【きょうのテーマ】全面開園目指す 熊本市動植物園 動物もみんなを待ってる

久しぶりの子どもたちの姿にはしゃぐオタリア
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ゾウの獣舎で水くみの苦労を語る飼育員の北川さん
ゾウの獣舎で水くみの苦労を語る飼育員の北川さん
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昨年9月に生まれたマサイキリンの「秋平」。地震の時は母親の「小春」(左)のおなかの中にいた
昨年9月に生まれたマサイキリンの「秋平」。地震の時は母親の「小春」(左)のおなかの中にいた
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 ●新たな命に希望も

 昨年4月の熊本地震(くまもとじしん)で被災(ひさい)し、休園が続いていた熊本市動植物園(同市東(ひがし)区)が今年2月から部分開園し、にぎわいを取(と)り戻(もど)しつつあります。園内のあちこちに地震の傷痕(きずあと)が残る中、来年4月の全面開園を目指して頑張(がんば)る職員(しょくいん)の皆(みな)さんと元気な動物たちを、こども記者6人が取材しました。

【紙面PDF】きょうのテーマ 全面開園目指す 熊本市動植物園

 ■被害に立ち尽くす

 正門前で6人は立(た)ち尽(つ)くした。地震(じしん)から1年過(す)ぎた今も入場ゲートは傾(かたむ)き、閉鎖(へいさ)されていた。以前来園したことがある野田(のだ)すず記者は「お客さんも多くてにぎやかな入り口だったのに」とぼうぜんとした。

 当時の状況(じょうきょう)について岡崎伸一(おかざきしんいち)園長(58)に取材した。野田記者が「どの動物が地震で大きなダメージを受けたのか」と聞くと、岡崎園長は「チンパンジーなどの霊長類(れいちょうるい)が強い恐怖(きょうふ)を感じてしばらく下痢(げり)が続き、寝室(しんしつ)に入らなくなった。今でも余震(よしん)のたびに動物たちは動揺(どうよう)する」と答えた。

 堀本祐良(ほりもとゆら)記者は園長室の壁(かべ)にカバのイラストがあるのに気付いた。岡崎園長は「地震の前に園のリニューアルを検討(けんとう)していた。それは展示(てんじ)のイメージ図です」と説明し、「今は園を元通りにすることが最優先(さいゆうせん)」と力を込(こ)めた。堀本記者は「いつか新しい展示が実現(じつげん)して、熊本の人が元気づけられるといいな」と願った。

 ■飼育員たちの苦労

 部分開園で子どもたちに人気なのがゾウとキリンだ。2頭のアフリカゾウを担当(たんとう)する飼育員(しいくいん)の北川勇夫(きたがわいさお)さん(38)は「地震で一番困(こま)ったのは地中の給排水管(きゅうはいすいかん)が壊(こわ)れたこと」と話した。ゾウが1日に飲む水は100から150リットル。清掃(せいそう)も考えると2頭で水500リットルは必要だ。「隣(となり)の江津湖(えづこ)の湧(わ)き水をタンクにくみ、トラックで運んだ。重くて大変だった」と振(ふ)り返る。水道は今も全面復旧(ふっきゅう)していない。

 マサイキリンの運動場では昨年9月に生まれた「秋平(しゅうへい)」が母親の「小春(こはる)」らと遊んでいた。北川さんは「秋平という名前には『熊本に平和を』という職員の願いが込められている」と話した。2007年に死んだ“祖父(そふ)”の「神平(こうへい)」も生まれてすぐに神戸(こうべ)市王子(おうじ)動物園で阪神(はんしん)大震災(1995年)を経験。翌年(よくねん)、熊本市動植物園に「婿(むこ)入り」した際(さい)に「神戸に平和を」とこの名前になったそうだ。

 北川さんの「地震のときに母親のおなかにいた赤ちゃんの誕生(たんじょう)は大きな喜び。復興(ふっこう)へ希望を感じた」という言葉に、浜野祥喜(はまのさき)記者は「無事生まれてくれるか、みんな心配したと思う。マサイキリンは日本に10頭しかいないので、秋平くんもいつか立派(りっぱ)なお父さんになってほしい」と願った。

 ■人間だけがいない

 立ち入り禁止(きんし)区画にも特別に許可(きょか)をもらって足を踏(ふ)み入れた。アスファルトには亀裂(きれつ)が走り、地面のあちこちが隆起(りゅうき)し、液状化(えきじょうか)で地中から水や砂(すな)が噴(ふ)き出していた。甲斐翔太(かいしょうた)記者は「こんなに被害(ひがい)が大きかったのか」と胸(むね)が苦しくなり、他の動物園に避難(ひなん)して空っぽになった猛獣舎(もうじゅうしゃ)を前に「早く戻って迫力(はくりょく)ある姿(すがた)を見せてほしい」と願った。

 人影(ひとかげ)のない区画で動物は普段(ふだん)通り生活していた。久(ひさ)しぶりの子どもの姿にキンシコウが手を差し伸(の)べ、水中のオタリアがうれしそうに跳(と)びはねた。北忠明(きたただあき)記者は「園で働く人たちの知恵(ちえ)と工夫で動物たちが暮(く)らせる環境をつくっていることに感動した」という。熊本市に住む魚住志帆(うおずみしほ)記者は「動物はいつもと変わらないのに何かが違(ちが)う。人がいてこその動物園だ」と感じ、動物の気持ちを詩にした。

 「楽しかった。また来たい」。地震に負けない人間と動物の姿に6人は元気と笑顔をもらった。

 ●「ライオンが逃げた」 心無いデマも

 最初の地震(じしん)が起きた昨年(さくねん)4月14日夜、「熊本(くまもと)の動物園からライオンが逃(に)げ出した」というデマがツイッターなどで拡散(かくさん)され、園には100件(けん)以上の問い合わせが殺到(さっとう)した。

 魚住(うおずみ)記者は当時、自宅(じたく)近くの公園に避難(ひなん)した。「母親から聞いた話だが、同じ公園にいた女性(じょせい)がスマホでデマ情報(じょうほう)を見つけ、他の人にも伝えようとしたところ、別の人が『それはデマだよ。広めちゃだめだ』と止めた」

 心ないデマに岡崎(おかざき)園長は「怒(いか)りを覚えるとともに、市民の不安を解消(かいしょう)しなければ」と、猛獣(もうじゅう)を被災した獣舎(じゅうしゃ)から他の動物園に移動(いどう)させたという。現在(げんざい)ウンピョウ(2頭)は福岡(ふくおか)市動物園、アムールトラは到津(いとうづ)の森公園(北九州(きたきゅうしゅう)市)、ユキヒョウは大牟田(おおむた)市動物園(福岡県)、ライオンは九州自然動物公園アフリカンサファリ(大分(おおいた)県宇佐(うさ)市安心院(あじむ)町)で元気に生活している。

 ●「ボクと私の気持ち」 魚住志帆

人がたくさんいた場所が
今はひっそりしずまりかえり
鳥の声がひびいている
ボクや私(わたし)を見てた人
いったいどこへいってしまったの
ねぇおしえてよ
ねぇおしえてよ

 ●わキャッタ!メモ

 ▼熊本市動植物園 6月から開園部分を全体の約半分に拡大(かくだい)。ゾウやキリンの展示(てんじ)のほか一部の植物園施設(しせつ)と乗り物(有料)を楽しめる。現在(げんざい)は土日と祝日(しゅくじつ)のみ営業(えいぎょう)。入園料は高校生以上200円、中学生以下無料。問い合わせは同園=096(368)4416。

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=2017/06/07付 西日本新聞朝刊=

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