく)した後にドクター養成講座(こうざ)を受けたり、自分で修理の仕方を勉強したりして参加しているという。電気や木工など自分の得意分野を生かして、全員がボランティアで活動しているそうだ。

 ▼「完治」90%以上

 ドクター歴3年の山下太一(やましたたいち)さん(68)は、無線操縦(そうじゅう)するヘリコプターのおもちゃを分解(ぶんかい)していた。会社を退職し、「子どもの頃(ころ)に大好きだった機械いじりをもう一度始めた」という。

 いろんな工具がぎっしり入った箱から次々と道具を取り出して、真剣(しんけん)な表情(ひょうじょう)で作業していた。その様子は、お医者さんが手術(しゅじゅつ)をしているみたいで「良くなれよという思いが伝わってきた」(中村(なかむら)記者)。

 修理の途中(とちゅう)、スマートフォンでおもちゃの写真を何枚(なんまい)も撮(と)っていた。理由を聞くと、後で組み立てるときに間違(まちが)えないようにするためだそうだ。

 修理の仕方に迷(まよ)ったときは、他のドクターに相談したり、工具を貸(か)してもらったりする。ドクターが同じ場所に集まって作業することで、持ち込まれたおもちゃの90%以上を修理できるというから驚(おどろ)きだ。

 ▼本当の役割は…

 近くに住む吉田聖子(よしだしょうこ)さん(28)が、修理を終えたおもちゃを受け取りにきた。磁石(じしゃく)のペンで絵を描(えが)く、2歳(さい)の娘(むすめ)お気に入りのおもちゃという。描いた絵が消えなくなっていたけれど、ちゃんと直っていた。吉田さんは「おばあちゃんが孫のために一生懸命(いっしょうけんめい)選んで買ってくれたもの。その思いを大切にしたかった」とうれしそうに話した。

 その表情を見て、小村(こむら)記者は「おもちゃ病院は、単におもちゃを直すだけじゃない」と感じた。その時、ドクターの山下さんがこんな話をしてくれた。「おもちゃを直すことは、大切な思い出を壊さないことでもあるんだよ」-。それこそが、おもちゃ病院の本当の役割(やくわり)だと思った。

 ●修理に挑戦 「達成感生まれた」

 小村(こむら)記者の祖父(そふ)、小村峻司(たかし)さん(74)=長崎(ながさき)県諫早(いさはや)市=は、諫早のおもちゃ病院のドクターだ。隣(となり)の大村(おおむら)市へ“出張診療(しゅっちょうしんりょう)”に来た峻司さんの手ほどきを受けて、こども記者3人がおもちゃの修理(しゅうり)に挑戦(ちょうせん)した。

 川瀬(かわせ)記者が昔遊んでいた木製(もくせい)のリスのおもちゃを直すことにした。二つの車輪とリスの手がつながっていて、車輪が回ると手も動く仕組みだが、車輪をつなぐ軸(じく)が折れ、車輪と手を固定する留(と)め具(ぐ)もなくなっていた。

 川瀬、中村(なかむら)両記者は車軸作りを担当(たんとう)した。車軸とほぼ同じ太さの棒(ぼう)をのこぎりで切っていく。机(つくえ)の上に棒を置いてのこぎりを動かすと、棒がころころと転がってしまい、思っていたよりも難(むずか)しかった。

 小村記者は留め具を作った。2人と同じようにのこぎりを使いこなすのに苦労して、手が痛(いた)くなった。修理を始めて30分、3人が作った部品を使って、峻司さんがおもちゃを組み立てると、きちんと動くようになった。

 小村記者は、いつも「楽しかったー」と言って帰ってくる祖父の姿(すがた)を見て、何がそんなに面白(おもしろ)いのだろうと不思議に感じていたけれど、修理を手伝ってみて「達成感が生まれた」と話した。そして、何でも壊(こわ)れたらすぐに捨(す)ててしまうのはやめようと決意した。

 ●わキャッタ!メモ

 ▼おもちゃ病院 壊(こわ)れたおもちゃを原則(げんそく)無料で修理(しゅうり)するボランティア活動。1996年、全国組織(そしき)「日本おもちゃ病院協会」を設立(せつりつ)。同協会によると、活動は滋賀(しが)と沖縄(おきなわ)両県を除(のぞ)く45都道府県に広がり、1000人以上のドクターがいるという。

【紙面PDF】おもちゃ病院 思い出の品をいつまでも


=2016/06/01付 西日本新聞朝刊=

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