【きょうのテーマ】熊本地震から2年 南阿蘇を訪ねて 壊れた温室、ゼロからの再開

採れたてのイチゴはとても甘かった
採れたてのイチゴはとても甘かった
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温室から出ると、阿蘇の山が見えた。山肌がむきだしになっていた
温室から出ると、阿蘇の山が見えた。山肌がむきだしになっていた
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役場の外を見ながら、吉良村長から被害の説明を聞いた
役場の外を見ながら、吉良村長から被害の説明を聞いた
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 ●阿蘇健康農園 甘いイチゴがもどってきた

 野焼きの跡が残る春の山に、黄緑色の草が生えていた。2年前の熊本地震による山くずれで、むき出しになった茶色の山肌も見えた。熊本県南阿蘇村。村にくらすこども記者と福岡県のこども記者が、再出発したイチゴ農園と村役場を訪ね、被災地の「いま」を感じた。

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 レジャー施設「阿蘇ファームランド」のとなりに、イチゴ狩りを楽しめる「阿蘇健康農園」はあった。社長の原田大介さん(41)が「おいちゃんも、みんなに近い年の子どもがおるよ」と出迎えてくれた。

 案内してもらったのは面積8208平方メートルの白く真新しい温室。入るとイチゴの甘いかおりでいっぱいだった。レタスやトマトも育っていた。飛び回るハチを私たちが怖がっていると、原田さんは「おとなしいけん大丈夫。イチゴの受粉を手伝ってくれてるとよ」。ハチ以外にも、害虫を別の虫でやっつけるなどしている。「農薬を使わず農作物を育てたいから」だ。

 「真っ赤なほどおいしい」と教えられ、みんなで競って赤いイチゴをさがした。採って食べると、思わず「甘い!」と声が出た。

 育てた野菜やハーブで加工品も作って売っている。原田さんは「阿蘇といえば農業と観光。両方をもり上げたくて、13年前にここを開いたんよ」と言った後、さびしそうに笑った。「ずっと順調にいってたんやけどね…」

 ■声出して泣いた

 2年前の4月16日の真夜中、立っていられないぐらいものすごい揺れが村を襲った。となり町に住む原田さんはすぐに車で農園に向かったが、がけくずれや渋滞で5時間もかかった。朝日の中で見えたのは、くずれた温室と下じきになった野菜。「子どもみたいに声を出して泣いたよ」

 私たちは地震直後の写真を見せてもらった。温室の柱は折れ曲がり、野菜はしおれ泥だらけになっていた。温室の再建には何億円もかかる。原田さんは農園をやめようかとも考えた。

 あきらめなかったのは、お客さんから励ましの電話があったから。地震後すぐに加工品を買いに来てくれた人もいた。「東日本大震災で熊本の人に助けてもらった」という福島県のボランティアもたくさん買ってくれた。

 ■一生懸命な姿を

 農園の従業員14人のうち3人は地震で家をなくした。「早く新しい家を建ててほしい。そのためにも自分ががんばらんと、と思ったよ」。原田さんは仕事の再開を決意。冷凍保存していたバジルで加工品を作り続け、昨年10月に新しい温室を建て直した。地元の高校生はイチゴの苗(なえ)付けを手伝ってくれた。原田さんは「地震でつらかったけれど、ありがたいと思うことも多かった」と話した。

 いま2年ぶりのイチゴ狩り客を受け入れている。「一生懸命な姿を見せることが、助けてくれた人への恩返し」。原田さんの勇気に私たちも元気をもらった。

 イチゴ狩りは4月末まで。阿蘇健康農園=0967(63)8500。 (宜野座記者、殿川記者、橋本記者、本間記者)

 ●吉良・南阿蘇村長にインタビュー 「阿蘇に来てほしい。それが励ましに」

 私たちは南阿蘇村役場も訪ね、村長の吉良清一さん(62)に復旧の進み具合や、私たちにできる支援について聞いた。

 「『復旧』『復興』ってみんなよく言うけど、ちがいが分かる?」と話を始めた吉良さん。「復旧」は前の状態にもどすこと、「復興」は元気のある村、また人が住みたいと思う村をつくっていくこと-と教えてくれた。そして「まだ復旧すら途中。自分の家がない人もたくさんおるんです」と言った。いま南阿蘇村に住んでいる人は1万人あまり。そのうち仮設住宅などに住む人は4分の1の約2500人もいるそうだ。取材した私たちこども記者の一人、橋本記者も木造の仮設住宅に住んでいる。

 小中学校の授業はいま、元通りに行われている。でも壊れた橋や道路が元通りになっていないところがあるため、通学がスクールバスで1時間以上かかる子もいる。橋本記者の家の近くにあった阿蘇大橋もくずれ落ち、通っている小学校では約2割の子が転校せざるをえなくなった。

 私たちにできることは何だろう。吉良さんは「南阿蘇に来て、食べて泊まって観光してほしい。それが励ましになります」と話した。 (鈴木記者、福田記者)

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=2018/04/19付 西日本新聞朝刊=

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