九州新幹線の「基地」を探検 JR九州熊本総合車両所(熊本市)

車両所内の台車検修場で台車検査を受ける800系新幹線
車両所内の台車検修場で台車検査を受ける800系新幹線
写真を見る
新幹線の安全を支える台車について聞く
新幹線の安全を支える台車について聞く
写真を見る
ハンマーでボルトを打ち、緩みを検査する整備士の永瀬さん(左)
ハンマーでボルトを打ち、緩みを検査する整備士の永瀬さん(左)
写真を見る

 ●「大動脈」 安全に、快適に

 博多(福岡市)-鹿児島中央(鹿児島市)間の288・9キロを最速1時間17分で結ぶ鉄道の「大動脈」として観光や経済を支える九州新幹線。唯一の車両基地として安全な運行に大きな役割を果たしているのがJR九州の熊本総合車両所(熊本市南区)です。鉄道が大好きなこども記者5人が所内を探検。整備の現場や昨年の熊本地震で新幹線が脱線した際の復旧作業について取材しました。

【紙面PDF】九州新幹線の「基地」を探検 JR九州熊本総合車両所

 ■検査の種類は四つ

 博多駅から新幹線と在来線に乗り富合駅で下車。車両所は駅に隣接しているが、15分歩いても入り口に着かない。「歩いても歩いても先がある」(森陽太記者)。車両所に着くと所長の大坪孝一さん(50)が出迎えてくれた。「この車両所の総面積は約20万平方メートル。ヤフオクドーム(福岡市)のほぼ3個分あります」という説明に5人は驚いた。

 大坪さんは「九州新幹線が安全で快適に走れるようにすることが車両所の大きな仕事」と話し、(1)仕業検査(2日に1度)(2)交番検査(走行3万キロごとまたは30日以内)(3)台車検査(60万キロごとまたは18カ月以内)(4)全般検査(120万キロごとまたは36カ月以内)という主に4種類の点検作業を約400人の整備士らで行っていることを教えてくれた。永井晨翔(あきと)記者は「新幹線にも自動車の車検のような制度がある」と知り、西村律希記者は「新幹線が目的地に安全で正確に到着できるのは念入りな検査があるからだ」と感じた。

 ■安全支える耳と指

 副所長の城水常宏さん(44)の案内で台車検査を受けている車両を見に行った。所内には23本の線路が走っている。線路を横切るごとに城水さんは「右よし、左よし」と指差しながら声に出して安全を確認。5人も声を合わせた。

 台車検修場では点検用の台座に6両編成の800系新幹線の巨大なボディーが載せられていた。台車検査では車輪まわりを特に念入りにチェックする。技術課の永瀬友貴さん(29)が「検査用の機器も使いますが人間の耳も大事」とハンマーでボルトの頭をたたいて緩みを調べる「打音検査」のやり方を教えてくれた。

 研修用の2本のボルトを永瀬さんがたたくと1本からはカーンという高い音、もう1本からはやや低い音がした。永瀬さんは「音が低いボルトは緩んでいる可能性がある。必ず締まる方向にたたき、より正確に振動を感じるために指を添えることが大事」と説明した。検査を体験した志垣大和記者は「微妙な音の違いを聞き分けるには大変な経験が必要。普通の人には絶対にできない」と感心した。

 ■寝坊させない装置

 点検作業は24時間体制で、整備士らが仮眠を取る休養室のベッドには絶対に寝坊させないための「自動起床装置」が備えられていた。他の休憩者に配慮して無音でマット下のゴム袋にポンプで空気が送り込まれ、背中が押し上げられて目が覚める。装置を体験した5人のうち、花田麻央記者だけが「私はこのくらいでは目覚めない」と豪語し、「整備士さんは眠っていても『時間通り新幹線を動かす』という責任感があり、目が覚めるのだ」と考えた。

 ■復旧作業に力尽くす

 昨年の熊本地震では6両編成の800系回送列車の全車両が脱線し、車両所は復旧作業に力を尽くした。余震の中で行われたジャッキを使って車体を線路に載せる載線作業など現場の様子を聞いた永井記者は「載線した車両を人が押して移動させたことに驚いた」。志垣記者は「人と人が協力することで強く大きな力が生まれる」と感じた。

 城水さんは「新幹線を復旧させることが地震からの復興につながるとみんな信じていた」と振り返る。地震から1年が過ぎたが脱線した車両はまだ通常運転に復帰していないと聞いた森記者は「地震からの復興はこれからだ。僕も応援していく。がんばれ熊本!」と強く思った。

 ●「作業には絶対の自信を」 整備士の仕事を聞く

 整備士歴10年で、新幹線を担当して6年になる永瀬友貴さんに仕事について話を聞いた。

 -列車の整備士になるために必要な勉強は?

 「JR九州に入社してから整備士として必要な検査の資格などを取って技能を高めていくので、今は普段の勉強をがんばってください」

 -一つの車両編成で点検項目はいくつくらいありますか?

 「車輪回りから内装まで含めると1500ぐらいはありますね。800系は内装にこだわっていて、木材やアルミなどさまざまな素材を使っているので、材質に応じた点検が必要です」

 -やりがいを感じるときは?

 「お客さまが新幹線の中でくつろいでいる様子を見るとうれしいですね。その一方で大きな責任も感じ、気持ちをひきしめます」

 -どんな気持ちで仕事に取り組んでいますか?

 「乗り物は整備のミスや手抜きが一つでもあれば大きな事故につながる。新幹線を担当するときに、先輩から在来線の列車とは速度が違う(800系の最高運転速度は時速260キロ)ので、さらにしっかり点検を行うように教え込まれた。自分がした作業を常に確認し、絶対に大丈夫という自信を持って車両所から送り出せるように心がけています」

 ▼九州旅客鉄道熊本総合車両所 熊本市南区富合町。JR西日本の博多総合車両所(福岡)、JR東日本の新幹線総合車両センター(宮城)に次ぐ、全国3番目の新幹線総合車両基地として2010年11月に開設。最大13編成を収容し、約20万平方メートルの敷地に点検を行う検修場や車体の洗浄装置などさまざまな施設や装備がある。見学の申し込みは同車両所見学受付専用ダイヤル=096(357)7272。

【紙面PDF】九州新幹線の「基地」を探検 JR九州熊本総合車両所


=2017/04/22付 西日本新聞朝刊=

西日本新聞のイチオシ [PR]

西日本新聞のイチオシ [PR]