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【生きる 働く 第1部】私がハタラク理由<4>週3日就労 夢を追う

自由な雰囲気の「freee」の社内。先輩社員から仕事を学ぶ崎坂由香さん(右)
自由な雰囲気の「freee」の社内。先輩社員から仕事を学ぶ崎坂由香さん(右)
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 キャッチコピーは「週5日勤務の『あたりまえ』がバカらしい」。勤務条件は「週休4日で月収15万円」。

 昨夏、人材派遣会社「ビースタイル」(東京)が始めた若者向けの就職サービス「ゆるい就職」は、かなり異色だ。

 週3日の就労で何とか自活できるだけの収入を確保し、やりたいことに打ち込む時間を得る。しかし、正社員のような「安定」はない。

 秋の説明会には定員の4倍、360人の若者が応募した。なぜか-。

 松井一透(かずと)さん(27)は年明けから、「ゆるい就職」で求人があった都内の会社で働き始めた。業務内容は、メールやチャットでの顧客対応だ。

 早稲田大を卒業後、番組制作会社に就職した。仕事は面白かったが、ほとんど家に帰れない。会社で椅子を並べて眠る日々に疑問を覚え、退職。その後に就職したIT企業も、1年3カ月で辞めた。

 そんなときに出合ったのが、「現代の駆け込み寺」を掲げるシェアハウス「リバ邸」(全国12カ所)だった。世の中の枠組みに縛られたくない人や息苦しさを感じる人の居場所であり、生き方を探す場所-。理念に共感した松井さんは、「リバ邸」を全国各地に広めるNPO法人の設立を目指している。

 だが、それだけでは食べていけない。活動に時間を割きつつも、効率よく稼ぎたい。「ゆるい就職」を選んだ理由だ。

 「会社に依存する働き方は、崩れたときに怖い。これからは“複業”、いろんな稼ぐ手段を身につけるべきじゃないかな」

 松井さんより1カ月早く働き始めた崎坂由香さん(25)の生活は、半年前とは180度変わった。仕事後は友人と会ったり、夕食を作ったり。休日には壁を登るボルダリングも始めた。

 「いつかカフェを開きたい」と夢を抱いて就職した飲食業界。任されたのは居酒屋の店長だった。連日深夜までの勤務で、休みは月に2~6日。繁忙期には30連勤も。客との交流が好きだったのに、気づけば笑顔を忘れ、夢も見失った。

 何のために働いているんだろう。仕事を辞めたころに見つけたのが「ゆるい就職」。ワークショップで、同じような考えを持つ若者たちと語り合った。「30歳までに自分の店を持つ」。目標が定まった。

 面接のとき、今春から調理の専門学校に通いたいと打ち明けると、会社は短時間勤務を提案し「頑張れ」と背中を押してくれた。「リスクはもちろん覚悟の上。それでも、挑戦するなら今だと思うんです」

 2人が働くのは、会計ソフト開発会社「freee(フリー)」(東京)。創業2年半のベンチャー企業で、学生インターンも含め約80人が働く。週3日15万円は、月給換算なら25万円。大卒初任給の平均は約20万円だから、安くはない。社会保険に加入し、昇給もある。

 採用担当の野澤俊通さん(43)は「新しいものを作りだす企業には、常識にとらわれない人が合う。優秀な人材を採れるなら、週3日でも構わない」と話す。ただ、仕事自体はゆるくない。短時間でどれだけの成果を上げられるか問われる。

 「結局は非正規で企業に使い捨てされかねない」「将来のキャリアを積めない」。「ゆるい就職」には厳しい声も相次ぐ。同サービスの責任者、宇佐美啓(ひらく)さん(30)はこう語る。

 「働き方の押しつけではなく、選択肢を増やしたい。若者には、人生や職業を模索するモラトリアム(猶予)期間がもっとあっていい」


=2015/01/09付 西日本新聞朝刊=

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