恐竜 進化のドラマ いのちのたび博物館で「アクア・キングダム」展を見る

「史上最大の魚竜」-推定全長21メートルの「ショニサウルス」の頭骨復元
「史上最大の魚竜」-推定全長21メートルの「ショニサウルス」の頭骨復元
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水中で泳ぐ姿が想像できる「スピノサウルス」の骨格標本
水中で泳ぐ姿が想像できる「スピノサウルス」の骨格標本
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大橋智之学芸員
大橋智之学芸員
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 ●陸から再び水中へ 変化に適応し生活の場

 私(わたし)たち人間を含(ふく)む脊椎(せきつい)動物は3億7千万年前頃(ごろ)、陸に上がった魚類から進化したとされています。その一方で、環境(かんきょう)の変化に適応(てきおう)して生息の場を再(ふたた)び水中に求めた脊椎動物も。いのちのたび博物館(北九州(きたきゅうしゅう)市八幡東(やはたひがし)区)で開かれている特別展(とくべつてん)「アクア・キングダム」では、太古の水中で繰(く)り広げられたもう一つの進化のドラマを、恐竜(きょうりゅう)や魚竜(ぎょりゅう)の骨格(こっかく)標本など約700点の貴重(きちょう)な資料(しりょう)を通じて紹介(しょうかい)。展示(てんじ)を担当(たんとう)した大橋智之(おおはしともゆき)学芸員(41)=古脊椎動物専門(せんもん)=の案内で、4人のこども記者が水中の「生命の王国」を旅しました。

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 ■巨大な頭骨(とうこつ)や標本

 特別展(とくべつてん)の会場に入ると、巨大(きょだい)な「顔」に度肝(どぎも)を抜(ぬ)かれた。約2億2千万年前の海中に生息した、史上最大の魚竜(ぎょりゅう)ショニサウルスの頭骨復元(ふくげん)の展示(てんじ)。カナダで発見され「頭骨だけで約3・8メートル。全長は約21メートルと推定(すいてい)される」と大橋(おおはし)さん。魚竜は魚のような姿(すがた)で水中生活に適応(てきおう)した爬虫類(はちゅうるい)として知られている。

 次のコーナーには約1億年前にアフリカ大陸で生息していた、史上最大の肉食恐竜(きょうりゅう)スピノサウルスの全身骨格(こっかく)標本が展示されていた。スピノサウルスは陸上では4本足で歩行したが、餌(えさ)は魚類とされる。大橋さんは「スピノサウルスは泳ぐのが得意だったとする最新の研究もある。泳ぐ姿をいかに再現(さいげん)するか展示を工夫した」と話した。

 骨格の下には同時期の魚の化石が敷(し)き詰(つ)められている。「アクア・キングダム」とは「水中の王国」の意。全長15メートルの巨体(きょたい)をしなやかにくねらせて泳ぐ「王者」の姿が目に浮(う)かんだ。

 ■生命の素晴(すば)らしさ

 ショニサウルスなどの祖先(そせん)は水から陸に上がったが、子孫は再(ふたた)び水中に移(うつ)った。この変化を研究者は「脊椎(せきつい)動物の二次的水生適応(てきおう)」と呼(よ)ぶ。大橋さんは水中の方が「餌が豊富(ほうふ)だった」「外敵(がいてき)や天敵がいなかった」などの説を紹介(しょうかい)し「祖先が水辺に生活の場を移して進化する中で、再び水中で暮(く)らす能力(のうりょく)を身に付けたのでは」と解説(かいせつ)した。

 鳥類ではペンギン、哺乳類(ほにゅうるい)ではクジラなどの祖先が水中での生活に適応した。その進化の過程(かてい)を物語る、貴重(きちょう)な化石が北九州(きたきゅうしゅう)市で見つかっている。

 同市に広がる約3千万年前の海の地層(ちそう)「芦屋層群(あしやそうぐん)」からは絶滅(ぜつめつ)した鳥類やクジラ類の化石が数多く発掘(はっくつ)されている。中でも泳ぐことに適した骨格を持つ海鳥プロトプテルム類のコペプテリクス、クジラ類ヤマトケタスの化石は新種として注目された。

 特別展では、通常(つうじょう)は見ることができないこの2種の実物化石を公開している。

 大橋さんは「脊椎動物の適応力のすごさ、進化する生命の素晴らしさを感じて」と力を込(こ)めた。環境(かんきょう)が変化すれば私(わたし)たち人類もいつか水中で生活する日が来る? 地球誕生(たんじょう)に始まる「いのちのたび」は続く。

 ●想像の翼を広げてくれる化石

 大橋さんは「多様性(たようせい)館」(常設(じょうせつ)展示(てんじ))にあるゾウの骨格標本(こっかくひょうほん)の前にこども記者を案内し「ゾウを見たことがない人が骨(ほね)だけ見て、長い鼻や大きな耳があると思うだろうか?」と問いかけた。大橋さんは頭骨の中央に空いた大きな穴(あな)を指し「鼻を動かす筋肉(きんにく)が付いているところ。でもゾウを知らない人は、目があったと思うのでは」と説明した。化石だけで生物の姿(すがた)を復元(ふくげん)するのは限界(げんかい)がある。「調査(ちょうさ)の積み重ねで生態(せいたい)や本当の姿が見えてくる。そこに研究の難(むずか)しさ、面白さがある」と力を込(こ)めた。

 大橋さんは「ギリシャ神話にサイクロプスという一つ目巨人(きょじん)が登場するが、昔のギリシャ人がゾウの頭の化石を見て想像(そうぞう)したとする説がある」と話した。

 ギリシャ文明が栄え、神話が誕生(たんじょう)した時代、ゾウは欧州(おうしゅう)から姿を消していた。巨大な頭と穴を見て「目の穴が一つしかない。昔一つ目の巨人がいた」と当時の人が驚(おどろ)いても不思議はない。

 大橋さんは、日本でもサメの歯の化石が「天狗(てんぐ)の爪(つめ)」とされたエピソードを紹介(しょうかい)し、「鬼(おに)や妖怪(ようかい)も、動物の化石を見た人が思い付いたのかも」とほほ笑(え)んだ。人間の想像(そうぞう)の翼(つばさ)を広げてくれる化石に4人はさらに興味(きょうみ)を深めた。

 ●わキャッタ!メモ

 ▼特別展(とくべつてん)「アクア・キングダム-スピノサウルスと水に還(かえ)ったどうぶつたち-」 25日(日)まで、北九州(きたきゅうしゅう)市八幡東(やはたひがし)区東田(ひがしだ)のいのちのたび博物館。恐竜(きょうりゅう)の骨格(こっかく)標本、爬虫類(はちゅうるい)の標本、同市で見つかったクジラ類の化石など約700点を展示(てんじ)。会期中無休。特別展のみの観覧料(かんらんりょう)は大人500円、高大生300円、小中生200円。同館=093(681)1011。

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=2018/02/03付 西日本新聞朝刊=

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