旧家の暮らしを映し出す有田焼 大名家の必需品は大皿 欧州貴族は室内調度品に 九博でトピック展示

欧州で人気があった「色絵花鳥文壺」。高さ87センチで、全体的な姿形は古代ギリシャ陶器をほうふつとさせる
欧州で人気があった「色絵花鳥文壺」。高さ87センチで、全体的な姿形は古代ギリシャ陶器をほうふつとさせる
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伊達家伝来の「染付牡丹唐草文大皿」
伊達家伝来の「染付牡丹唐草文大皿」
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冷泉家に伝来した「染付花唐草文段重」。菓子器か食膳の器として使われたようだ
冷泉家に伝来した「染付花唐草文段重」。菓子器か食膳の器として使われたようだ
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酒田の豪商・本間家に伝わった「色絵葡萄鳥文瓢形水注」。愛らしい一品だ
酒田の豪商・本間家に伝わった「色絵葡萄鳥文瓢形水注」。愛らしい一品だ
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 江戸時代、有田焼は日本各地、さらには世界へと伝わった。公家、武家、豪商、欧州の王侯貴族。それぞれの生活に溶け込んだ名品を集めた「古伊万里-旧家の暮らしを彩った器」展が、福岡県太宰府市の九州国立博物館で開かれている。有田焼創業400年を記念し、当時、「伊万里」と呼ばれた有田焼の受容に焦点を当てた企画だ。

 公家の冷泉家には染付(そめつけ)磁器が数多く伝来する。「染付花唐草文段重」(18世紀)もその一つ。丸みを帯びた三段の器に、細やかな唐草文が描かれている。優雅なデザインは公家の雅な暮らしを想起させる。受容の実態を伝えるため、同展では関係する古文書や出土品も並べた。京都の公家町で出土した品々も染付磁器が多く、公家社会の趣向が読み取れる。

 大勢の家臣を抱える大名家では大皿が必需品だった。仙台の伊達家に伝わる「染付牡丹(ぼたん)唐草文大皿」(19世紀)は直径43センチ。年中行事などでたくさんの料理が盛られたのだろう。江戸城跡で出土した磁器が興味深い。裏面に「大於(おおお)く」と刻まれている。本丸の大奥を示すとみられ、この磁器が使われた場所が分かる。染付牡丹唐草文大皿も「本」という字が刻まれている。

 有田焼は廻船で全国に運ばれた。北前船による交易で財をなした酒田(現在の山形県酒田市)の豪商、本間家も有田焼を好んだ。伝来品の中には、欧州で人気を博した柿右衛門様式の「色絵葡萄(ぶどう)鳥文瓢形(ひさごなり)水注」(17世紀後半)もある。同様式の磁器は国内でも流通していたことを物語る。

 欧州へは、国内とは異なる姿形の有田焼がもたらされた。コーヒーを入れるためのポットや、ワイングラスを模した足付杯などだ。蓮の花を表現した「芙蓉手(ふようで)」も輸出品に多い。

 大型の磁器は室内調度品として宮廷を彩った。「色絵花鳥文壺(つぼ)」(17世紀後半)のように、輸出先で口や肩、足に飾(かざり)金具が取り付けられた製品もある。華やかではあるが、ギリシャ神話の酒神バッカスの顔がデザインされると、もはや日本の磁器とは思えない。

 国内外の旧家それぞれに必要とする有田焼があった。「海運を主流とする流通網があり、商人が受容の情報をつかんで生産者に伝えたことで、有田焼は社会に浸透した」と九博の酒井田千明アソシエイトフェロー(陶磁)は話す。有田焼の美しさの先に、当時の人々の暮らしが見えてくる。

 ◇トピック展示「古伊万里-旧家の暮らしを彩った器」 11月6日まで。文化交流展示室の入場料は一般430円ほか。NTTハローダイヤル=050(5542)8600。


=2016/09/27付 西日本新聞朝刊=

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