ゆっくり走るから見える景色がある レールバス 甘木鉄道 整理券を取って乗る列車

一両編成で走る甘木鉄道
一両編成で走る甘木鉄道
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駅長室で列車の運行状況について説明する竹本さん
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特別に運転席に座らせてもらった
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車両の底部分についたブレーキや給油タンクも見せてもらった
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 福岡県朝倉市と佐賀県基山町を結ぶ「甘木鉄道」(甘鉄)は、「レールバス」という、地域の人たちに親しまれているローカル列車だ。なぜ列車なのに「バス」なのだろう。甘鉄を訪ね、そのなぞを探った。

【紙面PDF】ゆっくり走るから見える景色がある

 ■四季の移り変わり、じっくり感じて

 私たちが訪ねたのは3月末。ピンクの桜や黄色の菜の花が沿線を彩っていた。甘鉄の小郡駅(福岡県小郡市)から列車に乗り、ゆっくり揺られながら本社がある甘木駅(朝倉市)に向かった(下野記者)。笑顔で迎えてくれたのは駅長の竹本良一さん(52)。駅長がいる駅はここだけで、ほかは無人駅だ。

 竹本さんによると、甘鉄は全13・7キロの線路に11駅。駅と駅の間が短く、列車はゆっくり走る。乗車中、線路のすぐ横に高速道路があるところがあり、列車と自動車が並走した。驚いたのは、列車の方が遅かったこと。また途中で車窓から小さな神社が見えたが、なんと鳥居と本殿の間に線路があるのだ。ゆっくり走るからこそ、見えた景色だ(下野記者)。

 ▼運転席の横に運賃箱

 列車内を案内してもらった。運転席の横には運賃箱、その前方にはバスでよく見るような電光の運賃表示板があった。乗るときに整理券を取り、降りるときに運賃箱に整理券とお金を入れる仕組みだ(篠原記者)。「多くの鉄道ではICカードで運賃を払えますが、うちは違う。バスに似てるでしょ」と竹本さん。「昔のことですが、車両にほとんどバスと同じ部品を使っていた」とも教えてくれた(篠原記者)。レールバスは、軽油を燃料にディーゼルエンジンで動く。車両が小さく軽量なので、運行コストを抑えることができるという。

 ▼やりとりもほのぼの

 駅長室で取材中、運転士から無線が入り「乗り間違え。運賃いただきません」というやり取りがあった。甘鉄は一つの線路を上下列車が共用して走る「単線」のため、よくあることだそうだ。困っているお客さんと運転士さんがやりとりする、ほのぼのした様子が目に浮かんだ。甘鉄は、それだけ住民やお客さんと距離が近く、親しまれている証しなのだとも感じた。

 私の母も昔、通学で利用していた。高校の帰り、部活でくたくたになっても、甘鉄に乗るとほっとしたと言う。夜、いなかを走る列車の外はまっ暗で、まるでアニメ「となりのトトロ」に登場する「ねこバス」に乗っている気分だったそうだ(佐藤記者)。

 ■鉄道が大好き 駅長の竹本さん

 小さいころから鉄道が好きという駅長の竹本さん。甘木鉄道を含めて三つの鉄道会社で働いた経験がある。なかでも甘木鉄道は「のーんびりしたところが良い」。好きな景色は線路沿(ぞ)いの桜並木。運転しているときに手をふってくれる住民もいて、ほっとするそうだ。沿線ではこれからの季節はポピーが咲き、秋にはお米が実る田んぼを見られる。四季の移り変わりをじっくり感じることができると話す。

 宮崎県延岡市で生まれ育った。遊びといえばお父さんと近くの機関庫を見に行くことで、高校卒業後は京阪電鉄(大阪市)に入社した。地元で仕事がしたいと、29歳で宮崎を走る「高千穂鉄道」に再就職したが2005年、高千穂鉄道は台風による被害が大きく廃業。その後に甘鉄に入り、運転や駅長の仕事を頑張っている。

 竹本さんは「見えないところでたくさんの人が働いて、列車は動いているんですよ」と笑顔で教えてくれた。 (吉武記者)

 ●わキャッタ!メモ

 甘木鉄道 国鉄から路線を引きつぎ、市や町などがお金を出し合って運営する第三セクターとして、1986年に開業。社員32人。JR基山駅(佐賀県基山町)と西鉄小郡駅(福岡県小郡市)に近接した駅がある。

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=2018/05/03付 西日本新聞朝刊=

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