要介護者 自然は良薬 五感を刺激、表情豊かに 熊本の施設 野外ゲーム取り入れ

秋空の下、落ち葉や木の実などを探すネイチャーゲームを楽しむお年寄り
秋空の下、落ち葉や木の実などを探すネイチャーゲームを楽しむお年寄り
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 介護が必要な高齢者にも豊かな自然や季節の変化を体感してもらおうと、米国発祥の自然体験活動「ネイチャーゲーム」を取り入れている介護施設が熊本県にある。日常的に外気や動植物に触れることで、五感が刺激され、認知症などによる介護状態の改善にも一定の効果が見られるという。普段の散歩や外出にも生かせるヒントがありそうだ。

 「今日は秋を探してみましょう」。10月下旬、熊本県御船町の老人総合福祉施設「グリーンヒルみふね」の庭。職員が声を掛けると、67~100歳の高齢者31人が職員と一緒に動きだした。

 「はやしのにおい」「どんぐり」「しめったつち」「おちば」…。縦5行、横5列の計25種類の言葉が書かれたカードを手に庭を巡り、実物を見つけたらチェックしていく。ネイチャーゲームの一つ「フィールドビンゴ」で、縦横斜めの1列がそろえば上がりだ。

 「芝の上は気持ちよかなあ」「クモば、つかんどんなる」「花ば摘んだらかわいそうやね」。約15分間、楽しそうな会話や笑い声があちこちから聞こえる。

 参加者は、特別養護老人ホームや認知症グループホームの入所者、デイサービス利用者で、介護度は要支援2から要介護3。車椅子に座った前田現(さとし)さん(86)は「最高に楽しい。山で遊んでいた小学生のころを思い出す」と上機嫌だった。

 ネイチャーゲームは子どもたちに豊かな自然体験活動を促そうと、米国で考案された。日本には1986年に紹介され、「日本シェアリングネイチャー協会」(東京)が認定する資格を持ったインストラクターやリーダー約1万200人が全国で活動している。自然界の音を聞く、匂いをかぐといった体験を促す160種類のゲームがある。

 グリーンヒルみふねでは2011年、系列のこども園で採用したのを機に、施設長の吉本洋さん(42)が導入した。介護施設での取り組みは珍しかったが、吉本さんは「室温27度に保たれた“快適な”環境にいるだけでは、季節も分からない。もっと五感を使ってほしかった」と説明する。

 当初は、屋外に連れ出すことで転倒や感染症などを懸念する職員から反対もあったが、研修を実施して職員120人のうち18人をリーダーに育てた。今では週2回、午後のレクリエーションとしてネイチャーゲームを実施。天候や参加者の体調を見ながらアレンジし、昔を思い出させる回想法を取り入れるなど、高齢者向けの工夫も凝らしている。

 導入から3年。夜間徘徊(はいかい)がなくなったり、食欲が増進したりした入所者もいるという。「屋外での心地よい疲れが影響しているのでは」と吉本さん。木の葉を取ろうとして動かないはずの手が動いた人、失語症の人が「あー」「うー」と声を出した例もある。デイサービスセンター介護課長の宮村泰徳さん(47)は「何より表情が豊かになり、笑顔が増えた」と話す。

 一緒に活動する職員も自然の移ろいに敏感になった。このため、朝6時に機械的に居室のカーテンを開けていた職員が外が明るくなったのを確認して開けるようになったり、お年寄りへの声掛けが季節を意識した内容に変わり、会話が増えたりした。

 吉本さんは「要介護状態になると生活に変化が少なくなるが、五感を刺激する工夫をすれば生活の質向上につなげられる」と力を込めた。


=2014/11/27付 西日本新聞朝刊=

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