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【こんにちは!あかちゃん 第22部】 人口増へ 走る自治体<5完>待機児童減 アイデア勝負

埼玉県本庄市の学童保育で、「守親」の坂本邦彦さん(右)と一緒に草刈りをする子どもたち
埼玉県本庄市の学童保育で、「守親」の坂本邦彦さん(右)と一緒に草刈りをする子どもたち
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 《認可保育所を希望しても入所できない待機児童は、厚生労働省の調査で2万1371人(今年4月現在)。国は2017年度内の待機児童ゼロを目指しているが、道のりは険しい》

 保育園一揆‐。昨春、保育所に子どもが入れなかった親たちが、集団で異議申し立てをする動きが都内などで相次ぎ、そう呼ばれた。働く親が増え、保育所探しの「保活」は激化。最初に声を上げた杉並区の曽山恵理子さん(38)は、育児休業を半年延長して娘(2)を認可保育所に預けられた。「育児に集中したいのに保活のことを考えて夜も眠れない」「二度とこんな思いはしたくない」。そんな親たちの声を聞き「核家族化で支えは保育所という人は多い。安心して預ける場所がなければ、子どもを産むなんて考えられない」と語る。

 自治体もさまざまな手を打つ。小規模保育や幼稚園の預かり事業を充実させたり、適切な預け先を助言する「保育コンシェルジュ」を配置したり。そんな中、新たな運営方式で注目されている保育所がある。

 4月に東京都江東区に開設された「江東湾岸サテライトナーサリースクール」。全国初の「サテライト型」で、社会福祉法人が運営する認可保育所だ。

 保護者は豊洲地区の駅前の分園で子どもを預ける。子どもたちはバスに乗り、約4キロ離れた有明地区のオフィスビルへ。床面積1300平方メートル、都内最大規模の広い本園が現れる。

 2園は一体的に運用され、定員は本園222人、分園49人。バス利用は2歳児以上に限定し、0~1歳児は分園で過ごす。分園では、迎えの時間に合わせて本園の様子を撮影したビデオを流し、その日の出来事を伝える。次男(2)を預ける女性(40)は「長男のときは、2年間待機してやっと入れたのが自転車で40分の保育所。便利な駅前で助かっている」と話す。

 同区の田渕泰紀保育計画課長は「便利な場所はコストが高く、不便な保育所は利用されない。保護者のニーズに応えた」。区は来春、別の地区にもサテライト保育所を開設する。

 《待機児童の問題は保育所だけではない。全国学童保育連絡協議会の調査では、学童保育でも9115人(今年5月現在)。子どもが小学生になった途端、放課後の預け先に悩み、働き続けるのが難しくなる「小1の壁」は深刻な問題だ》

 埼玉県本庄市にある住宅の庭先に、「ただいま」と元気な声が響く。草刈りの手を休めて「おかえり」と目を細めるのは、坂本邦彦さん(73)。10年間空き家だったこの場所を今春、学童保育所「まちの背守(せまも)り保育 じぃじとばぁばの宝物」へと生まれ変わらせた一人だ。

 そもそもは、現在運営の中心となっている飯島紳太郎さん(32)が、待機児童が多いことを知り、空き家の活用を考えた。無償で借りたものの庭は荒れ、建物も老朽化が進んでいた。そこで、地元のシニア世代に改修などの協力を呼び掛けた。

 机や電化製品、食器類などは地域住民が無料で提供。シニア世代はボランティア「守親(もりおや)」として活躍している。地域のつながりも深まり、運営費用も抑えられる“一石二鳥”だ。飯島さんは「地域全体で子どもたちを育てていくモデルケースとして広げたい」。運営を委託する市の担当者も「子どもにも高齢者にも貴重な場。自由な発想は民間ならでは」と評価する。

 全国的に、学童保育は公立公営から、地域運営委員会(地域の役職者や保護者会代表らで構成)やNPO法人などへの民間委託が進んでいる。同協議会の真田祐事務局次長(59)は「委託を受けても必要な額より補助金が少なく、指導員の働く条件は劣悪で経営も厳しいところが多い。潜在的な待機児童は低学年だけでも40万人とみられ、圧倒的に不足。行政の支援拡大が急務」と話している。

 =おわり

=2014/10/25付 西日本新聞朝刊=

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