【おしごと拝見】こま作り職人 隈本知伸さん(57) 福岡県八女市の「独楽工房 隈本木工所」

工場では、たくさんのこまに色を付けて、かわかしていた
工場では、たくさんのこまに色を付けて、かわかしていた
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工場には、木を削ってこまの形を作るための機械などもあった
工場には、木を削ってこまの形を作るための機械などもあった
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店には、こまだけでなく、けん玉や積み木など木工のおもちゃがならんでいた
店には、こまだけでなく、けん玉や積み木など木工のおもちゃがならんでいた
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こまに色を付ける浜野祥喜記者
こまに色を付ける浜野祥喜記者
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 ●こどもたちの笑顔 思い浮かべて 伝統受け継ぐ6代目 「昔のおもちゃで遊んでほしい」

 あと2週間あまりでお正月。お正月の昔ながらの遊びの一つが、こま回しです。福岡(ふくおか)県八女(やめ)市でこま作りを続ける「独楽工房(こまこうぼう) 隈本(くまもと)木工所」の職人(しょくにん)、隈本知伸(とものぶ)さん(57)をこども記者2人が訪(たず)ね、取材しました。

【紙面PDF】おしごと拝見=こま作り職人 隈本知伸さん

 ■九州では2カ所だけ

 福岡市・天神(てんじん)の西日本新聞社から車で約1時間。「隈本コマ」として、こまなどを作る隈本木工所は、八女市の住宅街(じゅうたくがい)にあった。

 木造(もくぞう)の家のような店に入ると、「すぐに木のにおいがただよってきた。こまだけでなく、けん玉などのたくさんの遊び道具が目に飛びこんできた」(斎藤愛(さいとうまな)記者)。隈本さんは、おだやかな笑顔で迎(むか)えてくれた。

 隈本さんによると、現在(げんざい)、趣味(しゅみ)ではなく仕事としてこまを作っている所は、九州で2カ所だけ。この木工所以外では長崎(ながさき)県佐世保(させぼ)市にあるという。「昔と違(ちが)ってこまを必要とする人が減(へ)って、こまを作る人も少なくなり、材料も手に入りにくくなっているそうだ」(浜野祥喜(はまのさき)記者)。

 ■楽しく絵付け体験も

 隈本木工所は100年以上続いていて、隈本さんは6代目。かつては年間に20万個(こ)以上のこまを作っていたが、今は1、2万個くらいだという。それでも、こま作りの伝統(でんとう)を受け継(つ)いでいくために、積み木やけん玉などの木工のおもちゃも作り、インターネットで販売(はんばい)しているそうだ。

 店の隣(となり)にこまなどを作る工場があった。この日、木を削(けず)る作業はしていなかったが、色付けはしていた。

 隈本さんと妻(つま)のさゆりさん(58)が、こまの形に削られた木を電動ろくろで回し、筆で赤、青、黄、緑の4色をぬる手本を見せてくれた。隈本さんに「やってごらん」と促(うなが)されて体験した斎藤記者は「筆をこまにつけると、色がすべるようについた。思ったより簡単(かんたん)で、とてもおもしろかった」と喜んだ。浜野記者も上手に色付けができた。

 ■思いやりのある子に

 八女のこまの特徴(とくちょう)は何だろう。2人が聞くと、隈本さんは「(上から見たとき)こまの中央にへそ(と呼(よ)ばれる突起(とっき))があるところ」と教えてくれた。

 「こまは誰(だれ)が発明したんですか」と質問(しつもん)すると、隈本さんは八女に伝わった二つの説を話してくれた。一つ目は、約千年前、菅原道真(すがわらのみちざね)公が大宰府(だざいふ)に左遷(させん)された時に京(きょう)から持ってきたという説。もう一つは、朝鮮(ちょうせん)半島から長崎の平戸(ひらど)をへて八女に伝わったという説だ。

 浜野記者が「どんな気持ちで作っているのですか」と聞くと、隈本さんは「みんなが笑顔で回している姿(すがた)を思い浮(う)かべながら作っています」と答えた。そして「こまに限(かぎ)らず昔のおもちゃで遊んでほしいです。仲良く大人数で家の外で遊ぶことで、思いやりや優(やさ)しさがある子どもになってほしいですね」と付け加えた。

 ●幸せの願いこめて 材料は「われづらい」マテガシ

 こまは、くるくると回る。だから、昔から「福が回ってくるように」「人生が円満に回るように」などという願いがこめられているそうだ。隈本(くまもと)木工所では、こまの材料の木にはマテガシを使っているという。「マテガシはかたくて重く、ねばりがあり、われづらいそうだ」(浜野(はまの)記者)。

 隈本さんは、こども記者2人が自分で色付けした「世界に一つだけのこま」を記念にプレゼントしてくれた。最初は回せなかった斎藤(さいとう)記者も、家に持ち帰って回せるようになり、「お気に入りのおもちゃになった。音をよく聞いてみると『カツン、カラカラ』というおもしろい音がする」と気付いた。

 隈本さんの妻(つま)のさゆりさんは「ゲームよりこまができる方がかっこいい、と言ってくれる子もいるので、こま作りを続ける努力をしていきたいですね」と、やさしく話していた。

 ●わキャッタ!メモ

 ▼独楽工房(こまこうぼう) 隈本(くまもと)木工所 福岡(ふくおか)県八女(やめ)市にあり、こまは八女のこまだけでなく、平戸(ひらど)、博多(はかた)など九州各地の伝統的(でんとうてき)なこまも作っている。その他の木工おもちゃには、木のボウリングなどもあり、文字を書くとき反対の手でにぎれば姿勢(しせい)が良くなるという木工品も作っている。電話=0943(22)2955。

【紙面PDF】おしごと拝見=こま作り職人 隈本知伸さん


=2016/12/14付 西日本新聞朝刊=

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