安全性・環境への影響 消費者も考える 洗浄剤、成分や原料で判断を

粉末を溶かし、スプレーで噴射して使うレノグリーン
粉末を溶かし、スプレーで噴射して使うレノグリーン
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開園したばかりの認定こども園はあらゆる所の清掃、除菌用に使っている
開園したばかりの認定こども園はあらゆる所の清掃、除菌用に使っている
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 知人からユニークな洗浄剤があると聞いた。主な成分は食品添加物で、スギやヒノキなど間伐材の抽出液が含まれる。素手で作業しても安全で、環境への負荷も小さいという。

 弱アルカリ性の酸素系洗浄剤「レノグリーン」は、医療用の試薬や検査機器などを販売する「アビオス」(福岡市東区)が開発した。もともとは医療器具を洗浄するための製品で、タンパク質や油脂の汚れに効果を発揮する。既に全国の大学医学部、ホテル、大手飲食店チェーンなど業務用に納入されている。家庭でも台所回りや食器、テーブルや床、風呂場やトイレまで使え、洗浄と除菌、防カビにも効果があるという。

 そんなに汚れが落ちて除菌もできるのに安全なの、と思ってしまう。成分の特徴はまず、石油系原料を使っていないこと。汚れを除去しやすくするアルカリは炭酸塩で、これは調理にも使う重曹と同じ性質を持つ食品添加物だ。酸素の泡を発生させ汚れをはがすのは過炭酸塩。特徴の間伐材は38種類に及び、多様な抽出液が除菌・消臭を担う。水と油を混ざりやすくして汚れを落とす界面活性剤は植物性脂肪酸だ。

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 安全で環境に優しい商品を、という声をよく聞く。肌荒れや発がん性など健康への悪影響がなく、自然への影響が小さい商品を指すのだろう。

 こうした声の背景には、過去いろんな環境問題を引き起こした合成洗剤への不安がある。1960年代に発売されて以降、合成洗剤によるとみられる河川の汚れ、内海や湖沼の富栄養化による魚の大量死などがクローズアップされた。当時は下水処理施設の不備もあり、生活排水が直接、川などに流された時代でもあった。

 日本石鹸(せっけん)洗剤工業会のリーフレット「洗剤の安全性・環境適合性」は技術改良が進むなどして80年代以降、専門家の間では洗剤の「安全性論争は解決した」と考えられていると説明。通常の使用条件ならば安全は確認されていると訴える。

 ただ合成洗剤には下水処理施設を経ても一部分解されない成分があるのも確か。こうしたこともあって、私たちはなお、洗剤へ漠然とした不安を抱いている。主に化学作用で汚れを落とす洗浄剤にも安全や環境への優しさをうたう製品が出てくる理由はここにある。

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 「命に関わる医師、研究者を支援してきて、自社でも市民が求める安心・安全に応える商品を出したいと思った」。アビオスの田中良彦社長はレノグリーン開発の動機を振り返る。

 きっかけは、ある消臭剤との出合い。堆肥の臭いに悩む農家に提供した植物抽出液の除菌力を生かした製品だった。感染防止が重要な病院に役立ち、環境改善にもつながると確信した。

 「うその通用しない仕事」をしてきた経験から、利用者を納得させるだけのデータにもこだわった。微生物による分解されやすさを示す生分解度は93・6%(28日後)で環境への負荷が小さいことを示す。マウスによる経口毒性試験では、しょうゆよりも低い数値を得た。食品衛生管理の国際基準「HACCP(ハサップ)」の普及を目指すNPO法人からは、認証取得を目指す事業所が使えば有利になる推進品に指定された。

 環境への貢献を目指す事業は農業にも広がり、佐賀、宮崎など九州4県で有機野菜の農園を運営する。

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 11月に開園した福岡県須恵町の認定こども園「明道館」は「子どもたちの安全を考えて」(長美佐子園長)、ヒノキの床の教室や廊下をはじめ施設のあらゆる所の清掃用にレノグリーンを導入したという。衛生管理が重要な調理室を任される栄養士の岸本倫子さん(38)は「場所を選ばずに1本で済むので助かる」と言う。自宅の洗剤に注意を払うことはあまりなかったが、今回の導入は「洗剤の安全性を考えるきっかけになった」と話してくれた。

 生活すること自体、環境に負荷を与えている。少しでも小さくする視点は常に持っていたい。生活用品の原料や成分を知るのもその一歩だろう。世に良品を広める主導権は、メーカーではなく、商品を選択する消費者の側にある。


=2017/12/13付 西日本新聞朝刊=

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