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青果市場を訪ねて (福岡市東区) 早朝から熱気、せりは呪文のよう

せりの様子。参加した業者は小さな黒板をあげて希望する値段を示(しめ)していた
せりの様子。参加した業者は小さな黒板をあげて希望する値段を示(しめ)していた
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比嘉さん(右)に話を聞きながら、せりを間近に見た
比嘉さん(右)に話を聞きながら、せりを間近に見た
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「祭り好き」と話す三苫さん
「祭り好き」と話す三苫さん
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市場内には果物もたくさん並べられていた
市場内には果物もたくさん並べられていた
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 野菜や果物が産地から集まり、八百屋(やおや)さんなどが仕入れにくる「青果市場」。ここでは「せり」といって、まだ値段(ねだん)が決まってない野菜に、ほしい人がどんどん値段をつけていく“競争”みたいなものが行われているらしい。福岡(ふくおか)市東(ひがし)区の「福岡市中央卸売市場(おろしうりしじょう)青果市場」をたずねた。

【紙面PDF】青果市場を訪ねて (福岡市東区)

 5月半ばの午前7時半。朝の空気はまだ少しひんやりとしていたけれど、市場内は熱気いっぱい。赤や黄色の帽子(ぼうし)をかぶった人がわあわあと声をあげていたり、野菜が入った段(だん)ボール箱を抱(かか)えて動き回ったり…。

 「帽子の色は、仕事の内容(ないよう)で違(ちが)います」と、案内してくれた比嘉光子(ひがみつこ)さん(34)が教えてくれた。赤い帽子の比嘉さんは「福岡大同青果(ふくおかだいどうせいか)」の社員さん。生産者から野菜を集めてくる「卸売業者(おろしうりぎょうしゃ)」だ。

 市場はヤフオクドーム(福岡市中央(ちゅうおう)区)の2倍以上の広さ。比嘉さんたち卸売業者が集めた野菜を仕入れようと、八百屋(やおや)さんや「仲卸(なかおろし)業者」という野菜をスーパーなどに売る人たちがやってくる。いわば、農家と消費者を結ぶ“中つぎ地点”。関係している業者たちは約2千人、取りあつかわれる野菜と果物は1日1200トンにも上る。

 市場内にひときわにぎわっているところがあった。幅(はば)4・5メートル、高さ1・5メートルほどのひな壇状(だんじょう)の台にずらりと並(なら)ぶ人たちに向かって、ステージのような台に立った人が何か大声でしゃべっている。「あらららあららら」と早口言葉のような、呪文(じゅもん)のような…。

 これが「せり」だ。売り手である卸売業者が野菜の見本を見せ、買い手の八百屋さんや仲卸業者にいくらで買うか聞く。一番高い値段(ねだん)をつけた人が品物を買うことができるという、売り買いの仕方だ。ステージに立つ人は「せり人」といって卸売業者で、ひな壇の人たちが八百屋さんたちだ。

 「よーく聞いてみて。せり人は意味のない言葉の合間に、数字や野菜の品種などを言っています」と比嘉さんに言われてみると、数字などを聞き取れた。でも意味のないかけ声は何のため? 比嘉さんは「せりはリズム感が大事。ほしい人にぱっと値段をつけてもらうため」と教えてくれた。せり人によってかけ声も違い、鼻歌みたいなものだという。

 午前8時半をすぎると、だんだん市場内は静かになっていった。買った野菜をトラックに載(の)せて八百屋さんたちが自分の店に帰っていく。市場が“ねむる”のは昼ごろ。そして夜10時ごろから明け方にかけて、また野菜が次々と届(とど)くそうだ。
(田上桜菜(たのうえさな)記者、永井晨翔(ながいあきと)記者)

 ●暗算力、視力も大事 「せり人」20年 三苫さんに聞く

 「せり人」ってどんな人だろう。せり人になって20年という福岡大同青果(ふくおかだいどうせいか)の三苫敏郎(みとまとしろう)さん(46)に聞いた。

 せり人は生産者から託(たく)された野菜を、八百屋(やおや)さんなどに売ることが仕事。高い値段(ねだん)をつければ生産者や自分たちの利益(りえき)につながるけれど、高すぎると買ってもらえず、そのバランスを取ることが大事だ。三苫さんは「それには産地の状況(じょうきょう)や収穫量(しゅうかくりょう)、消費者が求めるものなどをつねに頭に入れておかねばならない」と話す。せりの最中は、次々と売れる品物がいくつ残っているかを暗算。頭はフル回転だ。

 せり人になるには、市などが行う登録試験を受けなければならない。受験には野菜の知識(ちしき)はもちろん、先輩(せんぱい)せり人の補助(ほじょ)など3年以上の経験(けいけん)がいる。「目もよくないといけないよ」と三苫さん。せりの間、買い手はメモ帳サイズの黒板にいくらで買うか値段を書いて掲(かか)げるから、それを見逃(みのが)さないことが肝心(かんじん)だという。

 三苫さんは大学生のころ「食べ物なしに人は生きていけない」と考え、この仕事を選んだ。実家は農家で「農家の役に立ちたい」という思いもあったそうだ。野菜のおいしさを伝えることも役割(やくわり)だといい、私(わたし)たちに「野菜をたくさん食べてね」と笑った。
(倉橋凛子(くらはしりんこ)記者、小宮衣織(こみやいおり)記者)

 ▼福岡(ふくおか)市中央卸売市場(おろしうりしじょう)青果市場 福岡市東(ひがし)区みなと香椎(かしい)。愛称(あいしょう)「ベジフルスタジアム」。野菜や果物を新鮮(しんせん)に保(たも)てるよう、日本最大規模(きぼ)の冷蔵施設(れいぞうしせつ)(定温卸売場)や、残留(ざんりゅう)農薬の検査(けんさ)をする設備(せつび)などがある。せりの様子を2階から見下ろせる見学者用通路もあり、開場日には自由に見学できる。毎月第3土曜には市民も野菜を買えるイベントが開かれる。092(683)5323。

【紙面PDF】青果市場を訪ねて (福岡市東区)


=2017/06/17付 西日本新聞朝刊=

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