【きょうのテーマ】荒井良二さんと壁画制作に挑む 改修工事進む福岡市美術館

参加者が力をあわせることで個性あふれる壁画が生まれた
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「形のない美術館」
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「移動できる美術館」
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「海の中の美術館」
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「電球の美術館」
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「春夏秋冬の美術館」
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坂本真菜記者に荒井さん(左)は「もっと汚せ!」
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 ●「絵は体で描くもの」 共同作業、ぶつかるのも出会い 5枚の壁画が完成

 2019年3月の新装(しんそう)開館を目指して改修(かいしゅう)工事が進む福岡市美術館(ふくおかしびじゅつかん)(同市中央(ちゅうおう)区大濠公園(おおほりこうえん))。11月3日、建物を囲むフェンスに飾(かざ)る壁画(へきが)を制作(せいさく)するイベントがあり、福岡県内の小中学生30人と、こども記者・特派員(とくはいん)4人が参加しました。一緒(いっしょ)に作業したのは、世界的に優(すぐ)れた児童文学に贈(おく)られるアストリッド・リンドグレーン記念文学賞(スウェーデン)を日本人として初受賞した人気絵本作家、荒井良二(あらいりょうじ)さん(61)。熱意あふれるアドバイスを受けながら、「未来の美術館」をテーマに素敵(すてき)な作品を仕上げました。

【紙面PDF】きょうのテーマ=荒井良二さんと壁画制作に挑む

 ■緊張(きんちょう)解(と)くマジック

 午前10時半、美術館(びじゅつかん)横の広場に参加者は集合。司会者から「先生」と紹介(しょうかい)された荒井(あらい)さんは「先生じゃない。おっさんです」と子どもたちを笑わせた。

 足元には絵を描(か)くために白く塗(ぬ)られた金属板(きんぞくばん)(横4メートル、縦(たて)1・5メートル)が5枚(まい)並(なら)んでいた。荒井さんは「まずはゲームをしよう」と呼(よ)び掛(か)け、1枚を子どもたちと一緒(いっしょ)に胸(むね)の位置まで持ち上げ、赤いテープを転がした。テープを板から落とさないように協力して四隅(よすみ)を上下させると参加者に笑顔が生まれた。初対面の緊張を解く“荒井マジック”で、共同作業の下地が整った。

 ■線と色の“出合い”

 壁画(へきが)制作(せいさく)は工事中でも市民に美術館の雰囲気(ふんいき)を感じてもらおうと同館が企画(きかく)し、大型作品をその場で描く「ライブペインティング」の名手でもある荒井さんが協力して実現(じつげん)した。

 子どもたちは5班(はん)に分かれ、色鉛筆(いろえんぴつ)を使った試(ため)し描きから作業はスタート。「束にして使うと面白い」「強い線、弱い線、いっぱい描いて」。荒井さんの助言に、行儀(ぎょうぎ)よく描いていた参加者は大きな動きで表現(ひょうげん)し始めた。「ぶつかったら『こんにちは』と色鉛筆を交換(こうかん)。ぶつかるのは出会い。絵も線と線、色と色との“出合い”なんだ」

 水性(すいせい)ペンキを使った下地作り。「筆を持つとお利口になる。はみ出してはいけない、と」。荒井さんの言葉に参加者は段(だん)ボールの切(き)れ端(はし)や素手(すで)で色を広げ、沸(わ)き立(た)つような色彩(しきさい)に満ちた下地ができあがった。

 ■リズム感にあふれ

 午後から完成に向けた本格的(ほんかくてき)な作業が始まった。各班はタイトルを考え、懸命(けんめい)に筆を走らせた。仲間同士で頭を寄(よ)せ合い、身を乗りだして線をつなぎ色を重ねた。「絵は体で描くもの」という荒井さんの言葉を実感した。

 終了(しゅうりょう)時間の午後4時になった。完成した作品を前に荒井さんは「テーマを自分のものにして作品を完成させてくれた。リズム感のあるいい絵だ」とたたえた。木漏(こも)れ日と子どもたちのペンキだらけの笑顔が作品をひときわ輝(かがや)かせた。

(作品は大濠公園(おおほりこうえん)のジョギングロードに面した工事用フェンスに掲示(けいじ)してある)

 ●「絵で人を元気にしたい」 荒井良二さんに聞く

 荒井(あらい)良二(りょうじ)さんに絵本作りへの情熱(じょうねつ)や壁画制作(へきがせいさく)の狙(ねら)いを聞いた。

 -絵本作家になるきっかけは?

 子どもの頃(ころ)から絵で食べていける人になりたいと考えていた。東京(とうきょう)の大学に通っていた19歳(さい)のときに本屋でマーガレット・ワイズ・ブラウン作の「おやすみなさいおつきさま」に出合った。洋書で、絵も本の作りもかっこよくて「おれの求めていたものだ」と絵本の世界に引き込(こ)まれた。

 -大切にしていることは?

 言葉で言えないことを絵本で伝えること。話も大切だけど絵で人を元気にしたい。読者も自分も喜べる内容(ないよう)にすることが大事だ。次はどんな本を作ろうかといつも考えている。

 -いい絵本作家になるには?

 絵以外の得意なことを見つける。例えば料理。材料をそろえる、味付けをするなど絵本作りとつながる部分に気付くことでいろいろなやり方が見えてくる。

 -作業で子どもたちに感じてほしかったことは?

 知らない人同士が会ってすぐに一つのことをやるのは大変だ。でも未来ってなんだと考えながら制作することで見えない対話が生まれ、気持ちや絵がつながる。そんなグループワークの難(むずか)しさ、楽しさを味わってほしかった。個性(こせい)あふれるダイナミックな作品になってうれしい。

【紙面PDF】きょうのテーマ=荒井良二さんと壁画制作に挑む


=2017/12/13付 西日本新聞朝刊=

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