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【耕運記】「激辛会」 不思議な一体感と熱気

不思議な一体感で盛り上がる激辛会の会場
不思議な一体感で盛り上がる激辛会の会場
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 寒い季節、体の温まるものが欲しくなる。といえば辛い料理が外せない。激辛メニューを楽しむ会があると聞きつけて出席した。参加者は汗をふきつつ辛さを堪能、不思議な一体感と熱気に包まれた。この異様な盛り上がりは何?

 4、5人用の丸テーブルが並んだ店内は、ほぼ満席だった。今月中旬、福岡市中央区の韓国料理店。「博多激辛会」には約50人が集まった。「辛いものを吹き飛ばせ!」との乾杯の音頭で幕開けだ。

 豚肉の焼き肉には、辛みの効いたネギやキムチを一緒に。定番の青トウガラシもあり、口にして「痛~い」と喜ぶ女性も。締めのチヂミは口の中がやけどしたかのように燃えた。

 「辛み」は甘味や酸味など五つの基本の味と感じ方が異なる。基本味が舌の味蕾(みらい)細胞で感じるのに対して、辛みは舌の上皮細胞を突き抜けて感覚神経で感知する。つまり味覚ではなく痛覚。「痛~い」の感想はその通りなのだ。英語では熱いも辛いも「hot」というが、理にかなっている。

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 「毛穴が開く感じ」と女性3人組が笑顔を見せる。「カプサイシンの発汗作用を実感。久しぶりに冷や汗以外の汗ね」とご機嫌だ。

 カプサイシンとは唐辛子にだけ含まれる辛み成分。唐辛子を食べると「痛み
=辛み」を和らげようと脳内麻薬〓(〓はベータ)(ベータ)-エンドルフィンが放出される。鎮痛作用のほか陶酔感を与え、こんな高揚感もそのためだろう。

 会には、フェイスブックを見て参加したという女性も多い。福岡市のライター山本佳世さん(33)は「前回、初めて会った女性7、8人で3次会まで行った」。テンションが上がる感覚は確かにある。

 辛みの本場、韓国では多くの人が辛い料理を食べると汗をかきつつ「シウォナダ~」と言う。風などが「涼しい」と使う単語を「さっぱり、すっきり」というような意味で使う。

 カプサイシンは交感神経も刺激する。アドレナリンの分泌を促し、軽いジョギングなどの運動と似た現象をもたらす。ポカポカ感は脂肪が燃えているためだ。

 九州大の水野谷航(みずのやわたる)助教(農学)によると、カプサイシンと同様の成分を与えたネズミが運動を続けられる時間=持久力を約3割向上させることを実証した。糖と比較して脂肪を消費する割合も増えたという。

 このほか蠕動(ぜんどう)運動を促進する作用、免疫力強化、治癒力を高める作用もあるという。依存性もあり、「病みつき」になる理由はここにある。食べ過ぎには注意が必要だろう。

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 会を友人ら5人で発足、CEOを名乗る会社員竹下章太郎さん(42)は盛況ぶりに驚く。「ジェットコースターと同じ。みんなですごい体験をしたい人たちにとっての場になったということではないか」と理由を分析する。自身は「少し食べ過ぎても、おなかが痛くなる」ほど苦手だが、「おいしいは会の禁句。辛いと言ってもらえるよう限界まで付き合う」と気合を入れる。

 参加者の最年長は福岡市の農業、赤木信義さん(63)。栽培するハバネロを前回持参した。意気投合した会社員、榎本善公さん(31)は畑で収穫させてもらった。「うま味のある辛さを追求したい」と語る辛みマニアはハバネロの「独特の香り」が気に入って、ニンニク入りペペロンチーノにはまっている。「辛さでみんな仲良くなれる」と、会との出合いに感謝した。

 「熱さ」や「痛さ」はいわば生死に関わる刺激。その同種の感覚「辛み」が共通項だから、参加者に同志にも似た感覚が生まれ、一体感をもたらしたのか。健康面とともに、見逃せない効能かもしれない。

 香辛料の健康機能に詳しい京都大大学院の河田照雄教授が言う。

 「いろんな恩恵が詰まったカプサイシンは唐辛子を通して神様がヒトに与えた賜物(たまもの)」 


=2014/11/26付 西日本新聞朝刊=

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