【生きる 働く 第1部】私がハタラク理由<3>存在価値を見つけた

 「特徴☆ぶさいく」
 
 福岡県を中心に活動するアイドル、ゆみーる(19)は、短文投稿サイトのツイッターで自分をこう紹介する。

 昨年末、福岡市であったアイドルグループ「GLITTER☆(グリッター)」のライブ。20人ほどのファンを前にゆみーるは、軽快なリズムに乗る。汗が光る。最後の曲を終えて声援が飛ぶと一転、「不細工」とは程遠い、笑顔を見せた。「弱いけど負けず嫌い。いつも一生懸命なんだよね」。カメラを構えていた男性(25)は目を細めた。

 歌手の絢香さんに憧れ、小学2年生のころから歌手を夢見るようになった。

 同じころ、いじめが始まった。「死ね」と吐かれ、しまいに無視された。心配をかけたくないから親には言えない。何回も、何十回も「死にたい」と思った。歌手になる夢は何度も諦めた。でも、諦めきれなかった。

 中学3年から通い始めたダンス教室で、講師の国清しおりさんに声を掛けられ、他の生徒たちと一緒に2011年、グリッターを結成した。

 歌と踊りのレッスンを週2回受けながら、福岡市内でライブに出る。地獄のような毎日から抜け出し、念願だったアイドルになって1年半。

 「地獄」は再びやってきた。

 メンバーで一斉に始めたツイッター。

 「不細工」「消えろ」。掲載した自分の写真に、中傷が殺到した。「やばい」。久しぶりに死が頭をよぎった。

 ツイッターをやめると、国清さんに怒られた。「中傷されるのは関心を持たれている証拠。人気に変えるチャンスと思って」

 ゆみーるはツイッターを再開した。中傷には「かわいくなるようにがんばります」とコメントを返した。

 中傷は半分程度になり、残りの半分は「写真を見たら元気になった」など、応援する声に変わっていった。3カ月後の2013年5月、全国放送の人気番組で「ブサイクアイドル」と紹介され、フォロワー(読者)は一時8万人を超えた。

 AKB48などの登場で女性アイドルグループが乱立し、アイドルは身近な存在になった。

 ランドセル素材を手掛ける化学メーカー「クラレ」が毎年行っている新小学生の「将来就きたい職業」アンケートで、「芸能人・タレント・歌手」と答える女の子は年々増え、昨年は2位にまで上がった。

 なぜアイドルになりたいのか。田中秀臣・上武大ビジネス情報学部教授(日本経済論)は、不況の影響を指摘する。同じ低収入の職に就くなら、ファンの応援という形で「自分の価値」を確認できる仕事が魅力的に映るのではないか、と。

 ゆみーるは専門学校に通いながら、アイドルとして働く。報酬は、1回のイベントでせいぜい数千円。ゼロのときもある。衣装は自費。2千円ほどで材料を買って自作する。母親は「好きでやっていることだから…」。将来を心配する思いが見え隠れする。

 でも、ゆみーるは思う。「アイドルになっていなかったら死んでいたかもしれない」

 ありのままの自分を認められる強さを身に付け、ファンの声援に自分の存在価値を見いだすことができた。生きる意味を見つけた。だから、働き続ける。

 「アイドルは第一歩。目標はあくまで歌手です」

 少女は、今日も「ゆみーる」として歌い、踊る。


=2015/01/08付 西日本新聞朝刊=

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