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【こんにちは!あかちゃん 第20部】産後クライシスを乗り越える<6完>生活イメージ 産前から

これから子どもが生まれる夫婦に、出産後の女性の体の変化について話す渡辺大地さん
これから子どもが生まれる夫婦に、出産後の女性の体の変化について話す渡辺大地さん
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 産後クライシスを経験した人たちに取材し、共通すると感じたのは、夫婦間の意思疎通が足りなかったのではないか、ということだ。自分は何がしたくて、相手に何をしてほしいのか。お互い向き合わないまま、産後を迎えてしまう。そんな夫婦たちを支えようと、奔走する人たちがいる。

 7月下旬、埼玉県所沢市の産婦人科で開かれた教室には、3組の夫婦が参加していた。

 冒頭、講師の渡辺大地さん(33)は呼び掛けた。「赤ちゃんを夜何時に寝かしつけるか、今のうちに決めてください」

 狙いは、寝る前にする沐浴(もくよく)の時間を決めること。そこから3人で生活するプランを考える。「生まれてからでは夫婦とも余裕がなくなり、正常な判断がしにくくなる。『今のうちに』が重要だ」という。

 渡辺さんは同市で家事・育児代行サービス会社「アイナロハ」を営む。自治体や産婦人科医院から委託され、夫婦が産後の協力の仕方について学べる教室を開いている。

 よくある両親学級や父親学級は、沐浴の仕方や妊婦体験などがほとんど。渡辺さんは「産後に待ち受けていることを事前に知っておけば、夫婦が共通認識を持つきっかけになる」として、産後の具体的な生活プランをイメージする教室にこだわっている。

 家事一つとっても、妻がしてほしいことと、夫がしたいことやできることは、ずれているかもしれない。夫婦でできないことをどうするのか。公的・民間のサービスを利用するのか、親など第三者に頼むのかなどを決めておくことを勧める。

 その上で渡辺さんは「仕事から帰ったら、赤ちゃんの様子を聞く前に、妻の体調と気分を尋ねてほしい」という。パートナーとして思いを聞く、というのは夫にしかできないからだ。

 危機に直面した夫婦を、性の視点からサポートする取り組みもある。

 「子どもを産んでから、前よりセックスしたいと思わなくなったけど、いいのかな」。7月上旬に福岡市で開かれた「大人のための性教育講座」。参加者の悩みに対して講師の藤見里紗さん(37)は「性欲は、食欲や睡眠欲と同じように減ることはあるよ」と答えた。

 藤見さんは産前産後のフィットネス教室を開くNPO法人「マドレボニータ」のインストラクターで、かつて中学と高校の体育教師だった。

 性について、知識が足りなかったり偏っていたり。学校でも、大人になってからも、正しい知識を十分に伝えることが必要だと実感している。

 「産後はセックスレスになりやすいのに、多くの人が自分だけだと悩んでいる」。そういう人たちに藤見さんは「セックスは体の快楽だけではない。産後は抱き合うだけでもいい。会話をすることが大切」と助言している。

 夫婦の関係は産後、大きく変わり、そこにクライシスの懸念がある。しかし逆の見方をすれば、お互いを見つめ直す好機ともいえる。

 必要なのは産前からの十分な知識、夫婦間の意思疎通、夫婦を見つめる第三者の存在…。出産を機に、夫婦それぞれが自分を見つめ直し、自分が抱えてきた「思い込み」も捨てなければならないかもしれない。

 産後クライシスは夫婦関係の終わりではなく、再び分かり合える日への始まりと信じたい。絆を結び直すきっかけになってほしい。

 =おわり


=2014/08/19付 西日本新聞朝刊=

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